俺は、こんな力を望んでいなかった‼︎

アノマロカリス

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第二話 何の目的で俺は来た?

 「この世界に魔王は……居ない!」

 …そう、この世界には魔王は居ないんだ。
 魔王の代わりになる存在…らしき噂も聞かない。
 あ、いや…俺の住んでいる地域まで噂が回ってこないという事もあるかも知れないが、こんな辺境に住む俺でも食いっぱぐれない為に、冒険者ギルドに登録して街には良く顔を出している。
 …が、情報が集まる冒険者ギルドですら、世界を脅かす存在の話は聞かないのだ。
 とは言っても、火山に棲むフレアドレイク、大地に住む巨人ダイダン、海に棲む海王リヴァイアス……などと言った、強大な力を持つ存在はいるのだが…?
 これらの魔獣は、表立って行動するわけでも無いので…討伐依頼や緊急クエストにも上がらなかった。

 「純粋に、俺強えぇぇぇぇを体験させる為に、神様がこの地に俺を…」

 …と考えては見るが、俺は特に神様に対して貢献する様な事をしたわけでは無い。
 前世に仕事をする時は、日々神棚に祈っていたくらいだった。
 
 「お、そろそろ出来たか?」
 
 俺が人から離れて生活をしているには、もう1つ理由がある。
 元の職業は料理人で、20年くらい前に村が活気があった時代は、毎日100人位の人数を捌く行列店だった。
 …が、それもいっ時のブームが過ぎれば廃れて行く。
 あの当時は、俺の店以外に名物スポット目当てに来る観光客がいた。
 何の名物なのかは良く知らん。
 そこそこ名の知れたアニメの舞台になったという話だった。
 まぁ、村の過疎化が進んだら人が寄り付かなくなったところを見ると、そのアニメはそれ程人気は無かったのだろう。

 「今回の出来は、65点だな…」

 俺の前世の店は、定食屋だった……いや、注文をされれば何でも作る店だった。
 和洋折衷…何でも作る店だったのだが、都内には俺より美味い店なんか腐る程ある。
 態々こんな辺鄙な場所に、金や時間をかけて来るくらいなら都内に行くだろう。
 年々客が減り始めていき、遂には誰も来なくなっていた。
 あ、そうそう…俺が人から離れて暮らすには、前世の職業が絡んでいる。
 この異世界では、思った材料が揃わない為に…思い通りの味が出せなかった。
 だが、それでも…前世の料理に近い物は作れる。
 …ので、王都の仮屋で晩飯を作っていたら、この異世界には無い料理の匂いに釣られて人がわんさか来た。
 なので、鬱陶しくて田舎に移ったのだった。

 「………ヒロインが現れないのは、俺が原因か…?」

 前世の店が少なくなってきた頃に、こんな事件があった。
 観光客の団体の中に、やたらと村や店を貶して来る迷惑客が現れたのだ。
 迷惑客とは言っても客は客、最初は優しく対応していたのだが…度が過ぎるとこちらも黙ってはいられなくなる。
 結局は、迷惑客が騒動を起こしてくれたお陰で…村の評判が悪くなり、過疎化が始まった訳だ。
 その頃からか、人付き合いは最低限しか相手をしないようにしている。
 一定の距離を保って接して来る分には別に構わない…が、あまり馴れ馴れしく接して来られるとイラつく事がある。

 「おっと…伸びるな。」

 俺が王都の家から離れた理由…?
 それが今喰っている、豚骨ラーメンが原因だった。
 この世界では、調理での調味料はほぼ塩のみ。
 貴族の料理人とかになると、ソースを使うという事もあるらしいが…そのソースも、前世の頃にあったソースとは、似ても似つかないレベルのものでしか無かった。
 そんな世界に、豚骨ラーメンなんていう物の匂いが流れてみろ?
 どうなるかくらい…分かりきっている。

 「ふぅ……まぁ、魔王が居ないんだ…スローライフを送るというのも良いかもな。 前世ではあまり休んだ記憶はなかったからな。」

 この世界に、前世の店にある調味料があれば…65点なんていう採点は付かなかった。
 植物魔法という…頭に浮かんだイメージを種にする魔法で、畑に撒いて大豆を作り出した。
 前世の店の隣には、店での食材の材料を自家栽培していたので、植物にはそれなりの知識はある。
 それが役に立ったのだろう…味噌と醤油は作り出した。
 豚骨は、この世界には4本足の豚は存在しないらしい。
 なので、ボアという魔物しかいないわけなんだが…コイツの骨を煮込むと、独特の臭みを感じていた。
 2本足の豚であるオークという魔物がいるという話だったので、ギルドの討伐依頼で目撃すると…確かに豚だった。
 …が、これを喰うには俺には抵抗がある。
 だが、喰わねば生きては行けない世界…贅沢は言ってられない。
 俺は、オークという魔物を手に掛けて解体した。

 「………なんだけどなぁ?」

 このオークという魔物の手足は、ヒヅメでは無く…どちらかというと人に近い。
 頭以外の骨格は、ほぼ人に近いので…解体をしている時に、殺人後の死体処理をしている気分になった。
 だが、王都の市場では…このオークの処理されていない腕や足が売られている。
 この世界の人間は、抵抗は……無いんだろうなぁ?
 
 「文化の違い…慣れないとな。」

 ただ、このオークという魔物の骨を煮込むと…?
 前世の世界にいた豚よりも濃厚な豚骨スープが出来る。
 この出汁を使って前世で店を開いていたら、過疎化になる事はないのではないかと思った。

 「店……か。」

 店を開けば、ヒロインが現れたり?
 いやいや、どう見ても…前世の二の舞になる未来しか見えない。
 
 ………って、あれだけ迷惑客に荒らされて、俺はまた店をやりたいのか?
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