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※(前編)実は俺は最強の退魔師で度し難いほどのヤリチンで、あとずっと貴方のことが好きでした
しおりを挟む「まぁ、メイちゃんといえば拷問とセックスの申し子みたいなところありますから。大目に見てあげてくださいね、お義兄さん」
八歳離れた義理の弟のメイが、タイミーで見つけたクレープ屋さんのバイトに行くと言い残し姿を消してから三日。
虎彦は必死の捜索の末に、メイの友人を名乗る男から有益な情報を手に入れた。メイはとある街の半地下のバーにいるらしい。
すぐに迎えに行こうとした虎彦の背に、メイの友人が不穏すぎる言葉を残したのが冒頭のそれである。
拷問とセックスって言った?今……。
メイは今年十九歳になる品行方正な男である。ぬいぐるみとケーキが大好きなあまえんぼである。
メイちゃん、とちゃん付けで呼ばれるのがたいそう似合う、中性的な童顔の美青年である。
メイとは両親の再婚で家族になったので、血の繋がりはない。
だがメイは幼いころ隙あらばシロツメクサで花冠を作って虎彦にプレゼントしてくれた、とびきり可愛い弟だ。
ちなみに虎彦は、高校の三年間無遅刻無欠席でボランティア部の部長だったにもかかわらず、なぜか先生たちから札付きの不良扱いされМ女が群がってくるほどのドスケベヤンキー顔だった。ゆえにメイの清廉な愛らしさに強い憧憬と庇護欲を感じている。
子供時代のメイはよく女の子に間違われ知らないおじさんに尾行されたりして危なかったので、高校卒業まで虎彦が車で学校まで送迎していたほどである。まさしく最愛の存在だった。
そんな可愛いメイの声が、辿り着いた半地下のバーの扉の向こうからうっすらと漏れ聞こえてくる。
「あー……ほんっとうるせえなザコが。自分ばっかり馬鹿みたいにイきやがって汚え声で萎えんだろが。てめえはオナホの才能ゼロか」
……メイちゃん?
聞き慣れたメイの、声変わりは済ませたがまだ少年らしい透明感の残る声が、なんか常軌を逸した言葉責めを敢行してやがる。
普段の甘えた喋り方とは異なるやさぐれた巻き舌は、メイのあどけない声と組み合わさるとやけに挑発的に響いていた。
虎彦は震えながらドアに耳を押し当てる。
だってちがうから、まだそうと決まったわけじゃないから。ドアの向こうで彼らが何をやっているのか。もしかしたら過激にクレープを焼いているだけかもしれないから。
「んああああ゛ッ、メイ様すみません!わたくしめばかり無様にイきまくって申し訳ございません!」
メイにオナホの才能ゼロの烙印を押された人物が快感に茹だった声で絶叫する。声の主は男だった。メイが、男と……。
それと並行して、ギッコンバッタンとベッドかソファのマットが軋むような音がする。
虎彦はずるずるとドア伝いに崩れ落ちて床に両膝をつく。絶対クレープ焼いてない。我が愛しの弟が男とバチボコに性交していらっしゃる。
「言ってるそばからイき散らかしてんじゃねえよ。てめーみたいなゴミクズを生かしている大自然に感謝しろオラァ!」
「大自然ありがとうございます!」
大自然に感謝させてる。虎彦は身も蓋もなく号泣した。
そのまま一生立ち上がれない気がしたが、次の瞬間、メイのとんでもない発言が虎彦の鼓膜を殴る。
「あー……だめだこれ、ぜんぜん気持ちよくない、中折れしそう。かくなるうえはもう殺すしかねえな」
いくらなんでも選択肢が極端すぎる。ちなみに虎彦は中折れしそうなとき騎乗位になってもらうことで常に問題を解決してきた。
馬鹿な弟が道を踏み外すのを止めなくては。虎彦は勢いよくドアを蹴破って叫んだ。
「一回騎乗位試せばいいんじゃなぁい!?」
案の定、ドアの向こうではメイが男と繋がっていた。
店の内装はカウンターとボックス席があるごく普通の飲み屋に見える。そのボックス席の黒革のソファで彼らは事に及んでいるのだ。男は全裸だが、メイの着衣はさほど乱れていないのが幸いだった。
はだけたシャツから垣間見えるメイの腹や胸は、細身ながらも青年らしい鋭利な硬さを獲得していた。もう女の子に間違われることはない。こんな形で弟の成長を実感したくはなかったのだが。
メイはミディアムショートの黒髪を揺らし白い肌に汗を浮かべ、四つん這いになった男に激しく腰を打ちつけている。虎彦はそのエグい腰使いに目眩がしたけど、虎彦の姿を見たメイの動揺はそれを上回っていた。
「……は?え?トラにい……あっ」
メイはいつもの呼び名で虎彦を呼びかけ、引きつった喘ぎとともに表情を歪ませる。こうして虎彦は、最愛の弟のクッソエロいイき顔を真正面から見せつけられたのだった。
よりによって俺の顔を見てフィニッシュしやがって。
ゼェハァと肩を震わせながらメイが行為の後始末をする。不貞腐れた表情だった。叱られる前のガキの顔をしながらセックスの余韻を漂わせるメイは、義理の兄でもおいそれと声をかけられないほど色めいていた。
メイがじっとりと訴えかけるような目でこちらを見てくるので、察した虎彦は後ろ手でそっとドアを閉めた。
気まずい沈黙の中、メイにハメ倒されていた男の身体が金色に輝く。令和の日本では人体は発光しないものとされている。だが虎彦としては、その異常事態に文句はなかった。
こちとら激務の仕事を三日も休んで義弟を探しまわったあげくにこの仕打ちなのだ。清純可憐なメイのイメージをぶち壊しやがったのだから、金色に光り輝くぐらいのことはしてもらわないと、虎彦だって感情の行き場がないのだった。
「ありがとうございますメイ様、これで成仏できます」
男がそう言うのを聞き、虎彦は必死に前後の脈絡を推測する。これ成仏するとかしないとかそういう話だったの?
「オッケー神の御心のままにー」
メイはアホほど適当に胸の前で十字を切りつつ答えた。金色の裸体が天へと昇り、やがて消える。
二人きりになった店内でメイはようやく虎彦に向き直った。
「これでわかったと思うけど、実は俺は最強の退魔師で度し難いほどのヤリチンで、あとずっと貴方のことが好きでした。俺と付き合ってください」
この絶望的な状況で義兄に交際を申し込む胆力は見事だが、それよりも虎彦は、最強の退魔師というワードのほうに完全に心を持っていかれていた。
なんだ最強の退魔師って。お前はずっと帰宅部だったじゃないか。さっき天に召されていったのは魔物ということでいいのか。
虎彦の脳裏に沸き起こる疑問のいっさいをぶん投げ、メイは切なげに長い睫毛を震わせ言葉を紡ぐ。
「小さいころからずっとトラ兄のことが好きで……でも俺はあんたにとってただの弟でしかないってわかってたから、この想いは一生秘密にしたかったのに……」
「メイちゃん、そっちじゃない。最強の退魔師のほう詳しく教えて」
「え?だから俺、最強の退魔師なんだってば。この店はバーに見せかけてるけど俺の退魔師としての仕事場なの」
「……これ、メイちゃんのお店?」
「そうだよ、これ店のポイントカード。トラ兄にもあげる」
そう言って差し出されたカードには「クラブ・ガチハメ百姓」という店名が流麗な書体で印刷されていたので、虎彦は勢いよくメイをビンタした。
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