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第一章:始まりの世界

48.新しい転校生②

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 校長のスピーチは長く二日に渡って行われるのが通例
となっており、他の学校では考えられない事がまかり通
っていた。始業式の当日に銀貨を首に掛けずに済んだ事
に胸を撫で下ろしていたが明日には納品のうひんに来ると父親が
話していた事を想い出していた。間違いなく不良軍団ふりょうぐんだん
目を付けられるし、手紙で校長を説得せっとくさせられるという
話も確実に信じてる訳ではなかった。
 問題は起こってから対応するとして帰宅後に集める為
のルールをじっくりと覚える時間に当てようと思った。
校長の話は右から左へ抜けていき、学生は他の事を考え
ていた。きっとクラス替えで誰と一緒になっているかが
気になっている所だろう。

 タカフミは体育館から外に出ようとした時、前をしっ
かりと見ていないため、女性集団の一人と肩がぶつかっ
てしまった。
「どこ見て歩いてるの? あなた何年の誰よ」
「今日から四年生になる大山です。ぶつかってスミマセ
ンでした」
「あなたが大山君。反抗的はんこうてきな目をしてくると思ったら、
意外と大人しいのね。うわさと違うわね。みんな同級生どうきゅうせいよ」
「どんな噂かしりませんが僕は僕でしかありませんので」
 集団の奥から転校生が目の前で止まる。男子と比べて
見劣みおとりしない高身長だ。高さで圧倒されていると蒼色
の髪を左手でかきあげて、お嬢様が口を開いた。
「大山さん。私も同じ学年ですの。お父様は元気?」
「僕の父親を知ってるの?」
「もちろんよ。私のパパが尊敬してる位だもの」
「家ではプラモデルばかり作ってるけど……」
冗談じょうだんが上手いのね。うちのパパは体を動かす事が好き
なの。だからプラモデルはハズレよ」
(結構、真面目に、こたえたんだけどなぁ)
「宜しくね。では、ごきげんよう!」 
 嵐が去ったような静けさが戻っていたが父親の秘密の
手掛かりになる情報を知ってるかもしれない人物だとい
う事が分かったのは有り難かったが免疫めんえきがないのタイプ
との会話で普段の三倍疲れていた。
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