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第一章 異世界召喚の章
第二話 魔法訓練…と?(僕に魔法と言われて…も?)
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あのジョブやスキルの発表の翌日…僕らは王国内の客用の宿舎に案内された。
それぞれ個室が与えられたが、中でダラダラと過ごす訳にもいかない。
今後の活動を視野に入れて、僕らは王国内の図書館に来た。
僕らを召喚したテルシア王国は、かつては太古の昔に魔を退けた7人の英雄の1人の子孫が継承する国である。
その英雄は【魔導師】であったので、図書館の中の書物は大量にあり、他国に比べると圧倒的な数を誇るという。
10万冊はあるのだと司書が話していた。
僕は本を手に取り目を通した。
…が?
「うん、読めるな…」
小説やラノベだと、召喚者は召喚後に出会った人物と普通に会話が成立していた。
どういう仕組みなのか考えていると、賢斗が声を掛けてきた。
「慱に聞きたい事があるんだけど?」
「ん? どした?」
賢斗は自分の得意分野では、あまり他人に質問を行う事はしない。
余程の事がない限りは、自分で答えを導き出すまで根を詰めるからだ。
とはいえ、元の世界とは勝手が違う。
賢斗もこの世界に来て戸惑っているのだと思う。
「この世界に来て違和感を感じてね…異なる世界に来ているのに会話が成立している事とこの本の文字が理解できている事だよ。 他にも、ジョブやスキルと言った言葉は本来元いた世界の言葉だろ? それなのに普通に会話が成立出来ているのが不思議に感じたと思うんだ。 もしかして、これがエクストラスキルというものなのかな?」
「恐らくだけど… 異世界召喚時のギフトではないかと思っている。 呼び出した人間との会話が出来なければ、コミニケーションは測れないだろうしね。 だから、元いた世界の言葉を都合良く変換されているんだろうと思う。」
賢斗は首を傾げて考え込んでいる。
僕は会話を続けた。
「実はさ…王女様の会話の時に英語やドイツ語を混ぜて話していたつもりなんだが、全て共通言語に変換されていたんだよ。」
「はぁ? 初めての会話で良くそんな事出来る余裕あるな。 慱って心臓に毛でも生えているのか?」
これは試しだった。
元いた世界の言語がどの様に変化されるのを試してみたかった。
「賢斗、これ読んでみて…」
そう言って僕は紙に文字を書いて賢斗に見せた。
賢斗は首を傾げて不思議そうに言った。
「これはペンです…だろ? それが何だというんだ??」
「そう…本当は、”This is a Pen” と書いたつもりなのに勝手に変換されるんだよ。」
「この能力、元いた世界に帰った時でもあったら便利だろうな…」
「確かに… この能力があれば、色々楽が出来そうだよね…って、そういう事が言いたいんじゃない!」
「なんだよ、何がおかしいのさ?」
「解らないのか? 密談とかの類いが一切出来ないんだよ!」
僕の言った言葉に賢斗は頷いた。
さらに僕は続けた。
「多分僕は1週間後のテストで合否に関わらず追い出される可能性が高い。 その際の連絡手段を取りたくても、メモや手紙は中身を確認されるだろう…。」
「いや、流石に追い出される事は無いんじゃないかな?」
賢斗は笑いながら答えた。
そんな楽観的な賢斗に僕はギルドカードを見せてこう言った。
「強大な敵に立ち向かう為に異世界召喚をやったら、1人だけ無能なスキルを持っていたとなれば…」
「あぁ、可能性は高いね。」
賢斗は自分の楽観的な考えを恥じた。
確かにこのままでは、慱は確実に悪い方向に話が進むだろう。
「解った! 残り6日の内に何か考えてみるよ。」
「頼む…」
~~~~~翌日~~~~~
本日から魔法の訓練が始まる。
スキルで魔法が使えると書いてあるとはいっても、いきなり使える訳ではない筈だからだ。
そもそも、元いた世界に魔法なんかは存在しない。
小説やラノベでの異世界転移者や召喚者は開始早々使える人が多いのだが、そんなに簡単にいくものだろうか?
今日は午後から魔法使用の訓練が始まる。
午前中は基本的な魔法の仕組みや使用できる魔法の種類などを本から知識を得るのだった。
【基礎魔法学初級編】
要はイメージである。
頭の中で思い描いたイメージを体内の魔力と混ぜ合わせる事により発現する事が出来る。
ただし、魔法の中には強大な物に対しては詠唱が必要な物もある。
詠唱をする事により、より明確なイメージを確立させ魔力操作により完成度を高める事が出来るのである。
…うん、何となく理論はわかるが…?
恐らくこの世界の魔法を使用できる者は…親から子へ、子から孫へと伝えているのであろう。
実際に目の前で使っている所を見せられながら育っていたら、使用できるのも早いだろう。
それに詠唱を使った強大な魔法か…山くらい大きな炎をイメージしろといっても出来る物ではない。
山火事をイメージしても全く別な物だろうし…。
一旦基礎魔法学の本を閉じて、もう1冊の生活魔法の本を開く。
【生活魔法】とは…?
より鮮明なイメージを体内の魔力と合わせて、言葉を発するだけで発動出来る物である。
生活魔法には詠唱を必要とする物は存在しない。
これを言霊魔法とも言う。
試しにやってみるか!
頭の中で火をイメージする…。
火…火…火…?
んんっ?
しまった!
火の具体的なイメージが思いつかない‼︎
あ…マッチに付けた火をイメージしてみるか…?
人差し指を立て、指先に火が付くイメージをして集中する…
名前は…そうだな…?
「弱火」
うん、出来ないね…。
わかってたよ、やったことないもん。
そもそも体内の魔力自体感じ方が解らないし…?
隣を見ると、賢斗が基礎魔法学を閉じて手の平を上にして…
「ファイア!」
…と唱えていた。
が、当然炎は発動出来ていない。
賢斗は顔を赤くして左右を見た。
僕と目線が合うと、僕は「ニヤッ!」と笑いかけた。
賢斗は恥ずかしさのあまり部屋から飛び出していった。
僕も出来なかったからおあいこ…という意味で微笑み返したのだが。
まぁ、あの状況は…中二病的なセリフを叫び、外した感が否めない。
大丈夫だよ賢斗、僕も出来なかったから!
帰ってきたら励まそうと思っていたのだが、結局賢斗は午後まで姿を見せる事はなかった。
~~~~~昼食後・訓練所~~~~~
僕達5人は、城の中庭にある騎士団の訓練所に案内をされた。
騎士の中には非番の者たちもいて、見学に来ている者たちもいた。
僕達は横一列に並ぶと、目の前には5人が横一列に並んでいる。
「これからお互いの手を合わせて、魔力の流れを感じてもらう訓練をする!」
宮廷魔術師のテルセラ様が言うと、賢斗と手を合わせた。
華奈にはアルカディア王女が、翔也にはギルドマスターのヴァルガンが、飛鳥にはこの国の騎士団長が、僕の前には年配のメイドさんがいる。
それぞれ手を合わせ、魔力を流してきた。
何故に僕の場合が年配のメイドさんなのか?
それはこの人が僕の持っている生活魔法レベル3を持っている人だからである。
手を合わせる事により、何かが流れ込んでくる感じ…流れ込んできた魔力が血管を通り、体の中心に流れ込んでくる感じがある。
それと同時に細胞が目覚めてくるような感じがして、体中がじんわりと熱を放っている感覚になった。
そっか、これが魔力か?
手合わせが終わると、次は基礎段階に入る事になった。
まずはテルセラ様がお手本を見せてくれた。
「初心者の方はまず目を閉じて体内に流れる魔力を感じ、頭の中のイメージを…まずは火にしよう!」
そういって、「ファイア!」と発すると手の平から火の玉を発現させた。
あーこれ、さっき賢斗がやろうとしていた事か。
僕は賢斗を見ると、賢斗はムッとして視線をそらせた。
さっきの事、まだ根に持っていたのか…。
「あ、ダン殿だけはファイアの魔法の適性がないので使えないと思うので、メイド長から言霊魔法を学んでくだされ。 そして出来た者は、目の前の木人形に放って見せてくれ。」
テルセラ様はそういうと、先程のメイド長が僕の前で生活魔法の言霊魔法を実践してくれた。
メイド長が手の平に「火よ!」と唱えると、テルセラ様のファイアより小さな炎が出現した。
体内の魔力はなんとなく感覚としてはわかるが、これをイメージと組み合わせるという事がかなり難しそうに思える。
目の前で実践されても、簡単には出来そうもない。
隣を見ても、他の4人とも苦戦しているように見えた。
「これは中々難しそうだな、う~む? あ、もしかしてあの方法なら…!」
僕は手を突き出すと、手の平から炎を出現させた。
そして反対側の手からも炎を出現させた。
そして2つの炎を前にある鎧を着た木人形に投げつけた。
「あー…なるほど、こういう事か! 難しく考えていたわ! だとすると、これをこうすればアレも可能になるかな?」
僕の放った炎を見た4人は驚きを隠せないでいた。
戦闘職ではない僕が簡単に魔法を出現したからである。
「右手から炎、左手から風…2つ合わせてファイアストーム!…なんちって。」
炎の渦が木人形に当たり、激しく燃えだした。
「おっと、やりすぎた!」と思い消火をしなければならないとして、次の魔法を発動した。
「左手から風を右手から水を、2つ合わせてメイルストローム!…もどき!」
水の渦が燃え盛る木人形に当たると、消火され煙が出てきた。
その煙がこっちに流れてきたので…
「左手から風を右手にも風を…2つ合わせてサイクロン!…っぽいもの!」
向かってきた煙を吸い込みながら木人形に当たると、木人形は木っ端微塵になり上空へ吹き飛んでいった。
な~んだ充分に使えるじゃん生活魔法、これのどこが戦闘には向かないんだろう…?
まぁ、でも…本来の魔法の威力には遠く及ばないのかな…?
そんなことを考えながら皆を見ると、唖然とした顔で僕を見つめていた。
テルセラ様が我に返ると、僕の元に駆け寄ってきた。
「なんなんだ、今のは⁉ 本当に生活魔法なのか?? ありえない威力があったぞ‼ あと、あと!」
何だか解らないけど、テルセラ様は物凄く興奮していた。
僕は氷と風を組み合わせて【クーラー】という魔法を創作しテルセラ様に当てた。
「おぉ、これは涼しいのぅ…じゃなくて! ダン殿はいま無詠唱を使っていたな? それに魔法を組み合わせるなど⁉」
元いた世界の電化製品やバイトで培った経験をイメージして魔法を使っただけなんだけどな?
テルセラ様が豪い剣幕になって質問攻めしてきた。
ここでは埒が明かないと城の中に連れて行かれた…
「あ~~~もしかして、なんかやっちまった…かな?」
王立図書館の奥には、立ち入り禁止の部屋がある。
禁書や様々な薬品があるこの部屋には、希少なアイテムや劇薬などの保管庫にもなっている。
大きなテーブルの上には、ビーカーやフラスコといった研究器具も並んでいる。
扉には本人でしか開かないように魔法が施されている。
そう、ここはテルセラ様の研究室なのである。
そして僕はと言うと…?
この部屋に連れて来られてから、質問攻めに遭っている。
「何故、生活魔法にあれほどの威力がある⁉」
「さぁ、わかりません。 何せ初めて使う物だったので…」
「本来の生活魔法には、あそこまでの威力はないのだ‼」
「あー生活魔法Lv5の恩恵だったからじゃないですか?」
「左右の手に炎を出したあれは何をイメージしたものだったんだ??」
「幼い時から両親が不在だったので、自宅で料理を作る時の火力を想像したらアレになりました。」
「では、ファイアストームといったあれは何をイメージした??」
「バイ…仕事場で料理を作る際に大人数分の鍋を振るう時の火力があの大きさだったので、それをイメージしました。」
「無詠唱…一切言葉を発してなかったであろう??」
「あれ? そうでしたっけ? 夢中になっていたので覚えてません。」
その後もクドクドと小一時間話が続いていき…
正直僕はげんなりしていた。
それにしても、あの程度の事でそんなにも大袈裟なことなのだろうか?
元いた世界の電化製品には、アレ位普通な事なのだが?
「本来2つの属性を組み合わせる事などありえないとされている」…なんて言われている所をみると、この世界の魔法って大した事の無いように思えてくる。
「では最後に1つ」
「まだあるんですか?」
「これで最後じゃ」
さすがにテルセラ様も僕が面倒そうにしているのが伝わったみたいだった。
「お主のギルドカードに表示されているMPは、いまいくつになっておる?」
「えーと? 10減っていま90ですね。」
「は?」
テルセラ様は、素っ頓狂な声を出した。
そして、ブツブツと独り言を言っていると急に立ち上がり…
「ワシは主用で出てくるので、ダン殿は訓練所に戻ってくだされ!」
そう言い残して、テルセラ様は扉を開けて飛んで行ってしまった。
あまりの勢いで扉を開けたものだから、扉は反動で「バタン」と閉まった。
何があったのか知らないけど、まぁ訓練所に戻ろう。
そう思ってドアノブに回すが…?
ガチャガチャガチャとドアノブを弄るが、やばい開かない!
そういえば、テルセラ様がこの部屋に入る前に、「この部屋はワシの研究室になっており、この付近の立ち入りは禁止になっており、この扉はワシしか開くことができない。」…とか言ってたなぁ。
つ・ま・り…?
「おぉーい、ここから出してくれーーーーー‼」
僕は扉をガンガン叩いて叫んだ。
しかし、中は完全防音で外に音が漏れる事はなく、さらに付近は立ち入り禁止だったので人はいない。
テルセラ様が戻るまで、僕はこの部屋で監禁状態だった…。
~~~~~一方、玉座の間では?~~~~~
王城の玉座の上で、テルシア王国・第三十七代目国王・ヴァルディア・リト・テルシアは苦悩していた。
救世主様召喚の儀で、召喚には成功したが?
救世主様の中にあんな無能が混じっていた事を国民にどう発表したら良い物だろうかと必死に悩んでいた。
*ここで1つ話しておこう。
救世主召喚の儀はアルカディア王女筆頭に、白いローブを着たドルイド8人と王国の国民達、大気中のマナにより成り立っているのである。
召喚儀式用の魔法陣を国中に展開し、国民達が大気中に集めたマナを魔力に変換してドルイドがそれを中継して、アルカディア王女に集めて魔力を高めて召喚したのである。
その為、召喚の儀が成功した際には国民に公表しなければならないのだが…?
救世主様達は4人と偽って発表するか、5人だが1人は役立たずだったと報告するのか。
その辺の悩みが葛藤しているのである。
「こちらの不手際もあって召喚してしまったとはいえ、無下に扱う事も出来んしな。」
国王陛下は考えた。
ここは、救世主様達は4人と報告して、ダン殿の存在は伏せて城で働いてもらい、救世主様方に【魔王】を討伐してもらった際に一緒に帰還してもらおう。
ただこの場合、ダン殿には城から一歩も外へ出さずに軟禁という形になってしまわれるが、この際仕方ないであろう…。
もしくは、国民にはダン殿の存在を伏せた状態で国外追放という手も。
無論、殺害なんて考えてはいないが、もしもしようものなら…?
そもそも5人とも顔馴染みの友という関係が厄介だな。
70年前の救世主様達のように赤の他人同士なら良かったんだがなぁ。
*さらにもう1つ付け加えるとしよう。
現段階でダン達5人を帰還させられるだけの魔力はない。
異世界召喚魔法は、いうなれば天災級魔法である。
国一同で初めて発動出来る物である。
2年前に復活した【魔王サズンデス】の所為で、世界中のマナの半分は減ってしまったのである。
【魔王】は存在するだけでマナを貪り食う厄介な存在である。
その為に、テルシア王国は異世界召喚魔法が使えるのが今回だけだった。
*マナとは、世界中に点在する木々が保有しているものである。
穢れた不浄なマナを木々が取り込み、浄化して大気に発散するのである。
それらの大気中のマナを人が取り込み魔力として使用するのである…が?
なら、人々は魔力を無尽蔵に使えるのではないか?
…と思っている方もいるかもしれないが、ここは人の体力と同じでマナを取り込める許容量というものがある。
体内に貯められる魔力の許容量も一定ではない。
そしてゲームとは違い、一晩寝れば回復するという訳でもない。
取り込んで許容量を満たす為には早い者で数日、遅い物ではかなりの日数を要するのである。
「よし、ダン殿には申し訳ないが国民には伏せて国外追放という手を取るとしよう。」
この場合、他の4人の方々をどう誤魔化すかだが、なんとかなるだろう。
一応、1週間後にテストすると猶予を与えたが、あのジョブとスキルでは期待なんて望めないだろうしな。
そんな事を考えていると玉座の間の扉が開き、テルセラが焦った様子で入ってきた。
「陛下、緊急に申し上げたい事が‼」
「テルセラ、まずは落ち着け!」
テルセラは息を整えた。
王様はその様子を見て、少し驚いていた。
普段から冷静沈着なこの男が、ここまで取り乱している所は見た事がないからだ。
「落ち着いたか? なら話せ。」
「ダン殿が大変なんです!」
「ダン殿が何か問題でも犯したのか?」
「問題と言えば…そうなりますな…。」
「何だか含みのある物言いだな、ハッキリ申せ!」
「実は、ダン殿が使用した生活魔法の威力がとんでもなく高く、さらに2種の複合統一魔法を使用したのです!」
生活魔法って従来の属性魔法に比べて威力が10分の1程度な筈だったが…?
それに属性魔法の使い手でもないダン殿が複合魔法を使った?
本来、複合魔法は並の魔道士には使えないのである。
魔力が高いとかMPが豊富にないと発動は困難な為、世界にも数える位しか存在しなかった。
「生活魔法は本来、どんなにレベルが高くてもLv3以上に上がる事はないと思っていたが、ダン殿はLv5だったな。 たかだかレベル差が2くらいでそこまで威力が違う物なのか?」
「恐らくはダン殿のイメージが別物だと考えられます。 異なる世界の仕事場での経験で培われたイメージだと申しておりました。」
「複合魔法も使っていたと言っていたが?」
「はい、複合統一魔法を使ってファイアストーム、メイルストローム、サイクロン等を作り出していました。」
「もう1度聞くぞ、本当に生活魔法だよな?」
「はい、生活魔法です。」
ファイアストームもメイルストロームもサイクロンも火・水・風による中級魔法だったな…?
それらを生活魔法で…しかも、複合統一魔法で作り出した者なんて聞いた事もない。
「あ、勿論の事ですが、従来の魔法の威力には若干及びませんでした。」
一体どうなっている⁉
ハズレスキルではなかったのか??
しかもレベル1だぞ‼
「今の段階では何とも言えん。 様子を見てまた報告をしてくれ…。」
「畏まりました。」
そういってテルセラは出て行った。
訳が分からん。
一体ダン殿には何があるというのだ⁉
王様は、更なる苦悩に悩まされるのであった。
~~~~~再びテルセラの部屋では?~~~~~
「何故ここにいる! どうやって入った⁉」
扉が開いたので、やっと出られると思ってテルセラ様に声を掛けたら、開口一番怒鳴られた。
「訓練所にも戻らずに何をしておったのだ‼」
「主用が出来たとか言って勝手に飛び出して扉を閉めて行って、「何故ここにいる!」はないのではないですか? この扉、テルセラ様以外開けれないんですよね?」
僕はそういうと、テルセラは質問攻めの後の事を思い出した。
「あぁ、すまん事をした。」
「もう良いですよ、帰っても良いですか? この時間では訓練場は誰も居ないでしょうし…」
「あぁ、本当に済まなかった。」
僕は何度も何度も謝って来るテルセラに対して、手を振って応えた。
そしてテルセラの部屋から出て廊下を歩いていたのだけど?
「腹が減ったな…」
僕は部屋に戻る前に、何か腹を満たそうと思って食堂に赴くのだった。
それぞれ個室が与えられたが、中でダラダラと過ごす訳にもいかない。
今後の活動を視野に入れて、僕らは王国内の図書館に来た。
僕らを召喚したテルシア王国は、かつては太古の昔に魔を退けた7人の英雄の1人の子孫が継承する国である。
その英雄は【魔導師】であったので、図書館の中の書物は大量にあり、他国に比べると圧倒的な数を誇るという。
10万冊はあるのだと司書が話していた。
僕は本を手に取り目を通した。
…が?
「うん、読めるな…」
小説やラノベだと、召喚者は召喚後に出会った人物と普通に会話が成立していた。
どういう仕組みなのか考えていると、賢斗が声を掛けてきた。
「慱に聞きたい事があるんだけど?」
「ん? どした?」
賢斗は自分の得意分野では、あまり他人に質問を行う事はしない。
余程の事がない限りは、自分で答えを導き出すまで根を詰めるからだ。
とはいえ、元の世界とは勝手が違う。
賢斗もこの世界に来て戸惑っているのだと思う。
「この世界に来て違和感を感じてね…異なる世界に来ているのに会話が成立している事とこの本の文字が理解できている事だよ。 他にも、ジョブやスキルと言った言葉は本来元いた世界の言葉だろ? それなのに普通に会話が成立出来ているのが不思議に感じたと思うんだ。 もしかして、これがエクストラスキルというものなのかな?」
「恐らくだけど… 異世界召喚時のギフトではないかと思っている。 呼び出した人間との会話が出来なければ、コミニケーションは測れないだろうしね。 だから、元いた世界の言葉を都合良く変換されているんだろうと思う。」
賢斗は首を傾げて考え込んでいる。
僕は会話を続けた。
「実はさ…王女様の会話の時に英語やドイツ語を混ぜて話していたつもりなんだが、全て共通言語に変換されていたんだよ。」
「はぁ? 初めての会話で良くそんな事出来る余裕あるな。 慱って心臓に毛でも生えているのか?」
これは試しだった。
元いた世界の言語がどの様に変化されるのを試してみたかった。
「賢斗、これ読んでみて…」
そう言って僕は紙に文字を書いて賢斗に見せた。
賢斗は首を傾げて不思議そうに言った。
「これはペンです…だろ? それが何だというんだ??」
「そう…本当は、”This is a Pen” と書いたつもりなのに勝手に変換されるんだよ。」
「この能力、元いた世界に帰った時でもあったら便利だろうな…」
「確かに… この能力があれば、色々楽が出来そうだよね…って、そういう事が言いたいんじゃない!」
「なんだよ、何がおかしいのさ?」
「解らないのか? 密談とかの類いが一切出来ないんだよ!」
僕の言った言葉に賢斗は頷いた。
さらに僕は続けた。
「多分僕は1週間後のテストで合否に関わらず追い出される可能性が高い。 その際の連絡手段を取りたくても、メモや手紙は中身を確認されるだろう…。」
「いや、流石に追い出される事は無いんじゃないかな?」
賢斗は笑いながら答えた。
そんな楽観的な賢斗に僕はギルドカードを見せてこう言った。
「強大な敵に立ち向かう為に異世界召喚をやったら、1人だけ無能なスキルを持っていたとなれば…」
「あぁ、可能性は高いね。」
賢斗は自分の楽観的な考えを恥じた。
確かにこのままでは、慱は確実に悪い方向に話が進むだろう。
「解った! 残り6日の内に何か考えてみるよ。」
「頼む…」
~~~~~翌日~~~~~
本日から魔法の訓練が始まる。
スキルで魔法が使えると書いてあるとはいっても、いきなり使える訳ではない筈だからだ。
そもそも、元いた世界に魔法なんかは存在しない。
小説やラノベでの異世界転移者や召喚者は開始早々使える人が多いのだが、そんなに簡単にいくものだろうか?
今日は午後から魔法使用の訓練が始まる。
午前中は基本的な魔法の仕組みや使用できる魔法の種類などを本から知識を得るのだった。
【基礎魔法学初級編】
要はイメージである。
頭の中で思い描いたイメージを体内の魔力と混ぜ合わせる事により発現する事が出来る。
ただし、魔法の中には強大な物に対しては詠唱が必要な物もある。
詠唱をする事により、より明確なイメージを確立させ魔力操作により完成度を高める事が出来るのである。
…うん、何となく理論はわかるが…?
恐らくこの世界の魔法を使用できる者は…親から子へ、子から孫へと伝えているのであろう。
実際に目の前で使っている所を見せられながら育っていたら、使用できるのも早いだろう。
それに詠唱を使った強大な魔法か…山くらい大きな炎をイメージしろといっても出来る物ではない。
山火事をイメージしても全く別な物だろうし…。
一旦基礎魔法学の本を閉じて、もう1冊の生活魔法の本を開く。
【生活魔法】とは…?
より鮮明なイメージを体内の魔力と合わせて、言葉を発するだけで発動出来る物である。
生活魔法には詠唱を必要とする物は存在しない。
これを言霊魔法とも言う。
試しにやってみるか!
頭の中で火をイメージする…。
火…火…火…?
んんっ?
しまった!
火の具体的なイメージが思いつかない‼︎
あ…マッチに付けた火をイメージしてみるか…?
人差し指を立て、指先に火が付くイメージをして集中する…
名前は…そうだな…?
「弱火」
うん、出来ないね…。
わかってたよ、やったことないもん。
そもそも体内の魔力自体感じ方が解らないし…?
隣を見ると、賢斗が基礎魔法学を閉じて手の平を上にして…
「ファイア!」
…と唱えていた。
が、当然炎は発動出来ていない。
賢斗は顔を赤くして左右を見た。
僕と目線が合うと、僕は「ニヤッ!」と笑いかけた。
賢斗は恥ずかしさのあまり部屋から飛び出していった。
僕も出来なかったからおあいこ…という意味で微笑み返したのだが。
まぁ、あの状況は…中二病的なセリフを叫び、外した感が否めない。
大丈夫だよ賢斗、僕も出来なかったから!
帰ってきたら励まそうと思っていたのだが、結局賢斗は午後まで姿を見せる事はなかった。
~~~~~昼食後・訓練所~~~~~
僕達5人は、城の中庭にある騎士団の訓練所に案内をされた。
騎士の中には非番の者たちもいて、見学に来ている者たちもいた。
僕達は横一列に並ぶと、目の前には5人が横一列に並んでいる。
「これからお互いの手を合わせて、魔力の流れを感じてもらう訓練をする!」
宮廷魔術師のテルセラ様が言うと、賢斗と手を合わせた。
華奈にはアルカディア王女が、翔也にはギルドマスターのヴァルガンが、飛鳥にはこの国の騎士団長が、僕の前には年配のメイドさんがいる。
それぞれ手を合わせ、魔力を流してきた。
何故に僕の場合が年配のメイドさんなのか?
それはこの人が僕の持っている生活魔法レベル3を持っている人だからである。
手を合わせる事により、何かが流れ込んでくる感じ…流れ込んできた魔力が血管を通り、体の中心に流れ込んでくる感じがある。
それと同時に細胞が目覚めてくるような感じがして、体中がじんわりと熱を放っている感覚になった。
そっか、これが魔力か?
手合わせが終わると、次は基礎段階に入る事になった。
まずはテルセラ様がお手本を見せてくれた。
「初心者の方はまず目を閉じて体内に流れる魔力を感じ、頭の中のイメージを…まずは火にしよう!」
そういって、「ファイア!」と発すると手の平から火の玉を発現させた。
あーこれ、さっき賢斗がやろうとしていた事か。
僕は賢斗を見ると、賢斗はムッとして視線をそらせた。
さっきの事、まだ根に持っていたのか…。
「あ、ダン殿だけはファイアの魔法の適性がないので使えないと思うので、メイド長から言霊魔法を学んでくだされ。 そして出来た者は、目の前の木人形に放って見せてくれ。」
テルセラ様はそういうと、先程のメイド長が僕の前で生活魔法の言霊魔法を実践してくれた。
メイド長が手の平に「火よ!」と唱えると、テルセラ様のファイアより小さな炎が出現した。
体内の魔力はなんとなく感覚としてはわかるが、これをイメージと組み合わせるという事がかなり難しそうに思える。
目の前で実践されても、簡単には出来そうもない。
隣を見ても、他の4人とも苦戦しているように見えた。
「これは中々難しそうだな、う~む? あ、もしかしてあの方法なら…!」
僕は手を突き出すと、手の平から炎を出現させた。
そして反対側の手からも炎を出現させた。
そして2つの炎を前にある鎧を着た木人形に投げつけた。
「あー…なるほど、こういう事か! 難しく考えていたわ! だとすると、これをこうすればアレも可能になるかな?」
僕の放った炎を見た4人は驚きを隠せないでいた。
戦闘職ではない僕が簡単に魔法を出現したからである。
「右手から炎、左手から風…2つ合わせてファイアストーム!…なんちって。」
炎の渦が木人形に当たり、激しく燃えだした。
「おっと、やりすぎた!」と思い消火をしなければならないとして、次の魔法を発動した。
「左手から風を右手から水を、2つ合わせてメイルストローム!…もどき!」
水の渦が燃え盛る木人形に当たると、消火され煙が出てきた。
その煙がこっちに流れてきたので…
「左手から風を右手にも風を…2つ合わせてサイクロン!…っぽいもの!」
向かってきた煙を吸い込みながら木人形に当たると、木人形は木っ端微塵になり上空へ吹き飛んでいった。
な~んだ充分に使えるじゃん生活魔法、これのどこが戦闘には向かないんだろう…?
まぁ、でも…本来の魔法の威力には遠く及ばないのかな…?
そんなことを考えながら皆を見ると、唖然とした顔で僕を見つめていた。
テルセラ様が我に返ると、僕の元に駆け寄ってきた。
「なんなんだ、今のは⁉ 本当に生活魔法なのか?? ありえない威力があったぞ‼ あと、あと!」
何だか解らないけど、テルセラ様は物凄く興奮していた。
僕は氷と風を組み合わせて【クーラー】という魔法を創作しテルセラ様に当てた。
「おぉ、これは涼しいのぅ…じゃなくて! ダン殿はいま無詠唱を使っていたな? それに魔法を組み合わせるなど⁉」
元いた世界の電化製品やバイトで培った経験をイメージして魔法を使っただけなんだけどな?
テルセラ様が豪い剣幕になって質問攻めしてきた。
ここでは埒が明かないと城の中に連れて行かれた…
「あ~~~もしかして、なんかやっちまった…かな?」
王立図書館の奥には、立ち入り禁止の部屋がある。
禁書や様々な薬品があるこの部屋には、希少なアイテムや劇薬などの保管庫にもなっている。
大きなテーブルの上には、ビーカーやフラスコといった研究器具も並んでいる。
扉には本人でしか開かないように魔法が施されている。
そう、ここはテルセラ様の研究室なのである。
そして僕はと言うと…?
この部屋に連れて来られてから、質問攻めに遭っている。
「何故、生活魔法にあれほどの威力がある⁉」
「さぁ、わかりません。 何せ初めて使う物だったので…」
「本来の生活魔法には、あそこまでの威力はないのだ‼」
「あー生活魔法Lv5の恩恵だったからじゃないですか?」
「左右の手に炎を出したあれは何をイメージしたものだったんだ??」
「幼い時から両親が不在だったので、自宅で料理を作る時の火力を想像したらアレになりました。」
「では、ファイアストームといったあれは何をイメージした??」
「バイ…仕事場で料理を作る際に大人数分の鍋を振るう時の火力があの大きさだったので、それをイメージしました。」
「無詠唱…一切言葉を発してなかったであろう??」
「あれ? そうでしたっけ? 夢中になっていたので覚えてません。」
その後もクドクドと小一時間話が続いていき…
正直僕はげんなりしていた。
それにしても、あの程度の事でそんなにも大袈裟なことなのだろうか?
元いた世界の電化製品には、アレ位普通な事なのだが?
「本来2つの属性を組み合わせる事などありえないとされている」…なんて言われている所をみると、この世界の魔法って大した事の無いように思えてくる。
「では最後に1つ」
「まだあるんですか?」
「これで最後じゃ」
さすがにテルセラ様も僕が面倒そうにしているのが伝わったみたいだった。
「お主のギルドカードに表示されているMPは、いまいくつになっておる?」
「えーと? 10減っていま90ですね。」
「は?」
テルセラ様は、素っ頓狂な声を出した。
そして、ブツブツと独り言を言っていると急に立ち上がり…
「ワシは主用で出てくるので、ダン殿は訓練所に戻ってくだされ!」
そう言い残して、テルセラ様は扉を開けて飛んで行ってしまった。
あまりの勢いで扉を開けたものだから、扉は反動で「バタン」と閉まった。
何があったのか知らないけど、まぁ訓練所に戻ろう。
そう思ってドアノブに回すが…?
ガチャガチャガチャとドアノブを弄るが、やばい開かない!
そういえば、テルセラ様がこの部屋に入る前に、「この部屋はワシの研究室になっており、この付近の立ち入りは禁止になっており、この扉はワシしか開くことができない。」…とか言ってたなぁ。
つ・ま・り…?
「おぉーい、ここから出してくれーーーーー‼」
僕は扉をガンガン叩いて叫んだ。
しかし、中は完全防音で外に音が漏れる事はなく、さらに付近は立ち入り禁止だったので人はいない。
テルセラ様が戻るまで、僕はこの部屋で監禁状態だった…。
~~~~~一方、玉座の間では?~~~~~
王城の玉座の上で、テルシア王国・第三十七代目国王・ヴァルディア・リト・テルシアは苦悩していた。
救世主様召喚の儀で、召喚には成功したが?
救世主様の中にあんな無能が混じっていた事を国民にどう発表したら良い物だろうかと必死に悩んでいた。
*ここで1つ話しておこう。
救世主召喚の儀はアルカディア王女筆頭に、白いローブを着たドルイド8人と王国の国民達、大気中のマナにより成り立っているのである。
召喚儀式用の魔法陣を国中に展開し、国民達が大気中に集めたマナを魔力に変換してドルイドがそれを中継して、アルカディア王女に集めて魔力を高めて召喚したのである。
その為、召喚の儀が成功した際には国民に公表しなければならないのだが…?
救世主様達は4人と偽って発表するか、5人だが1人は役立たずだったと報告するのか。
その辺の悩みが葛藤しているのである。
「こちらの不手際もあって召喚してしまったとはいえ、無下に扱う事も出来んしな。」
国王陛下は考えた。
ここは、救世主様達は4人と報告して、ダン殿の存在は伏せて城で働いてもらい、救世主様方に【魔王】を討伐してもらった際に一緒に帰還してもらおう。
ただこの場合、ダン殿には城から一歩も外へ出さずに軟禁という形になってしまわれるが、この際仕方ないであろう…。
もしくは、国民にはダン殿の存在を伏せた状態で国外追放という手も。
無論、殺害なんて考えてはいないが、もしもしようものなら…?
そもそも5人とも顔馴染みの友という関係が厄介だな。
70年前の救世主様達のように赤の他人同士なら良かったんだがなぁ。
*さらにもう1つ付け加えるとしよう。
現段階でダン達5人を帰還させられるだけの魔力はない。
異世界召喚魔法は、いうなれば天災級魔法である。
国一同で初めて発動出来る物である。
2年前に復活した【魔王サズンデス】の所為で、世界中のマナの半分は減ってしまったのである。
【魔王】は存在するだけでマナを貪り食う厄介な存在である。
その為に、テルシア王国は異世界召喚魔法が使えるのが今回だけだった。
*マナとは、世界中に点在する木々が保有しているものである。
穢れた不浄なマナを木々が取り込み、浄化して大気に発散するのである。
それらの大気中のマナを人が取り込み魔力として使用するのである…が?
なら、人々は魔力を無尽蔵に使えるのではないか?
…と思っている方もいるかもしれないが、ここは人の体力と同じでマナを取り込める許容量というものがある。
体内に貯められる魔力の許容量も一定ではない。
そしてゲームとは違い、一晩寝れば回復するという訳でもない。
取り込んで許容量を満たす為には早い者で数日、遅い物ではかなりの日数を要するのである。
「よし、ダン殿には申し訳ないが国民には伏せて国外追放という手を取るとしよう。」
この場合、他の4人の方々をどう誤魔化すかだが、なんとかなるだろう。
一応、1週間後にテストすると猶予を与えたが、あのジョブとスキルでは期待なんて望めないだろうしな。
そんな事を考えていると玉座の間の扉が開き、テルセラが焦った様子で入ってきた。
「陛下、緊急に申し上げたい事が‼」
「テルセラ、まずは落ち着け!」
テルセラは息を整えた。
王様はその様子を見て、少し驚いていた。
普段から冷静沈着なこの男が、ここまで取り乱している所は見た事がないからだ。
「落ち着いたか? なら話せ。」
「ダン殿が大変なんです!」
「ダン殿が何か問題でも犯したのか?」
「問題と言えば…そうなりますな…。」
「何だか含みのある物言いだな、ハッキリ申せ!」
「実は、ダン殿が使用した生活魔法の威力がとんでもなく高く、さらに2種の複合統一魔法を使用したのです!」
生活魔法って従来の属性魔法に比べて威力が10分の1程度な筈だったが…?
それに属性魔法の使い手でもないダン殿が複合魔法を使った?
本来、複合魔法は並の魔道士には使えないのである。
魔力が高いとかMPが豊富にないと発動は困難な為、世界にも数える位しか存在しなかった。
「生活魔法は本来、どんなにレベルが高くてもLv3以上に上がる事はないと思っていたが、ダン殿はLv5だったな。 たかだかレベル差が2くらいでそこまで威力が違う物なのか?」
「恐らくはダン殿のイメージが別物だと考えられます。 異なる世界の仕事場での経験で培われたイメージだと申しておりました。」
「複合魔法も使っていたと言っていたが?」
「はい、複合統一魔法を使ってファイアストーム、メイルストローム、サイクロン等を作り出していました。」
「もう1度聞くぞ、本当に生活魔法だよな?」
「はい、生活魔法です。」
ファイアストームもメイルストロームもサイクロンも火・水・風による中級魔法だったな…?
それらを生活魔法で…しかも、複合統一魔法で作り出した者なんて聞いた事もない。
「あ、勿論の事ですが、従来の魔法の威力には若干及びませんでした。」
一体どうなっている⁉
ハズレスキルではなかったのか??
しかもレベル1だぞ‼
「今の段階では何とも言えん。 様子を見てまた報告をしてくれ…。」
「畏まりました。」
そういってテルセラは出て行った。
訳が分からん。
一体ダン殿には何があるというのだ⁉
王様は、更なる苦悩に悩まされるのであった。
~~~~~再びテルセラの部屋では?~~~~~
「何故ここにいる! どうやって入った⁉」
扉が開いたので、やっと出られると思ってテルセラ様に声を掛けたら、開口一番怒鳴られた。
「訓練所にも戻らずに何をしておったのだ‼」
「主用が出来たとか言って勝手に飛び出して扉を閉めて行って、「何故ここにいる!」はないのではないですか? この扉、テルセラ様以外開けれないんですよね?」
僕はそういうと、テルセラは質問攻めの後の事を思い出した。
「あぁ、すまん事をした。」
「もう良いですよ、帰っても良いですか? この時間では訓練場は誰も居ないでしょうし…」
「あぁ、本当に済まなかった。」
僕は何度も何度も謝って来るテルセラに対して、手を振って応えた。
そしてテルセラの部屋から出て廊下を歩いていたのだけど?
「腹が減ったな…」
僕は部屋に戻る前に、何か腹を満たそうと思って食堂に赴くのだった。
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