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5 静香と三毛猫
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しおりを挟む牛柄ちゃんはわたし達のやり取りを黙ってじっと見ていた。その目を見ると人間の言葉がわかっているようにも見えた。
猫は人の言葉をある程度理解していると聞いたことがあるのでそれは不思議ことではないのかもしれない。けれど、それとはまた違った何かを感じるんだよね。
牛柄ちゃん、君はわたし達を何処かへ導く猫なのかな?
わたしは牛柄ちゃんの目を見て心の中で尋ねた。
「ちょっと、ことりちゃんってばじっと牛柄ちゃんを見ないでよ」
わたしがせっかく牛柄ちゃんに問いかけているのに静香の奴は邪魔をする。
「静香ちゃんこそ牛柄ちゃんをじっと見ないでよ」
わたしと静香は睨み合いまたまた火花をバチバチ散らし合った。
その時、にゃんにゃんと牛柄ちゃんが鳴いた。
わたしと静香は睨み合うのを中断し牛柄ちゃんに視線を向けた。
牛柄ちゃんの澄んだ目がわたしと静香を見ていた。
「牛柄ちゃんが見てるからケンカ中断だよ。わたしはアイスを食べるんだからね。ことりちゃんじゃあね」
静香はわたしを睨み牛柄ちゃんににっこりと微笑みを浮かべ立ち去った。
一体何だったんだろう? と思いながらわたしは静香の風に揺れるツインテールと、三毛猫のゴムを眺めた。
「静香って変な子だよね。ねっ、牛柄ちゃん」
わたしはそう言って視線を下に向けたのだけど、いつの間にか牛柄ちゃんは姿を消していた。
辺りを見渡しても牛柄ちゃんの姿は見つからなかった。
「ああ、もうどうして牛柄ちゃんってば居ないのよ」
静香はむかつくし牛柄ちゃんは忽然と消えちゃうしもう嫌になるよ。わたしは、ウッキーッと地団駄を踏む。
家に帰るとお姉ちゃんはソファに寝そべり猫マンガをアハハと笑いながら読んでいた。呑気な奴めとまたちょっとイライラしてしまった。
最近のわたしはちょっとのことでイライラしちゃう。そんな自分のことが嫌になる。アイスを食べて元気になろう。
スーパーの袋にガサゴソと手を突っ込むとチョコモナカアイスが入っていた。
「あれ? わたしチョコモナカアイスなんて選んだっけな」
「ことり何をブツブツ言ってんのよ」
お姉ちゃんは猫マンガをテーブルの上に置きスーパーの袋を覗き込んでいた。
「あ、ううん」とわたしが答えたその時、お姉ちゃんは、「わたしみかんバーね」と言って袋の中から取った。
「あ、お姉ちゃんみかんバーはわたしが食べるんだよ」と言ったのにお姉ちゃんは袋を開けみかんバーを取り出し棒を手に持ち食べちゃったよ。
「そ、そんな~」
わたしはチョコモナカアイスを食べることになってしまった。
今頃静香もチョコモナカアイスを食べているのかもしれない。
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