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美川さんと森浜食堂

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「ほぅ、幸せそうな顔だけどちょっと面白い顔だね」

  おばぁは本当のことを言って口元に手を当てた。

「あはは、面白い顔ですか?」

「あ、すみません失礼しました」

  おばぁは慌てたように手を顔をの前で振り謝った。

「いえ、謝らないでください。ちょっと面白い顔はショックですが」

  美川さんはどうやらショックのようだが六個目のサーターアンダギーを幸せそうに食べた。って美川さんは何個食べるのだろうかと思いわたしは、そのゆるーりと緩んだ横顔をじっと見てしまった。

「ふふっ、いやだわ笑ってしまった」

  お母さんも美川さんの幸せそうに緩んだ顔を見て笑った。

「面白い人でしょ」

「そうね、愛可も良い職場を見つけたのかもね」

  お母さんはクスクスと笑った。

  美川さんこそ見る人を幸せな気持ちにしているのかもしれないですよ。

  そんなことを考えながらわたしは、おばさんが「まだたくさんあるから食べてね」と言って差し出してくれたサーターアンダギーを食べた。

  うん、やっぱり美味しくてほっぺたが落っこちそうになった。

「でも、良かったですよ。森浜のおばさんと愛可さんはもう会っているんですもんね」

  美川さんは、ふふんと満足げな表情をしている。

「えっ?  もう会っているって何ですか?」

「実は、森浜のおばさんから愛可さんの話を聞いていたんですよ」

「えっ?  それはどう言うことですか」

  わたしは、びっくりして声を上げてしまった。

「笑顔でご飯を食べる愛可って名前の女の子の話を森浜のおばさんから聞いていたんですよ」

「おばさんからですか?」

「はい、森浜のおばさんは愛可って女の子の話をする時は、それはもう幸せそうな顔をしていました。ねっ、おばさん」

  美川さんはおばさんに視線を向けた。

「うふふ、そうよ。時々、幼い日の愛可ちゃんの笑顔を思い出しては頑張らなきゃなと思っていたのよ。それをよしお君に話したりしていたのよ」

  おばさんは、わたしの顔を真っ直ぐ見つめそして、にっこりと笑った。

「それは嬉しいです。わたしもおばさんの優しい笑顔と料理を思い出して頑張ろうって思っていましたよ。でも、美川さんに話していたなんて」

  それはそうと美川さんはどうして……?
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