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第一章:始まりの世界 ”自己啓発編”

59.上級生の決断②

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 明石はツルハシのつかを両手でしっかりと握り込んでか
渾身こんしんの力を込めて対象物である銀貨に打ち付けた。
「ワァーーーゥィワァーーアー!」
 獣の咆哮ほうこうが辺り一面に響き渡るが何かが出現した感じ
は見られない。ライオン等の吠え方とは似て非なるもの
である事を二人は感じていた。低音のイメージとは程遠
く、高音部分がメインなっている感じだった。

 タカフミは初めて聞く、その声に膝がブルブルと震え
ていたが明石の様子がオカシイ事に気が付いて変化を読
み取ろうとする。
「うぉーーーっーーー。いてぇーーーーっ」
 明石は左手のこうに鋭い痛みが走り抜けて我慢出来ず
に声を荒げると痛みが発生している部分を注視した。
「何だこりゃ!?」
  明らかに動物に噛まれた穴が複数空いており、穴か
ら血がしたたり落ちている。地面には落ちた血が溜まっ
て、ちょっとした水たまりになる位にまでになっている。
喧嘩した時でさえ、ここまでの血を流した事が無かった
ので何をどうして良いのかさえ分からなくなっていた。
 痛みが消える事のない恐怖の中で立っている事が出来
なくなり、膝が崩れ落ちて地面にバッサリと倒れた。

「明石先輩! 大丈夫ですか?」
 タカフミは、苦しみもがいて地面を転げまわっている
先輩を観ながら、さっきから頭に思い浮かんでいる言葉
を大声で告げる。
「銀貨の表面にはピューマの顔が描かれています!」
「じゃぁ、俺が観たのは裏面って事か。お前一体、何者
だよ?」

 あまりの痛さに意識が飛びそうな気配がするのに朦朧もうろう
としてる所を彷徨さまよっている。まるで拷問ごうもんを受けているみ
たいだ。


*ピューマは頭蓋骨ずがいこつの構造上、吠えないと言われていま
すが初めて聞いた人は判断がつきませんので咆哮を使い
ました。

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