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第五話 彼女…桜華の事(恋愛の話です)・前編

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僕には、我が家で居候をしている水無月姉妹の姉の桜華と付き合っております。
出会いは…3歳くらいだったかな?
我が父親である総一郎と水無月家の父親の剛志さんとは幼馴染みで、更には父親と剛志さんは同じ会社でした。
なので、お互いの妊娠の時期も知っている訳で…
初めて桜華を紹介されたのが、確か3歳くらいだった…気がします。
出会った瞬間…「可愛い子だなぁ!」と幼馴染み系の漫画やアニメならそういう展開もあるでしょう。
そして…祭りに誘ってからおもちゃの指輪を渡して、「将来結婚して!」…なんていう思い出が…あると思うなよ!

剛志さんは最初に出来た娘で溺愛していて、幼稚園に入る前は碌に会わせてはもらえませんでした。
幼稚園に入っても、クラスが違っていたし…殆ど接点がなかった。
妹の光とは同じクラスで仲が良かったという話だけど。
僕が桜華とまともに話す事になるのは、小学校に入ってからでした。
…とは言っても、幼馴染みという事だけで接点が無く…挨拶程度と雑談くらいで、これと言って親しい訳でもありませんでした。

そんな接点がない同士の僕達だったのですが、中学3年生になった時に…僕は光に呼び出されて向かった先の屋上に桜華が居ました。
桜華からは、「香君はどこの高校を受けるの?」と聞かれたので、僕は近場の高校である「鵜尾沼高校に行くつもりだけど?」と答えました。
今通っている高校なのですが、偏差値が割と高かったんだけど、僕の学力なら問題は無いと言われました。
そして桜華も問題無かったんだけど、問題があったのは光の方で…かなり苦労して入った記憶があります。
無理なら別な高校を目指したら良いのに…。

この時でもまだ、僕と桜華は付き合っては居ませんでした。
付き合う切っ掛けになったのは、高校に入ってからすぐ…昼休みの屋上で、僕は桜華からは告白をされました。
ただ、本来なら…とても嬉しがる所なんですが、「少し考えさせてくれ…」と言った気がします。

「兄貴は桜華のどこに不満があるのさ!」

…と、隠れていた光から攻められる様に言われたので、僕は無言でその場を後にしました。
だって、桜華が姉妹達のどの性格に当たるのかが気になってしまって…?
ただこの時…返事を急かされた気がしました。
家の女達は………理不尽な要求と罵倒する遥姉さん、普段は無害だけど物書きをしていて追い込まれている時は不条理にイジってくる静姉さん、傍若無人で関節技を掛けて来て泣くまで解放してくれない琴姉さん、我が儘まっしぐらで変な所にお節介をやく光、僕の事をこき下ろして来る凛、僕を目の敵にして怒鳴りまくる愛、おっとり型で優しい恋…恋はともかく、他の姉妹は碌な性格して無いな。

天然で優しい性格の桜華なので、姉妹の中には居ないタイプかな?
僕は良く考えた上で、桜華に付き合うという事を了承した。
これから僕達は付き合う事になる…前に、翌日…僕が帰宅をする為にもうすぐ家に着くという所で、桜華の父親である剛志さんが待ち構えていました。
剛志さんは僕を睨み付けながら怒っているみたいです。
僕は正直言って…この剛志さんが苦手です。
理不尽に絡まれる事はないのですが、桜華や風華絡みになると…?
剛志さんは僕に近付いてきてから胸倉を掴んで持ち上げました。

「お前…桜華と付き合う事になったんだってな⁉︎」
「そ、そうですが…」

幾ら僕が男子の中では比較的に体重が軽いとは言っても、片手で持ち上げられるほどではないと思ったのですが?
…っていうか、告白の返事をしたのは昨日の事だよ!
伝わるのが早くないか⁉︎

「お前が桜華と付き合う事にならなければ、桜華と風香は都内の学校に行けたというのに‼︎」
「へっ………?」

話を聞いていると、こういう事だった。
以前から、僕の父親の会社近くの住まいに引越しをする際に、桜華と風華を呼び寄せて一緒に住み、桜華と風華には都内の学校に転校させるという話になっていたらしい。
だけど、桜華と風華に関してはあまり乗り気ではなくて断ろうとしたのだが…?
何か特別な理由が無いと却下されるという話だった。
そこで桜華は、彼氏が出来たと報告をすれば考え直してくれると思ったらしい。
なので、告白の返事を急かされたのは…そういう理由があった。

「いや、これ別に…「親友と離れたく無い!」で解決するんじゃないかな?」

それに剛志さんの性格上…付き合うことなんて許さないとか言って、無理矢理連れて行こうと考える筈だけど?
…そこは桜華と風華が話し合いの末に反論し、「お父さんなんか大っ嫌い‼︎」という言葉に剛志さんは折れたという話だった。
剛志さんは娘達から初めて言われる、「お父さんなんか大っ嫌い!」という言葉が思った以上にダメージを喰らったらしく酷く落ち込み、僕と付き合う事とこの地に残る事を承諾させたらしい。

「桜華と付き合う事は認めてやる! だが、必要以上にベタベタする事は許さんからな‼︎」
「大丈夫ですよ、節度のある付き合い方をしますから。 この年で父親なんかになりたく無いですし…」
「父親って…娘に手を出す気か⁉︎」
「冗談ですって、…」
「お前にお義父さんなんて、呼ばれたく無いわ‼︎」
「そんなに遠く無い未来で呼ばれる事になるんだし…ね、パパ!」
「貴様はさっきからおちょくっているのか⁉︎ 幾ら親友の息子だからと言っても…」

ちょっと悪ふざけが過ぎたかな?
剛志さんは、僕を持ち上げたまま塀に背中を叩き付けた。
受け身をしていたので大したダメージにはならなかったが、痛く無いと言えば嘘になる。

「娘を傷物にしようとしたら…半殺しにしてやるからな‼︎」
「喧嘩で傷害で許されるのは未成年迄ですよ、剛志さんの年齢で傷害させたら捕まりますって…」
「それで娘の名誉を守れるのなら…」

剛志さんは本気で目が血走っていた。
僕は高校生らしい付き合いをする事を約束する為に進言した。

「安心して下さい、清く正しい男女交際をするつもりですから…キス以上の事はしません‼︎」
「キスだと…⁉︎ それも許さん‼︎」

今時、高校生でキスなんて珍しくも無いとは思うんだけど…?
まぁ、それを付き合っている娘の父親に話したら流石に激情するか!
僕は壁に押し当てられたままでいると、親友の龍牙のお兄さんの龍一さんと琴姉さんが僕を見つけて止めに入ってくれた…が?

「おい、何をしてやがる‼︎」
「弟を離せ…って⁉︎」

龍一さんは剛志さんの肩に手を置き、琴姉さんは僕の胸倉を掴んでいる剛志さんの腕に手を掛けた。
だけど、琴姉さんはその人の顔を見た瞬間に…「ぎょっ!」っとした顔をしていた。

「あぁ? 総一郎の娘と謙也の息子か…今は取り込み中だから失せろ‼︎」

剛志さんが2人を睨みつけると、龍一さんと琴姉さんは剛志さんの迫力に負けて下がってしまった。
それもその筈…僕と琴姉さんの父親と龍一さんの父親は、剛志さんとは学生時代からの付き合いで、今でも付き合いはあるし…子供の頃から知っている。
剛志さんは学生時代の頃は武闘派と呼ばれていて、喧嘩最強の看板を背負っていた。
今でもその力は衰えを知らず、チームのリーダーの龍一さんでも剛志さん相手では…?

「龍一さん、琴姉さん…助けてくれよ!」

僕はそう訴えたのだが、龍一さんと琴姉さんはバツが悪そうな顔をして顔を背けた。
頼りにならない姉とその彼氏、僕はこの状況を覆せる人が来ないかと願った。
すると、救世主が僕の目の前に現れたのだった。

「お父さん、香君に何をしているの‼︎」
「お、桜華…何故此処にいる⁉︎」
「私は香君の家でお世話になっているんだから…って、さっさと離して‼︎」

周囲から恐れられていた剛志さんも、娘には頭が上がらない様子だった。
そんなしょげている剛志さんを放って、桜華は僕に近付いて来て、心配そうな声をかけてきた。

「香君、大丈夫?」
「あぁ、特に問題は無いよ。」

僕は桜華に肩を借りて立ち上がった。
その様子を見ていた剛志は、まるでさっさと桜華から離れろと言わんばかりの目付きで睨んで来たが、桜華はその事に気付いて剛志さんを睨むと…?

「もう………お父さんなんか大っ嫌い‼︎」
「ぐはっ!」

剛志さんは、見えない吐血を吐いて膝から崩れ落ちていた。
娘からの一言が相当効いたのだろう。
そして僕は桜華とそのまま家に入って行った。

これでこの話が終わりかというと…そういう訳ではない。
まだ、続きがありました。
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