お前の不敬には愛想が尽きた!と婚約破棄されましたが、これ幸い!

ちゃっぴー

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王城の作戦会議室。そこは本来、髭の濃い将軍たちが怒鳴り合い、脂ぎった顔で地図を囲む「美しさ」とは対極にある場所のはずだった。

しかし、私が介入した現在の会議室は、爽やかな風が吹き抜け、ほのかにシトラスの香りが漂う清潔な空間へと変貌を遂げている。

「……以上の理由により、北方の街道整備は軍事拠点としてではなく、物流の要としての再編を優先すべきだ。兵士の移動効率も結果的に30パーセント向上する」

円卓の中心で、セシル様が淡々と、しかし極めて明晰な口調で説明を終えた。

その指先が地図上の重要拠点を指し示すたび、周囲の老将軍たちは、ぐうの音も出ないといった様子で顔を見合わせている。

「……バレンシア伯爵。貴殿の戦略眼は、噂以上だな。これほど緻密な計算に基づいた兵站の再構築は、前例がない」

一人の将軍が、感心したように深く頷いた。

私は壁際に控えていたが、セシル様が戦略を語る時の、あの理知的で冷徹な、それでいて情熱を秘めた瞳に、もう釘付けである。

「セシル様。三行で感想を述べますわね」

「……ノノカ。今は国政の重要な局面だぞ」

セシル様が苦笑しながらも、私に発言の許可をくれた。

「一つ、今のあなたの『考え抜かれた顎のライン』、最高にセクシーですわ」

「一つ、複雑な数式をさらりと解く時のその長い睫毛、芸術点が限界を突破していますわ」

「一つ、結論として、有能な美男子が働く姿は、この世で最も尊い栄養剤ですわね。……あぁ、目が洗われますわ」

「……二つ目の項目が重複しているし、内容が全部私の顔のことではないか」

セシル様が頭を抱えたが、その耳の先が赤くなっているのを私は見逃さない。

「ノノカ様! そんなふざけたことを! ここは遊び場ではないのですよ!」

声を張り上げたのは、旧勢力の筆頭格、重税を課して私腹を肥やしていたことで有名なゴルドン伯爵だった。

彼はその肥満した体を揺らし、セシル様を忌々しそうに睨みつける。

「バレンシア伯爵、貴殿がどれほど理屈を並べようと、我々古参の貴族が納得せねばこの案は通らん! 若造の小綺麗な意見など、戦の泥を知らぬ戯言だ!」

私はゆっくりと、ゴルドン伯爵の前へと歩み寄った。

「あら、ゴルドン様。三行で現実を教えて差し上げますわね」

「な、なんだと……っ!?」

「一つ、あなたのその『戦の泥』と称する怠慢のせいで、兵士たちの食料が半分に減らされていた事実、すべて把握済みですわ」

「二つ、あなたが反対するのは、この案が通るとあなたの『中抜き用の隠し通路』が使えなくなるからでしょう?」

「三つ、何よりその怒りで赤黒く濁ったお顔……。美学的に許容しがたいので、今すぐこの清浄な会議室から退出していただけます?」

ゴルドン伯爵の顔が、怒りと恐怖で、まさにナスのような紫色に変色した。

「き、貴様……っ! 公爵令嬢だからと調子に乗るなよ! 証拠もなしにそのような……!」

「証拠なら、そこのセシル様が完璧に揃えておいでですわ。ね、セシル様?」

私が振ると、セシル様は無言で一束の書類をテーブルに叩きつけた。

「……ゴルドン伯爵。貴殿の過去五年にわたる軍備費の流用記録だ。これを陛下に提出されるのが嫌なら、今すぐ静かに席を立つことを勧める」

セシル様の、氷のような冷徹な一言。

ゴルドン伯爵は腰を抜かし、ライアンさんに引きずられるようにして部屋から追い出されていった。

「……ふう。ノノカ、貴様は本当に、火に油を注ぐのが上手いな」

静まり返った会議室で、セシル様が長い溜息をついた。

「あら、油ではなく香水ですわ。あのような『美しくない』不純物が混じっていては、せっかくのあなたの名演説が台無しですもの」

私はセシル様のデスクに歩み寄り、彼の手をそっと取った。

「セシル様。あなたは本当に、顔が良いだけではなく中身までダイヤモンドのようですわね。……私の目に狂いはありませんでしたわ」

セシル様は、私の手を握り返すことはしなかったが、拒絶することもなく、ただ優しく見つめ返してきた。

「……貴様に見られていると思うと、無様な策は出せんからな。少し、疲れた」

「お疲れ様ですわ、私の騎士様。今夜は、目元に効く特製のハーブ蒸しタオルを用意させますわね。……あ、もちろん、私が直接乗せて差し上げますわよ?」

「……それは、拒否権があるのか?」

「ありませんわ。美貌の維持は、王になる者の義務ですもの」

私は確信していた。

この国はこれから、セシル様の知性と、私の「美学」によって、かつてないほど美しく、強靭な国家へと生まれ変わるのだと。

……もっとも、一番の目的は、私が毎日「世界一の美形王」を眺めて暮らすためなのですけれど。
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