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杉山さんと灰野
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ヴァンパイアポリスの車両に乗り、全員で署に戻った。
「刑部さん。本当に壊す必要があったんでしょうか?」
事務所に戻った後も、杉山さんの怒りは収まらない様子だった。
彼女が怒っているのは、アヤメがハイヒールで踏みつぶした、我妻がアヤメを拘束するのに使った機械の事だ。
「だから謝ってるでしょ。あれ、痛かったから腹が立ったのよ。」
謝っていると言っているが、その声色に反省の色は微塵も感じない。
「証拠品をみだりに壊したり、降伏している容疑者を攻撃しようとしたり、刑部さんは法の番人の自覚が足りません。」
杉山さんのお小言は止まらない。
「もうやめなよ~。アクシデントがあったのに作戦は大成功したんだし~。これってすごいよ!ね。一宇!」
ノエルがアヤメに助け舟を出す。
「それはそうですけど、、、。」
他の人に言われて、杉山さんもようやく矛先を収める。
「それより、高木班長の方はどうなったんだろ?大丈夫かな?ノエル、マジ心配。」
事務所に半沢主任が入ってくる。
「皆さんお疲れさまでした。作戦がどこからか漏れていたと聞きました。大変だったでしょう。」
「ねぇ、主任さーん。高木班長の方はどうなってるんですか?」
「あちらの方も作戦が終了し、今こちらに戻ってくる途中です。工場の中から200人ものヴァンパイア市民が保護されたようです。保護した市民は、病院にて健康チェックを行ってから、事情聴取にご協力いただきます。蔵王工場はすぐに閉鎖し、工場に残っていたコスモスEXもすべて回収できました。」
「ただ、コスモス本社ビルの捜査班のほうで問題がありました。捜査班が突入した時点で既に事務所が何者かに荒らされており、コンピューターからコスモスEXの製法に関する資料が盗まれていたそうです。幹部、関係者の名簿等は残っていましたが。我妻代表が証拠隠滅を図ったとは考えにくい状況です。第三者がコスモスEXの製造方法を盗んだと考えるとまた第二、第三の同様の事件が起こるかもしれません。」
主任の話にみんなが一抹の不安を感じる。
「あ、本田くん。ちょっと。」
主任に呼ばれる。
今回は、灰野に止められて、アヤメの戦いに参戦するような無茶はしてないんだけど、、、。
「パーティーの応援部隊から聞いたんだけど、応援部隊を救出して、パーティー会場でも刑部君の窮地を救った外国人がいるんだって?」
「あ、ハビブさんですか?」
「あ、やっぱり君の知り合いか。隊員が君と親しく話してるのを見かけて、知り合いじゃないかって言うもんだから。」
「はい。俺と同じアパートに住むチュニジア人です。」
「チュニジアって言うと、北アフリカだね。」
「はい。」
「彼の今回の活躍に対して、感謝状と金一封を送るよう所長に提案するつもりなんですが、その人は名前も名乗らずいなくなったっていうんでね。君の知り合いなら話は早い。後で名前と住所を教えてください。」
「わかりました。」
俺は注意されずに安堵した。灰野に感謝。
灰野は杉山さんが戦っているとき、「チヒロちゃんは強いから大丈夫」と言った。
あの信頼関係は、どのように生まれたのだろう?俺もアヤメが強いことを知っている。でも、アヤメの戦闘を見ると、無意識にアヤメを助けたくて体が動いてしまう。
灰野は18歳。俺と同じ年だ。眷属になることが認められる年齢は、18歳だから眷属になってからまだ1年はたっていないはずだ。
灰野が言っていたことは全くの正論で、俺がアヤメを助けに出て行ったら、戦闘の邪魔になるか、悪ければ俺が人質にもなりかねない。
以前からこの二人には、チームの他のメンバーより強いきずながあるように思えてならなかった。
二人でいる時も、会話はなく。お互い黙って本を読んでいることが多い二人なのに。
そんなことを考えながら灰野を眺めていると。灰野が席を立って事務室から出て行った。
俺は彼の後に続いて、事務所を出る。
灰野は、休憩室の自販機の前にいた。
「灰野、さっきはありがとな。」
俺は灰野に声をかける。
「さっきって何のこと?」
「さっき、ホテルの会場で俺がアヤメの戦闘に飛び込もうとしたのを止めてくれただろ。」
「あ、いいんだよ別に。刑部さんの能力だったら、拳銃くらいは大丈夫だと思ったし。」
「え。そうなの?俺、銀の弾が入ってるって我妻が言ったのを聞いて頭に血が上っちゃって。」
「チヒロちゃんが、言ってたから。刑部さんの身体能力。特にスピードはこのチームで一番だろうって。」
俺たちは、自販機でジュースを買い、休憩室の椅子に座った。
「灰野って、杉山さんの眷属になってどのくらい?」
「3年だよ。」
「3年??灰野、俺と同じ年だよね?」
「ああ、眷属になることが認められる年齢のこと?」
「うん。眷属になったのは、僕が15歳の時。ヴァンパイア政府の規則に違反して、チヒロちゃんは僕を眷属にしてくれたんだ。」
規則違反、杉山さんが規則違反???規則ロボットの杉山さんが、、、。
「あ、本田君。意外だって顔してるよ。はははは。そうだよね。」
「いや、そんなことは、、、、。」
「チヒロちゃんは、本当は優しいんだ、なんて言ったらいいかな、優しいから厳しい、、、かな。」
「あ、それは、俺にもわかるよ。なんせこのチーム、高木さんと杉山さんを除くと、自由奔放、無鉄砲、お坊ちゃまだからね、誰かが、高木さんをサポートしないと、まとまらないよな。」
「ひどいな、本田君。でも、言いえて妙だね。」
「僕がチヒロちゃんの眷属になったのは、15歳の時。僕、心臓に欠陥があって子どもの頃からずーっと入院してたんだ。僕に社会性がないところがあるのはそのせいかもしれない。学校にも通えなかったし。病院内の学校も体調が悪くて、お休みすることも多かったから。」
「大変だったんだな。」
「僕より、親がね。悲しませたと思うよ。」
「そんな僕のひそかな楽しみは、夜に病室を抜け出して、屋上から星を見ることだったんだけど、ある夜屋上に行ってみたら、女の子が倒れてて。それが。」
「杉山さん?」
「うん。」
「その頃は、ヴァンパイ戦争が終わる少し前で、僕はすぐに彼女がヴァンパイアだと分かったんだ。傷ついた彼女を見ていて可愛そうになって。」
「当時は、ヴァンパイアについてあんまりよく知られてなかったし。僕は血を飲めば彼女が元気になると思って、子どもだったからね。「僕、病気で薬とか飲んでるけど、ダメじゃなかったら血を飲んでもいいよ。」っていったんだ。」
「え、灰野って。意外に大胆だな。」
「そしたら、チヒロちゃん泣き出してさ。ポロポロ涙をこぼすんだ。「バカ者。私は敵側の人間だぞ」って言いながら泣き続けて。僕は彼女が泣き止むまで待ったんだ。そして、いろいろ話をしたんだ。楽しかったよ。ヴァンパイア社会の事とか聞くのは。僕の世界はずーっと病院の中だけだったから。」
「それで、眷属になったの?」
「まだだよ。チヒロちゃんは、誰かを眷属にしたらその人に苦労をさせることになると思ってたから。でも、時々病院の屋上でチヒロちゃんと会って話をするようになったんだ。楽しかったよ。彼女の冒険みたいな話を聞くのは。不思議だった。なんで、僕みたいな弱い人間に会いに来てくれるかなって。でも、彼女には直接聞けなかったんだ。聞いたら来てくれなくなるんじゃないかってね。」
「そうしてるうちに、日本がヴァンパイアと共存する道を選択して、戦争が終わった。これでチヒロちゃんとは敵同士じゃなくなるって嬉しかったよ。でも、残念な事に僕の心臓はどんどん悪くなっていって。チヒロちゃんに会いに屋上へも行けなくなった。パパとママも毎日泣いて。僕は、生まれて初めて神様に祈ったんだ。”もう一度。もう一度だけ、チヒロちゃんに会ってお礼が言いたい。チヒロちゃんに逢えて、楽しかった「ありがとう」って言いたい”ってね。」
俺はそこまで聞いて涙か止まらなくなった。
「ちょっとぉ、本田君。泣かないでよぉ。」
「ごめん、ごめん。」
「そしたら、神様が僕の願いをかなえてくれたんだ。突然、病室にチヒロちゃんが現れて。パパもママも、病院の先生もみんなビックリしてたよ。だって。チヒロちゃん「私、杉山千尋と申します。お宅のご子息とは友人で、ヴァンパイアです。」って名乗ったんだから。はははは。チヒロちゃんらしいでしょ。」
(確かに、、、。)
「そして、眷属になるメリットとデメリットをパパとママに説明したんだ。「それらを、ご理解いただいたうえでご子息を私の眷属にいただけませんか」って。単刀直入にね。ヴァンパイア政府と日本政府の最初の協定書の中に、「18歳以下ノ者ヲ眷属二スルコトヲ禁ズ」って条文は最初からあったから、ヴァンパイアの法律に違反することを覚悟のうえで、僕の事を眷属に迎えに来てくれたんだ。」
「お父さんと、お母さんは?」
「パパは躊躇してたよ。でもママは違った。「それで隆の病気は治るんですね」って。「息子を、隆を末永くお願いします。」って即答してたよ。母は強し!だね。まるで、僕をお嫁さんに出すみたいだったよ。はははは。」
灰野は笑った。
「今はどうなの?ご両親と杉山さんの関係は?」
「良好だよ。僕が病気だったから、両親はほかに子供を作らなかったんだけど。可愛い娘が出来たって二人とも喜んでる。ママなんか「娘が欲しかった」なんて言ってさ。チヒロちゃんもパパとママに付き合ってくれてるよ。」
「それと、18歳以下の者を眷属にしたことでお咎めはなかったのか?」
「問題視する声は上がったみたいだよ。悪しき前例になるってね。でも日本政府の方は、僕のパパがちょっと力のある人だから抑え込んで。ヴァンパイア政府の方は、あ、本田君は知ってるよね、秦宗助さん。彼の一声で収まったんだ。」
「平助さんの方じゃなくって?」
「宗助さんだよ。」
(あのボロボロでヨレヨレの宗助所長のどこにそんな力が、、不明だ、、、。)
事務所の方がにぎやかになった。工場チームが戻ってきたらしい。俺たちも休憩室を出て事務所に戻った。
「刑部さん。本当に壊す必要があったんでしょうか?」
事務所に戻った後も、杉山さんの怒りは収まらない様子だった。
彼女が怒っているのは、アヤメがハイヒールで踏みつぶした、我妻がアヤメを拘束するのに使った機械の事だ。
「だから謝ってるでしょ。あれ、痛かったから腹が立ったのよ。」
謝っていると言っているが、その声色に反省の色は微塵も感じない。
「証拠品をみだりに壊したり、降伏している容疑者を攻撃しようとしたり、刑部さんは法の番人の自覚が足りません。」
杉山さんのお小言は止まらない。
「もうやめなよ~。アクシデントがあったのに作戦は大成功したんだし~。これってすごいよ!ね。一宇!」
ノエルがアヤメに助け舟を出す。
「それはそうですけど、、、。」
他の人に言われて、杉山さんもようやく矛先を収める。
「それより、高木班長の方はどうなったんだろ?大丈夫かな?ノエル、マジ心配。」
事務所に半沢主任が入ってくる。
「皆さんお疲れさまでした。作戦がどこからか漏れていたと聞きました。大変だったでしょう。」
「ねぇ、主任さーん。高木班長の方はどうなってるんですか?」
「あちらの方も作戦が終了し、今こちらに戻ってくる途中です。工場の中から200人ものヴァンパイア市民が保護されたようです。保護した市民は、病院にて健康チェックを行ってから、事情聴取にご協力いただきます。蔵王工場はすぐに閉鎖し、工場に残っていたコスモスEXもすべて回収できました。」
「ただ、コスモス本社ビルの捜査班のほうで問題がありました。捜査班が突入した時点で既に事務所が何者かに荒らされており、コンピューターからコスモスEXの製法に関する資料が盗まれていたそうです。幹部、関係者の名簿等は残っていましたが。我妻代表が証拠隠滅を図ったとは考えにくい状況です。第三者がコスモスEXの製造方法を盗んだと考えるとまた第二、第三の同様の事件が起こるかもしれません。」
主任の話にみんなが一抹の不安を感じる。
「あ、本田くん。ちょっと。」
主任に呼ばれる。
今回は、灰野に止められて、アヤメの戦いに参戦するような無茶はしてないんだけど、、、。
「パーティーの応援部隊から聞いたんだけど、応援部隊を救出して、パーティー会場でも刑部君の窮地を救った外国人がいるんだって?」
「あ、ハビブさんですか?」
「あ、やっぱり君の知り合いか。隊員が君と親しく話してるのを見かけて、知り合いじゃないかって言うもんだから。」
「はい。俺と同じアパートに住むチュニジア人です。」
「チュニジアって言うと、北アフリカだね。」
「はい。」
「彼の今回の活躍に対して、感謝状と金一封を送るよう所長に提案するつもりなんですが、その人は名前も名乗らずいなくなったっていうんでね。君の知り合いなら話は早い。後で名前と住所を教えてください。」
「わかりました。」
俺は注意されずに安堵した。灰野に感謝。
灰野は杉山さんが戦っているとき、「チヒロちゃんは強いから大丈夫」と言った。
あの信頼関係は、どのように生まれたのだろう?俺もアヤメが強いことを知っている。でも、アヤメの戦闘を見ると、無意識にアヤメを助けたくて体が動いてしまう。
灰野は18歳。俺と同じ年だ。眷属になることが認められる年齢は、18歳だから眷属になってからまだ1年はたっていないはずだ。
灰野が言っていたことは全くの正論で、俺がアヤメを助けに出て行ったら、戦闘の邪魔になるか、悪ければ俺が人質にもなりかねない。
以前からこの二人には、チームの他のメンバーより強いきずながあるように思えてならなかった。
二人でいる時も、会話はなく。お互い黙って本を読んでいることが多い二人なのに。
そんなことを考えながら灰野を眺めていると。灰野が席を立って事務室から出て行った。
俺は彼の後に続いて、事務所を出る。
灰野は、休憩室の自販機の前にいた。
「灰野、さっきはありがとな。」
俺は灰野に声をかける。
「さっきって何のこと?」
「さっき、ホテルの会場で俺がアヤメの戦闘に飛び込もうとしたのを止めてくれただろ。」
「あ、いいんだよ別に。刑部さんの能力だったら、拳銃くらいは大丈夫だと思ったし。」
「え。そうなの?俺、銀の弾が入ってるって我妻が言ったのを聞いて頭に血が上っちゃって。」
「チヒロちゃんが、言ってたから。刑部さんの身体能力。特にスピードはこのチームで一番だろうって。」
俺たちは、自販機でジュースを買い、休憩室の椅子に座った。
「灰野って、杉山さんの眷属になってどのくらい?」
「3年だよ。」
「3年??灰野、俺と同じ年だよね?」
「ああ、眷属になることが認められる年齢のこと?」
「うん。眷属になったのは、僕が15歳の時。ヴァンパイア政府の規則に違反して、チヒロちゃんは僕を眷属にしてくれたんだ。」
規則違反、杉山さんが規則違反???規則ロボットの杉山さんが、、、。
「あ、本田君。意外だって顔してるよ。はははは。そうだよね。」
「いや、そんなことは、、、、。」
「チヒロちゃんは、本当は優しいんだ、なんて言ったらいいかな、優しいから厳しい、、、かな。」
「あ、それは、俺にもわかるよ。なんせこのチーム、高木さんと杉山さんを除くと、自由奔放、無鉄砲、お坊ちゃまだからね、誰かが、高木さんをサポートしないと、まとまらないよな。」
「ひどいな、本田君。でも、言いえて妙だね。」
「僕がチヒロちゃんの眷属になったのは、15歳の時。僕、心臓に欠陥があって子どもの頃からずーっと入院してたんだ。僕に社会性がないところがあるのはそのせいかもしれない。学校にも通えなかったし。病院内の学校も体調が悪くて、お休みすることも多かったから。」
「大変だったんだな。」
「僕より、親がね。悲しませたと思うよ。」
「そんな僕のひそかな楽しみは、夜に病室を抜け出して、屋上から星を見ることだったんだけど、ある夜屋上に行ってみたら、女の子が倒れてて。それが。」
「杉山さん?」
「うん。」
「その頃は、ヴァンパイ戦争が終わる少し前で、僕はすぐに彼女がヴァンパイアだと分かったんだ。傷ついた彼女を見ていて可愛そうになって。」
「当時は、ヴァンパイアについてあんまりよく知られてなかったし。僕は血を飲めば彼女が元気になると思って、子どもだったからね。「僕、病気で薬とか飲んでるけど、ダメじゃなかったら血を飲んでもいいよ。」っていったんだ。」
「え、灰野って。意外に大胆だな。」
「そしたら、チヒロちゃん泣き出してさ。ポロポロ涙をこぼすんだ。「バカ者。私は敵側の人間だぞ」って言いながら泣き続けて。僕は彼女が泣き止むまで待ったんだ。そして、いろいろ話をしたんだ。楽しかったよ。ヴァンパイア社会の事とか聞くのは。僕の世界はずーっと病院の中だけだったから。」
「それで、眷属になったの?」
「まだだよ。チヒロちゃんは、誰かを眷属にしたらその人に苦労をさせることになると思ってたから。でも、時々病院の屋上でチヒロちゃんと会って話をするようになったんだ。楽しかったよ。彼女の冒険みたいな話を聞くのは。不思議だった。なんで、僕みたいな弱い人間に会いに来てくれるかなって。でも、彼女には直接聞けなかったんだ。聞いたら来てくれなくなるんじゃないかってね。」
「そうしてるうちに、日本がヴァンパイアと共存する道を選択して、戦争が終わった。これでチヒロちゃんとは敵同士じゃなくなるって嬉しかったよ。でも、残念な事に僕の心臓はどんどん悪くなっていって。チヒロちゃんに会いに屋上へも行けなくなった。パパとママも毎日泣いて。僕は、生まれて初めて神様に祈ったんだ。”もう一度。もう一度だけ、チヒロちゃんに会ってお礼が言いたい。チヒロちゃんに逢えて、楽しかった「ありがとう」って言いたい”ってね。」
俺はそこまで聞いて涙か止まらなくなった。
「ちょっとぉ、本田君。泣かないでよぉ。」
「ごめん、ごめん。」
「そしたら、神様が僕の願いをかなえてくれたんだ。突然、病室にチヒロちゃんが現れて。パパもママも、病院の先生もみんなビックリしてたよ。だって。チヒロちゃん「私、杉山千尋と申します。お宅のご子息とは友人で、ヴァンパイアです。」って名乗ったんだから。はははは。チヒロちゃんらしいでしょ。」
(確かに、、、。)
「そして、眷属になるメリットとデメリットをパパとママに説明したんだ。「それらを、ご理解いただいたうえでご子息を私の眷属にいただけませんか」って。単刀直入にね。ヴァンパイア政府と日本政府の最初の協定書の中に、「18歳以下ノ者ヲ眷属二スルコトヲ禁ズ」って条文は最初からあったから、ヴァンパイアの法律に違反することを覚悟のうえで、僕の事を眷属に迎えに来てくれたんだ。」
「お父さんと、お母さんは?」
「パパは躊躇してたよ。でもママは違った。「それで隆の病気は治るんですね」って。「息子を、隆を末永くお願いします。」って即答してたよ。母は強し!だね。まるで、僕をお嫁さんに出すみたいだったよ。はははは。」
灰野は笑った。
「今はどうなの?ご両親と杉山さんの関係は?」
「良好だよ。僕が病気だったから、両親はほかに子供を作らなかったんだけど。可愛い娘が出来たって二人とも喜んでる。ママなんか「娘が欲しかった」なんて言ってさ。チヒロちゃんもパパとママに付き合ってくれてるよ。」
「それと、18歳以下の者を眷属にしたことでお咎めはなかったのか?」
「問題視する声は上がったみたいだよ。悪しき前例になるってね。でも日本政府の方は、僕のパパがちょっと力のある人だから抑え込んで。ヴァンパイア政府の方は、あ、本田君は知ってるよね、秦宗助さん。彼の一声で収まったんだ。」
「平助さんの方じゃなくって?」
「宗助さんだよ。」
(あのボロボロでヨレヨレの宗助所長のどこにそんな力が、、不明だ、、、。)
事務所の方がにぎやかになった。工場チームが戻ってきたらしい。俺たちも休憩室を出て事務所に戻った。
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