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第一章:始まりの世界 ”自己啓発編”

56.上級生の反応③

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「どうして、イジられてる子は何も言わないの?」
「周りから観たら些細ささいな事に見えるかもしれないから、
場がしらけて空気読めない人だと思われたくないし、求
められているなら我慢がまんしようと思うようになるんだ」
「でもストレスはまる一方だよね!?」
「そうだ。だから厄介やっかいなんだよ。しかもイジりは段々だんだん
エスカレートしていく可能性があるんだ」
「そうなったら自分が自分で居られなくなると言う事?」
「そうだ。まぁ俺たち不良は腕力わんりょくで物事を解決しようと
するから心の葛藤かっとうみたいな物が幾分いくぶんは少ない気がするけ
どな。親に無理なら誰かに相談した方が絶対良いよ。話
すだけでも心が軽くなるからさ。俺も小学校低学年まで
は親が経営する病院の跡継あとつぎになる為に医者を目指して
努力してる秀才の兄貴と比べられて居場所が何処にも無
かったんだ。あの時は正直、辛かったよ」
「そんな体験されてたんですね。意外でした」
「しんみりした話になっちまったな。お前と話してると
不思議と普段言わないような事まで話してしまう自分が
いる。タメ口だってムカつくはずなのにタカフミならば
良いかと思わせてくれる何かがあるような気がする。そ
れが何なのかは頭が悪い俺には言葉にする事が出来ない
けどな……」
「今は何も思い付かないだけで答えが分かったら、その
時にまた教えて下さい!」
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