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第十話 ただで食材入手・前編
俺が前世に定食屋を開いていた店は、山の中腹にあった様な店だったので、海とは縁遠い場所だった。
だが、魚や貝は良く仕入れていたし、料理もした事はある。
蟹も………サワガニの素揚げをしていたので、調理はした事はあるが…?
目の前にいる蟹は、深海生物のタカアシガニよりも大きくて足が太い。
「この世界の蟹は、こんなにも大きくて群れを作っているのか!」
まぁ、蟹は元々…群れで行動する奴等だが、まさかここまでデカいのが群れを作っているとは思わなかった。
それにしても、この世界の蟹は水に入らないんだな?
…としている内に、今回の緊急依頼を受けた他の冒険者が遅れてやって来た。
「数が多いな…」
「だよな、だからどうしようかと思っているんだが…」
「どうしようって、海に突き落とすんだよ。」
「は? 海に突き落としたぐらいで、また陸に上がってくるだろうが!」
冒険者達は、頭に「?」が浮かんでいた。
そして俺の頭にも「?」が浮かんでいた。
「もしかしてあんたさぁ、今回の依頼を確認してなかったのか?」
「蟹の討伐…だろ?」
「岩蟹の討伐だぞ、あ…あんたは、岩蟹の特性を知らんのか?」
岩蟹とは、好物の岩塩を求めて山の中を徘徊する蟹で、渇きには強いが水に脆く…討伐方法は、水に落とせば溺れて浮かんで来ないという物だった。
なので、水深の深い海や湖に落とせば勝手に死ぬという物だ。
ただ、大きさが大きさなので、倒すにしても突き落とすにしても…それなりの腕が無いと対処が出来ないという。
「水に弱いのであれば、大量の水をぶっ掛ければ良いだけの話だろ…ウォータースプレッド!」
ウォータースプレッドは、上空に水を発生してから滝の様に降らせる魔法…なのだが、岩蟹の甲羅が水を弾くのだった。
「おい、あんた…最後まで話を聞かない奴だなぁ。 岩蟹の表面の結晶化した塩分が、少々の水なら弾いてしまうんだよ。 だから、水深の深い場所に落として……」
なるほどな。
水深が深い水なら良いのか。
「ならば、ウォータープリズン‼︎」
ウォータープリズンは、名前からすると水の檻…と思うかも知れないが、実際は対象物を囲い込む水球を作る魔法のことである。
その中に閉じ込められた対象は、溺死するしか無いという…凄く酷い殺し方の魔法だった。
…のだが…?
「密封された水で溺死をさせるというのは良い手だが…?」
「やはり、溺れて浮かんで来れなくなるくらいの水深でないと無理…ん?」
考えてみれば、水に強いとはいっても…やはり蟹なんだよなぁ?
蟹の肺活量はそれなりにある為に、このまま魔法を放ち続けて行くと…こちらの魔法が切れる可能性がある。
早く…くたばらせる方法は?
「あ、ヒートウェーヴ‼︎」
この魔法は本来、高温を発生させて苦しめる魔法だが…?
ウォータープリズンと併用をする事で、高温度の熱湯へと変貌させるのだ。
流石の蟹も、熱湯の中で何分も耐えられる訳がない。
その証拠に、殻の部分が徐々に赤くなって来ているからだ。
「岩蟹を海に落とす以外にも、こんな方法で倒す事が出来るのか…しかし、蟹は茹でると赤くなるんだな?」
「そして、赤くなった殻は食べ頃の証だ。」
俺は、蟹の足を強引に毟ってから、付け根を引っ張った。
すると、中から赤い身がにゅるりと出て来たので、それを口に入れた。
周囲の冒険者は、俺の事を気でも触れたか…という目で見ていた。
「うむ、思った通り…塩気が程よく効いた、弾力のある身だな。」
「おい、あんた………それ、美味いのか?」
俺は喰っていた足を渡してやった。
冒険者は恐る恐る口を付けると、先程まで疑っていたのが嘘の様にかぶりつき始めた。
「う、うめぇな!」
「だが、店に帰れば…もっと美味くなる料理にしてやれるぞ。」
「もっと…って、今よりもか⁉︎」
俺は全部を茹でるには量が多過ぎたので、その内の10匹分を茹でてから空間魔法に放り込んだ。
そして俺は、冒険者にこう助言をした。
「蟹はな、お湯で茹でるのも美味いんだが…温泉の源泉で茹でると、味が更に濃厚になるという。 ここマウロ港は温泉地だから?」
「この美味さを知れば、捕獲依頼が殺到するかも知れんな!」
「クラウディア王国の冒険者ギルドにある俺の店に持って来れば、ギルドよりも色を付けて買い取ってやるぞ。」
その冒険者は他の冒険者達に命じて、岩蟹を捕獲してマウロ港にある温泉地に運搬する班と、俺の店に持って来る班に分かれて動いた。
これで、今後は…岩蟹を海に落とすといった行為は無くなるだろう。
俺は、プレオープンを再開する為に、転移魔法で店に戻った。
~~~~~後日談~~~~~
岩蟹の美味さに気付いた冒険者は、捕獲した岩蟹を温泉地に運搬し、源泉の中に放り込んだ。
岩蟹はあまりの熱さに暴れまくったが、赤く茹で上がるころには大人しくなった。
温泉協会から抗議を言って来たが、冒険者が先程俺がした様に、足を毟って関節を引っ張ると赤い身がにゅるりと出て来て、それを口に入れてから協会の人間に渡すと…?
そのグロテスクな見た目からは想像も出来ない美味さが、全身を雷に打たれた衝撃が走り…今後は、マウロ港の温泉街の名物料理として扱われる事になった。
…が、捕獲レベルが高くて、依頼料もそれなりに金額が掛かるのだが?
それ以上の収益を望めると考えた温泉協会が、捕獲の為に報酬を釣り上げるのだった。
「最近、王都の冒険者が減った気がするなぁ?」
冒険者ギルドの職員は、冒険者ギルド内を見回してボソッと言っていた。
だが、魚や貝は良く仕入れていたし、料理もした事はある。
蟹も………サワガニの素揚げをしていたので、調理はした事はあるが…?
目の前にいる蟹は、深海生物のタカアシガニよりも大きくて足が太い。
「この世界の蟹は、こんなにも大きくて群れを作っているのか!」
まぁ、蟹は元々…群れで行動する奴等だが、まさかここまでデカいのが群れを作っているとは思わなかった。
それにしても、この世界の蟹は水に入らないんだな?
…としている内に、今回の緊急依頼を受けた他の冒険者が遅れてやって来た。
「数が多いな…」
「だよな、だからどうしようかと思っているんだが…」
「どうしようって、海に突き落とすんだよ。」
「は? 海に突き落としたぐらいで、また陸に上がってくるだろうが!」
冒険者達は、頭に「?」が浮かんでいた。
そして俺の頭にも「?」が浮かんでいた。
「もしかしてあんたさぁ、今回の依頼を確認してなかったのか?」
「蟹の討伐…だろ?」
「岩蟹の討伐だぞ、あ…あんたは、岩蟹の特性を知らんのか?」
岩蟹とは、好物の岩塩を求めて山の中を徘徊する蟹で、渇きには強いが水に脆く…討伐方法は、水に落とせば溺れて浮かんで来ないという物だった。
なので、水深の深い海や湖に落とせば勝手に死ぬという物だ。
ただ、大きさが大きさなので、倒すにしても突き落とすにしても…それなりの腕が無いと対処が出来ないという。
「水に弱いのであれば、大量の水をぶっ掛ければ良いだけの話だろ…ウォータースプレッド!」
ウォータースプレッドは、上空に水を発生してから滝の様に降らせる魔法…なのだが、岩蟹の甲羅が水を弾くのだった。
「おい、あんた…最後まで話を聞かない奴だなぁ。 岩蟹の表面の結晶化した塩分が、少々の水なら弾いてしまうんだよ。 だから、水深の深い場所に落として……」
なるほどな。
水深が深い水なら良いのか。
「ならば、ウォータープリズン‼︎」
ウォータープリズンは、名前からすると水の檻…と思うかも知れないが、実際は対象物を囲い込む水球を作る魔法のことである。
その中に閉じ込められた対象は、溺死するしか無いという…凄く酷い殺し方の魔法だった。
…のだが…?
「密封された水で溺死をさせるというのは良い手だが…?」
「やはり、溺れて浮かんで来れなくなるくらいの水深でないと無理…ん?」
考えてみれば、水に強いとはいっても…やはり蟹なんだよなぁ?
蟹の肺活量はそれなりにある為に、このまま魔法を放ち続けて行くと…こちらの魔法が切れる可能性がある。
早く…くたばらせる方法は?
「あ、ヒートウェーヴ‼︎」
この魔法は本来、高温を発生させて苦しめる魔法だが…?
ウォータープリズンと併用をする事で、高温度の熱湯へと変貌させるのだ。
流石の蟹も、熱湯の中で何分も耐えられる訳がない。
その証拠に、殻の部分が徐々に赤くなって来ているからだ。
「岩蟹を海に落とす以外にも、こんな方法で倒す事が出来るのか…しかし、蟹は茹でると赤くなるんだな?」
「そして、赤くなった殻は食べ頃の証だ。」
俺は、蟹の足を強引に毟ってから、付け根を引っ張った。
すると、中から赤い身がにゅるりと出て来たので、それを口に入れた。
周囲の冒険者は、俺の事を気でも触れたか…という目で見ていた。
「うむ、思った通り…塩気が程よく効いた、弾力のある身だな。」
「おい、あんた………それ、美味いのか?」
俺は喰っていた足を渡してやった。
冒険者は恐る恐る口を付けると、先程まで疑っていたのが嘘の様にかぶりつき始めた。
「う、うめぇな!」
「だが、店に帰れば…もっと美味くなる料理にしてやれるぞ。」
「もっと…って、今よりもか⁉︎」
俺は全部を茹でるには量が多過ぎたので、その内の10匹分を茹でてから空間魔法に放り込んだ。
そして俺は、冒険者にこう助言をした。
「蟹はな、お湯で茹でるのも美味いんだが…温泉の源泉で茹でると、味が更に濃厚になるという。 ここマウロ港は温泉地だから?」
「この美味さを知れば、捕獲依頼が殺到するかも知れんな!」
「クラウディア王国の冒険者ギルドにある俺の店に持って来れば、ギルドよりも色を付けて買い取ってやるぞ。」
その冒険者は他の冒険者達に命じて、岩蟹を捕獲してマウロ港にある温泉地に運搬する班と、俺の店に持って来る班に分かれて動いた。
これで、今後は…岩蟹を海に落とすといった行為は無くなるだろう。
俺は、プレオープンを再開する為に、転移魔法で店に戻った。
~~~~~後日談~~~~~
岩蟹の美味さに気付いた冒険者は、捕獲した岩蟹を温泉地に運搬し、源泉の中に放り込んだ。
岩蟹はあまりの熱さに暴れまくったが、赤く茹で上がるころには大人しくなった。
温泉協会から抗議を言って来たが、冒険者が先程俺がした様に、足を毟って関節を引っ張ると赤い身がにゅるりと出て来て、それを口に入れてから協会の人間に渡すと…?
そのグロテスクな見た目からは想像も出来ない美味さが、全身を雷に打たれた衝撃が走り…今後は、マウロ港の温泉街の名物料理として扱われる事になった。
…が、捕獲レベルが高くて、依頼料もそれなりに金額が掛かるのだが?
それ以上の収益を望めると考えた温泉協会が、捕獲の為に報酬を釣り上げるのだった。
「最近、王都の冒険者が減った気がするなぁ?」
冒険者ギルドの職員は、冒険者ギルド内を見回してボソッと言っていた。
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