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第四章
会いたいのに会えない
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翌朝、ヴィルヘルムとアレクセイに呼び出されたカイトは、話し合いでカミラの件は取り敢えずお預け、というか様子を見る事となった。昨日完全に誘いを拒否しておいて、いきなり今日`お願いします‘というのも怪しまれそうな話だからだ。
午前中は雑務に追われ、午後から部屋の警護についた。いつもカイトが立ち番の時はリリアーナがドアから顔を覗かせるのだが、今日は全くそれがない。
『昨日怖がらせてしまっただろうか――』
記憶を辿ろうとしてすぐに止めた。月の光の中で組み敷いたリリアーナの感触が峻烈に蘇ったからだ。カイトは切り替えるように頭を振ると、なるべく冷静に考えた。
話し合いをするにしても、相手の出方が分からない。もしかしたら自分と会いたくないかもしれないし――
開かないドアをじっと見て、こちらもカミラの件と同じで様子を見るしかないと思った。
時々出入りするフランの視線だけが突き刺さってとても痛い。ふとフランの後姿を見ていて思い出す。
『昨日カミラが連れていた銀髪の女性騎士、見覚えがあると思ったらフランに似ている』
瓜二つ、という程ではないが、骨格や雰囲気がそっくりである。不思議に思ってフランに尋ねてみると、なんと親戚だという話であった。
「遠い親戚だし、殆ど会った事がないのよ?子供の頃に数回と、お葬式の時に一回だけ」
「葬式?」
「ええ、シルヴィアの家は・・・ってちゃんと説明するわね。銀髪の女性騎士がシルヴィアで、私と同じ歳で十七歳。金髪の男性騎士は兄のゴードンだと思うわ、歳は二つ上のはず。うちと同じで伯爵家なんだけど、彼らのお父様が新しい事業に手を出して、失敗してしまったの」
フランチェスカは悲しそうな顔をした。
「彼らのお父様は多額の負債を出してしまって、お母様とゴードンとシルヴィアを残して自殺してしまわれたの・・・その負債を抱え込んだ彼らを救ってくれたのが、カミラ伯爵未亡人らしいわ」
「カミラが!? あの今にも毒が滴り落ちそうな彼女が・・・?」
「そうなのよ! 何か変でしょう? でも、親戚と言っても殆ど知らない仲だから口を出す訳にもいかないし・・・」
『これは調べてみる価値があるかもしない』カイトが深く考えていると
「やだ! 長話してしまったわ。早く部屋に戻らないと!」
カイトはバタバタと部屋に入っていくフランチェスカの背中を見送った。
「申し訳ありません、リリアーナ様。すぐにお茶の用意を致しますね!」
「フランはカイトと話していたの?」
「はい、カミラ伯爵未亡人と彼女に付いている騎士について、何か考えるところがあるみたいです。その騎士達は私の遠い親戚で、色々と話しを聞かれてたんです」
「そうなの・・・」
フランチェスカはカイトと普通に話せて羨ましい。私は・・・今はとても話せない! きっと顔が赤くなって挙動不審になってしまう! 今はカイトを強く異性として意識してしまって・・・。
力も強かったし、抵抗してもすぐに押さえられてしまい、引き締まった身体に引き寄せられて、そして――
そこまで思い出して顔から火が吹き出そうになった。
『あのカイトにいつも守られていたなんて!!』
顔が益々赤くなる。
・・・やはり自分はカイトが好きなのだと改めて自覚した。他の男性に同じ事をされていたら――と思うだけで吐きそうになる。
「リリアーナ様、顔が赤いですよ。熱でもおありですか?」
フランチェスカが心配そうに覗き込む。
「大丈夫よ! 今日は少し暑いわね!」
「え・・・?」
今日はどちらかというと夏にしては肌寒いほうだ。
「失礼いたします」
フランチェスカはリリアーナのおでこに手を当てた。
「熱はなさそうですが、念のためにじいやを呼びますか?それともカイトにじいやの所まで連れて行かせましょうか?」
「いい! 何ともないから! 部屋から出なければ大丈夫!」
「リリアーナ様・・・?」
『いけない、落ち着かなくちゃ、鋭いフランに気付かれちゃう――』
「紅茶とクッキーがほしいの、フラン」
「あ、はい。只今すぐに」
会いたいのに会えない・・・ジレンマに陥ってるリリアーナがふと思いついた。
『お姉様たちに相談してみよう――』
午前中は雑務に追われ、午後から部屋の警護についた。いつもカイトが立ち番の時はリリアーナがドアから顔を覗かせるのだが、今日は全くそれがない。
『昨日怖がらせてしまっただろうか――』
記憶を辿ろうとしてすぐに止めた。月の光の中で組み敷いたリリアーナの感触が峻烈に蘇ったからだ。カイトは切り替えるように頭を振ると、なるべく冷静に考えた。
話し合いをするにしても、相手の出方が分からない。もしかしたら自分と会いたくないかもしれないし――
開かないドアをじっと見て、こちらもカミラの件と同じで様子を見るしかないと思った。
時々出入りするフランの視線だけが突き刺さってとても痛い。ふとフランの後姿を見ていて思い出す。
『昨日カミラが連れていた銀髪の女性騎士、見覚えがあると思ったらフランに似ている』
瓜二つ、という程ではないが、骨格や雰囲気がそっくりである。不思議に思ってフランに尋ねてみると、なんと親戚だという話であった。
「遠い親戚だし、殆ど会った事がないのよ?子供の頃に数回と、お葬式の時に一回だけ」
「葬式?」
「ええ、シルヴィアの家は・・・ってちゃんと説明するわね。銀髪の女性騎士がシルヴィアで、私と同じ歳で十七歳。金髪の男性騎士は兄のゴードンだと思うわ、歳は二つ上のはず。うちと同じで伯爵家なんだけど、彼らのお父様が新しい事業に手を出して、失敗してしまったの」
フランチェスカは悲しそうな顔をした。
「彼らのお父様は多額の負債を出してしまって、お母様とゴードンとシルヴィアを残して自殺してしまわれたの・・・その負債を抱え込んだ彼らを救ってくれたのが、カミラ伯爵未亡人らしいわ」
「カミラが!? あの今にも毒が滴り落ちそうな彼女が・・・?」
「そうなのよ! 何か変でしょう? でも、親戚と言っても殆ど知らない仲だから口を出す訳にもいかないし・・・」
『これは調べてみる価値があるかもしない』カイトが深く考えていると
「やだ! 長話してしまったわ。早く部屋に戻らないと!」
カイトはバタバタと部屋に入っていくフランチェスカの背中を見送った。
「申し訳ありません、リリアーナ様。すぐにお茶の用意を致しますね!」
「フランはカイトと話していたの?」
「はい、カミラ伯爵未亡人と彼女に付いている騎士について、何か考えるところがあるみたいです。その騎士達は私の遠い親戚で、色々と話しを聞かれてたんです」
「そうなの・・・」
フランチェスカはカイトと普通に話せて羨ましい。私は・・・今はとても話せない! きっと顔が赤くなって挙動不審になってしまう! 今はカイトを強く異性として意識してしまって・・・。
力も強かったし、抵抗してもすぐに押さえられてしまい、引き締まった身体に引き寄せられて、そして――
そこまで思い出して顔から火が吹き出そうになった。
『あのカイトにいつも守られていたなんて!!』
顔が益々赤くなる。
・・・やはり自分はカイトが好きなのだと改めて自覚した。他の男性に同じ事をされていたら――と思うだけで吐きそうになる。
「リリアーナ様、顔が赤いですよ。熱でもおありですか?」
フランチェスカが心配そうに覗き込む。
「大丈夫よ! 今日は少し暑いわね!」
「え・・・?」
今日はどちらかというと夏にしては肌寒いほうだ。
「失礼いたします」
フランチェスカはリリアーナのおでこに手を当てた。
「熱はなさそうですが、念のためにじいやを呼びますか?それともカイトにじいやの所まで連れて行かせましょうか?」
「いい! 何ともないから! 部屋から出なければ大丈夫!」
「リリアーナ様・・・?」
『いけない、落ち着かなくちゃ、鋭いフランに気付かれちゃう――』
「紅茶とクッキーがほしいの、フラン」
「あ、はい。只今すぐに」
会いたいのに会えない・・・ジレンマに陥ってるリリアーナがふと思いついた。
『お姉様たちに相談してみよう――』
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