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第二部 少年期のはじまり
第百四話 王都の不思議な服屋
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ちょっとハードな空の旅を終えて、グリフォンのシェスタとは王都手前の小さな森で別れた。
シェスタは、ヴィオラの首飾りの宝石の中へ吸い込まれるように消え、それから先はヴィオラがシュリを抱えて王都まで歩いてくれた。
ヴィオラの持つ首飾りは召喚石という特殊な石がはめ込まれていて、テイムしたモンスターをそこで飼育することが出来るのだそうだ。
テイムしたモンスターをただ放置しておくことは中々難しいので、召喚石を持つのは半ば義務化されているらしい。
とはいえ、ビーストテイマーはちょっとマイナーな職業なので、モンスターを飼っているの人はそんなにいないらしいのだが。
飼えばそれなりに食事代や世話の手間などもあるし、そこがネックになって手を出さない人も多いらしい。
また、召喚している間は主の魔力を必要とするため、魔力の少ない者には使い勝手は悪かった。
まあ、レベルも高く魔力量も多いヴィオラやシュリには、問題にもならない程度の魔力量ではあるのだが。
そんな話をつらつらしながら歩き、気が付けば王都の城壁と正門が見えてきた。
王都には南にある正門の他に、北、東、西と三カ所に門は設置されているが、基本的に住人や旅人が利用するのは正門のみと決められているらしい。
他の門は、城の騎士団が使用するなど、公用で使われることがメインの様だった。
そんなわけで。
旅人のくくりであるヴィオラとシュリが王都に入るには正門をくぐるしかないのだが、さすがは王都。
入場の為の列がずら~っと長く続いている。
最後尾に並んだら、いつ王都に入れるのかと言うような状態だった。
だが、ヴィオラはその列を無視してすたすたと王都の門へと進んでいく。
そして、門に立つ門番の一人を呼び寄せると、懐から引っ張り出したなにやら豪華なプレートを見せた。
すると、門番の態度が一瞬で変わり、待つことなく優先的に王都の中へと入れて貰うことが出来たのだった。
「んふふ~。やっかいごとを押しつけられるのは面倒だけど、こういう時は便利で助かるわよね~」
ほくほく顔のヴィオラに、
「おばー様。そのプレートってなんなの?何かの身分証明書??」
シュリは可愛らしく首を傾げてそう尋ねた。
ヴィオラは、そんなシュリの頭をかいぐりかいぐり撫でながら、
「身分証明書といえば身分証明書なのかしら。他の人には秘密だけど、これは王様から貰った秘密のプレートなの。これを持っている人は、王様の用事をする人だから、優先しなさいってやつ」
ちょっとかみ砕いてそう説明してくれた。
それを聞いたシュリは目をまあるくする。
「へぇ?すごいね~。王様、そんなすごいモノ、おばー様にくれたんだ」
「ん~?まぁね。困ったらすぐに助けに来て欲しいって渡されたのよ、これ。ありがた迷惑って思うときもあるんだけど、まあ、便利な時は便利なものよ」
見る?と手渡され、手に持って眺めてみた。
そこには、流麗な文字で『これを持つ者に最大限の便宜を図るように』といった意味の言葉が小難しく彫り込まれ、その下には王家の紋章っぽい豪華な紋章と、王様の署名っぽい署名が彫られていた。
王家の紋章も、王様のサインも、見たことがないので本物と断言できないところが悲しいが、王都の兵士がこれを見てヴィオラを優遇したのだから、きっと本物なのだろう。
(そういえば、王様の名前も知らないなぁ)
とそんな罰当たりな事を考えつつ、シュリはプレートをヴィオラに返した。
受け取った彼女はそれをまた胸元に押し込みながら、なれた様子で王都の複雑な道をすいすいと歩いていく。
どこに行くのかと尋ねると、まず服屋、それから宿屋!との答えが返ってきた。
そしてその宣言通り、ヴィオラは至って庶民的な、小さな服屋にシュリを抱えたまま乗り込んでいった。
「いらっしゃいませ、お嬢様。何かご入り用でしょうか?」
「この子が着れる服を何着か見繕って欲しいんだけど。下着も含めてね」
出てきた店主らしきお爺さんに、ヴィオラはシュリをぐいっと突きつける。
お爺さんは、びっくりしたように身を引いたものの、すぐにシュリの体をよーく見てからにこっと微笑み、
「かしこまりました。ただいまお持ちいたしますので、そちらのイスにおかけになってお待ちください」
そう言って店の奥の方へと戻っていった。
残されたヴィオラとシュリは、おいてあったイスに素直に腰掛けると店内をきょろきょろと見回した。
残念ながら、イスは一つしかなかったので、シュリは自動的にヴィオラのお膝の上だ。
手持ちぶさたらしいヴィオラになで回されながら待つこと数分、お爺さんが洋服を抱えて戻ってきた。
「わざわざ当店をご利用ということは、あまり目立たない普通の服をお望みかと思いましたので、そう言ったものを何点か見繕って参りましたので、ご確認ください。サイズは問題ないかと思いますが、一応、そちらもご確認を」
「わかったわ。ありがとう」
受け取ったヴィオラが確認をするが、どれも彼女が思うとおりのものだったらしい。
満足そうに頷いて、
「いいわね。全部もらってくわ。いくら?」
と笑顔で問えば、
「ありがとうございます。ではこちらになります」
答えるお爺さんもまた、満面の笑顔で料金を書いた紙をそっとヴィオラに差し出す。
それを受け取って確認したヴィオラは思わず驚愕の声を上げた。
「うっわ~、安いわね?ほんとにこれでいいの??儲け出てる?」
「はい、もちろんでございます。代わりといってはなんですが……」
言いながら、いそいそと別に包んであった包みを取りだしてヴィオラに差し出した。
「こちらを良かったら坊ちゃんの部屋着にでも使って頂ければ、と」
「え?部屋着?なに、くれるの??」
ヴィオラが受け取り、包みから取りだしたそれは、何とももっふもふな着ぐるみのつなぎだった。
おそらくグリフォンをかたどったのだろう。
下半身はライオンぽくて、上半身は鳥を模しているようだ。
フードはふあふあのデフォルメされた可愛らしい鷲で、羽の付いた小さなリュックがおまけに付いていた。
その可愛らしさに、ヴィオラは思わず絶句し、無言のままお爺さんを見た。もちろんシュリも同様に。
お爺さんは真っ白なお髭の上品なお顔をぽっと赤らめて、
「実はわたくし、可愛らしいものには目がないもので。いつか着こなしてくれる逸材が現れる事を夢見ながら、毎晩手慰みに針仕事をしていたのでございます。気が付けば、手作りの着ぐるみ達も結構な量になり、さてどうしようかと思っていたところに現れたのが……」
「この子ってわけね……」
「左様にございます……」
「その気持ち、よーく分かるわ。だってこの子、驚愕するくらいに可愛いんだもの」
「そうなんです。見た瞬間、正直、わたくし、驚愕致しました。そして思ったのです。わたくしの丹精込めた着ぐるみを着こなせるのは、この坊ちゃんしかいない、と」
拳をにぎり、力強く言い切ったお爺さんの言葉に、ヴィオラもうんうんと頷いている。
だが、ふと腑に落ちないように手元の着ぐるみを見つめ、
「でもさ、なんでグリフォンなの?」
もっと可愛い動物とか、他にもいるでしょ?と首を傾げてヴィオラが尋ねれば、
「そこは、もちろん。SSの王の懐刀、ヴィオラ・シュナイダー様の眷属にグリフォンがいることは、有名な事でございますから、あえて、でございます」
お爺さんは当然の事のようにそう返し、ヴィオラを驚かせた。
「なぁんだ。私のこと、知ってたのね~」
「この王都であなたのことを知らない者はもぐりでございます。かくいうわたくしも、あなた様のふぁんでございますから」
「そ?ありがと」
「ところで、その坊ちゃんは、ヴィオラ様のお身内ですね?」
「あ、やっぱりわかっちゃう?」
「別々にいらっしゃれば分からなかったかもしれませんが、そうやって連れ立っているところを見たら分かる程度には似ていらっしゃるかと」
「そっかぁ。まあ、隠してるわけでもないからいいんだけどね。この子は私の孫よ。シュリ、親切なお爺さんにご挨拶は?」
「えっと、シュリナスカ・ルバーノです。お爺さん、お洋服をありがとうございます」
急に話を振られたが、とくに慌てることなくシュリはペコリと頭を下げて挨拶をした。
それを見ていたお爺さんの鼻息が荒くなったように思えたのは、たぶん気のせいだろう。うん、気のせいだと思いたい。
「じゃあ、ありがたく服は頂いていくわね?もちろん、この着ぐるみも。安くして貰って助かったわ」
「いえいえ、わたくしこそ、その着ぐるみを正しい貰い手の元へ送り出せてほっとしました」
「……因みに、他にもあるのよね?」
「……もちろんでございます。それはもう、山のように。それにシュリ様のためなら、特別オーダーもいといません!なんでもお申し付け下さい!!」
「ふっ。さすがね。今度、予備の着ぐるみを買いに来るわ。その時までに、お勧めを厳選しておいて」
「っ!!!かしこまりました。さてさて、お勧めしたいものが山ほどで、そこから選出するとなると、これはしばらく眠れそうにありませんなぁ」
はっはっはっとお爺さんが笑う。
「頼んだわ。あなたの審美眼、信用しているわよ?」
ヴィオラもニヤリと笑い、まとめて包んで貰った荷物を受け取ってその店を後にした。
お爺さんに見送られて外に出て少し進んでから、振り向いて店の名前を確認する。
マルコムの店と書かれた地味な看板がかかっているが、店と言うものは中に入ってみるまで分からないものだと思う。
入ってみなければ、あれほど仕事が出来て変わり者の店主がいる店だとは夢にも思わなかっただろう。
この出会いがきっかけとなり、今後シュリのワードローブにふわもふの着ぐるみが増えることになる。
避けようのないその未来を半ば予想しつつも、出来る限り現実から目を逸らしていたいと思う苦労性なシュリなのだった。
シェスタは、ヴィオラの首飾りの宝石の中へ吸い込まれるように消え、それから先はヴィオラがシュリを抱えて王都まで歩いてくれた。
ヴィオラの持つ首飾りは召喚石という特殊な石がはめ込まれていて、テイムしたモンスターをそこで飼育することが出来るのだそうだ。
テイムしたモンスターをただ放置しておくことは中々難しいので、召喚石を持つのは半ば義務化されているらしい。
とはいえ、ビーストテイマーはちょっとマイナーな職業なので、モンスターを飼っているの人はそんなにいないらしいのだが。
飼えばそれなりに食事代や世話の手間などもあるし、そこがネックになって手を出さない人も多いらしい。
また、召喚している間は主の魔力を必要とするため、魔力の少ない者には使い勝手は悪かった。
まあ、レベルも高く魔力量も多いヴィオラやシュリには、問題にもならない程度の魔力量ではあるのだが。
そんな話をつらつらしながら歩き、気が付けば王都の城壁と正門が見えてきた。
王都には南にある正門の他に、北、東、西と三カ所に門は設置されているが、基本的に住人や旅人が利用するのは正門のみと決められているらしい。
他の門は、城の騎士団が使用するなど、公用で使われることがメインの様だった。
そんなわけで。
旅人のくくりであるヴィオラとシュリが王都に入るには正門をくぐるしかないのだが、さすがは王都。
入場の為の列がずら~っと長く続いている。
最後尾に並んだら、いつ王都に入れるのかと言うような状態だった。
だが、ヴィオラはその列を無視してすたすたと王都の門へと進んでいく。
そして、門に立つ門番の一人を呼び寄せると、懐から引っ張り出したなにやら豪華なプレートを見せた。
すると、門番の態度が一瞬で変わり、待つことなく優先的に王都の中へと入れて貰うことが出来たのだった。
「んふふ~。やっかいごとを押しつけられるのは面倒だけど、こういう時は便利で助かるわよね~」
ほくほく顔のヴィオラに、
「おばー様。そのプレートってなんなの?何かの身分証明書??」
シュリは可愛らしく首を傾げてそう尋ねた。
ヴィオラは、そんなシュリの頭をかいぐりかいぐり撫でながら、
「身分証明書といえば身分証明書なのかしら。他の人には秘密だけど、これは王様から貰った秘密のプレートなの。これを持っている人は、王様の用事をする人だから、優先しなさいってやつ」
ちょっとかみ砕いてそう説明してくれた。
それを聞いたシュリは目をまあるくする。
「へぇ?すごいね~。王様、そんなすごいモノ、おばー様にくれたんだ」
「ん~?まぁね。困ったらすぐに助けに来て欲しいって渡されたのよ、これ。ありがた迷惑って思うときもあるんだけど、まあ、便利な時は便利なものよ」
見る?と手渡され、手に持って眺めてみた。
そこには、流麗な文字で『これを持つ者に最大限の便宜を図るように』といった意味の言葉が小難しく彫り込まれ、その下には王家の紋章っぽい豪華な紋章と、王様の署名っぽい署名が彫られていた。
王家の紋章も、王様のサインも、見たことがないので本物と断言できないところが悲しいが、王都の兵士がこれを見てヴィオラを優遇したのだから、きっと本物なのだろう。
(そういえば、王様の名前も知らないなぁ)
とそんな罰当たりな事を考えつつ、シュリはプレートをヴィオラに返した。
受け取った彼女はそれをまた胸元に押し込みながら、なれた様子で王都の複雑な道をすいすいと歩いていく。
どこに行くのかと尋ねると、まず服屋、それから宿屋!との答えが返ってきた。
そしてその宣言通り、ヴィオラは至って庶民的な、小さな服屋にシュリを抱えたまま乗り込んでいった。
「いらっしゃいませ、お嬢様。何かご入り用でしょうか?」
「この子が着れる服を何着か見繕って欲しいんだけど。下着も含めてね」
出てきた店主らしきお爺さんに、ヴィオラはシュリをぐいっと突きつける。
お爺さんは、びっくりしたように身を引いたものの、すぐにシュリの体をよーく見てからにこっと微笑み、
「かしこまりました。ただいまお持ちいたしますので、そちらのイスにおかけになってお待ちください」
そう言って店の奥の方へと戻っていった。
残されたヴィオラとシュリは、おいてあったイスに素直に腰掛けると店内をきょろきょろと見回した。
残念ながら、イスは一つしかなかったので、シュリは自動的にヴィオラのお膝の上だ。
手持ちぶさたらしいヴィオラになで回されながら待つこと数分、お爺さんが洋服を抱えて戻ってきた。
「わざわざ当店をご利用ということは、あまり目立たない普通の服をお望みかと思いましたので、そう言ったものを何点か見繕って参りましたので、ご確認ください。サイズは問題ないかと思いますが、一応、そちらもご確認を」
「わかったわ。ありがとう」
受け取ったヴィオラが確認をするが、どれも彼女が思うとおりのものだったらしい。
満足そうに頷いて、
「いいわね。全部もらってくわ。いくら?」
と笑顔で問えば、
「ありがとうございます。ではこちらになります」
答えるお爺さんもまた、満面の笑顔で料金を書いた紙をそっとヴィオラに差し出す。
それを受け取って確認したヴィオラは思わず驚愕の声を上げた。
「うっわ~、安いわね?ほんとにこれでいいの??儲け出てる?」
「はい、もちろんでございます。代わりといってはなんですが……」
言いながら、いそいそと別に包んであった包みを取りだしてヴィオラに差し出した。
「こちらを良かったら坊ちゃんの部屋着にでも使って頂ければ、と」
「え?部屋着?なに、くれるの??」
ヴィオラが受け取り、包みから取りだしたそれは、何とももっふもふな着ぐるみのつなぎだった。
おそらくグリフォンをかたどったのだろう。
下半身はライオンぽくて、上半身は鳥を模しているようだ。
フードはふあふあのデフォルメされた可愛らしい鷲で、羽の付いた小さなリュックがおまけに付いていた。
その可愛らしさに、ヴィオラは思わず絶句し、無言のままお爺さんを見た。もちろんシュリも同様に。
お爺さんは真っ白なお髭の上品なお顔をぽっと赤らめて、
「実はわたくし、可愛らしいものには目がないもので。いつか着こなしてくれる逸材が現れる事を夢見ながら、毎晩手慰みに針仕事をしていたのでございます。気が付けば、手作りの着ぐるみ達も結構な量になり、さてどうしようかと思っていたところに現れたのが……」
「この子ってわけね……」
「左様にございます……」
「その気持ち、よーく分かるわ。だってこの子、驚愕するくらいに可愛いんだもの」
「そうなんです。見た瞬間、正直、わたくし、驚愕致しました。そして思ったのです。わたくしの丹精込めた着ぐるみを着こなせるのは、この坊ちゃんしかいない、と」
拳をにぎり、力強く言い切ったお爺さんの言葉に、ヴィオラもうんうんと頷いている。
だが、ふと腑に落ちないように手元の着ぐるみを見つめ、
「でもさ、なんでグリフォンなの?」
もっと可愛い動物とか、他にもいるでしょ?と首を傾げてヴィオラが尋ねれば、
「そこは、もちろん。SSの王の懐刀、ヴィオラ・シュナイダー様の眷属にグリフォンがいることは、有名な事でございますから、あえて、でございます」
お爺さんは当然の事のようにそう返し、ヴィオラを驚かせた。
「なぁんだ。私のこと、知ってたのね~」
「この王都であなたのことを知らない者はもぐりでございます。かくいうわたくしも、あなた様のふぁんでございますから」
「そ?ありがと」
「ところで、その坊ちゃんは、ヴィオラ様のお身内ですね?」
「あ、やっぱりわかっちゃう?」
「別々にいらっしゃれば分からなかったかもしれませんが、そうやって連れ立っているところを見たら分かる程度には似ていらっしゃるかと」
「そっかぁ。まあ、隠してるわけでもないからいいんだけどね。この子は私の孫よ。シュリ、親切なお爺さんにご挨拶は?」
「えっと、シュリナスカ・ルバーノです。お爺さん、お洋服をありがとうございます」
急に話を振られたが、とくに慌てることなくシュリはペコリと頭を下げて挨拶をした。
それを見ていたお爺さんの鼻息が荒くなったように思えたのは、たぶん気のせいだろう。うん、気のせいだと思いたい。
「じゃあ、ありがたく服は頂いていくわね?もちろん、この着ぐるみも。安くして貰って助かったわ」
「いえいえ、わたくしこそ、その着ぐるみを正しい貰い手の元へ送り出せてほっとしました」
「……因みに、他にもあるのよね?」
「……もちろんでございます。それはもう、山のように。それにシュリ様のためなら、特別オーダーもいといません!なんでもお申し付け下さい!!」
「ふっ。さすがね。今度、予備の着ぐるみを買いに来るわ。その時までに、お勧めを厳選しておいて」
「っ!!!かしこまりました。さてさて、お勧めしたいものが山ほどで、そこから選出するとなると、これはしばらく眠れそうにありませんなぁ」
はっはっはっとお爺さんが笑う。
「頼んだわ。あなたの審美眼、信用しているわよ?」
ヴィオラもニヤリと笑い、まとめて包んで貰った荷物を受け取ってその店を後にした。
お爺さんに見送られて外に出て少し進んでから、振り向いて店の名前を確認する。
マルコムの店と書かれた地味な看板がかかっているが、店と言うものは中に入ってみるまで分からないものだと思う。
入ってみなければ、あれほど仕事が出来て変わり者の店主がいる店だとは夢にも思わなかっただろう。
この出会いがきっかけとなり、今後シュリのワードローブにふわもふの着ぐるみが増えることになる。
避けようのないその未来を半ば予想しつつも、出来る限り現実から目を逸らしていたいと思う苦労性なシュリなのだった。
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