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第3章 偽りの王
伝説の屋台
しおりを挟むフコカ国にはひとつの伝説があった。
どこからともなく現れる一軒の屋台。
いまや国中の誰もが知る名物の創始者。
綺麗に洗った豚骨を長時間煮込み出汁を取った臭みのあるスープ。
茹でる時間を短縮するために細く揃えられた小麦麺。
『キュルメー麺』
独特の匂いは最初こそ苦手としたが、徐々に人々は虜となり、いまやキュルメー麺の店はフコカ国内に数えきれない程存在する。
全ては一軒の屋台から始まったのだ。
キュルメー麺の職人は誰もがその味を求め、目指す。
だがその屋台は気まぐれのようにしか現れない。
唯一の手掛かりは、近年の出没傾向。
当初こそキュルメ地方に出没していたが、最近では王都に出ることが多い。
全ては謎に・・・包まれていなかった。
伝説の屋台「ロッキー」。
「あ、『ロッキー』が出てるぞ!」
「ホントだ、王様がいるぞ!!」
「あらやだ、マッキー様もいるわ。
相変わらず渋いわね、ほれぼれしちゃう」
「おい、一旦店じまいだ!
早くしねえと行列ができちまう!」
「・・・にしても、王様たちはあれでも変装しているつもりなのかしら。
その話題に触れていいのか、よく分からないわね」
「あのクオリティでばれないつもりなんて、それこそ冗談だわ。
きっと建前としての変装よ。
今はひとりの職人だから、王様として話しかけるなといったね」
「なるほど!!」
そんなひそひそ話を客たちがしていることも知らずに、ローミン王は自信満々であった。
「ふふふふふ、まさか王が屋台をやってるなどとは、誰も思っておるまいな」
「・・・ローミン様。
僭越ながら意見を申し上げさせていただきますが、ええ、バレバレです。
何を以ってばれないと思ったのでしょう?
私には失礼ながら狂気の沙汰としか思えません」
ローミンはマッキーの意見に対して不思議そうな表情を浮かべる。
「何を言うかマッキーよ。
もしばれているのであれば騒ぎにならないわけなかろう。
ほれ、見てみろ。
皆はキュルメー麺に夢中じゃ。
誰一人気づいておらん!」
どうだと言わんばかりの表情にマッキーは少しイラッとしてしまった。
自害を命じられれば即実行に移すほどの忠臣を持っている自負があるマッキーですら、ローミンの頓珍漢にはイラッとしてしまった。
仕方あるまい。
ローミンの口に不自然に付けられた髭。
童顔なローミンには違和感しか感じられないソレのみが、彼の変装であった。
仮にも『変化』の魔法を持つ、他者に成りすます事に関しては誰よりも秀でているはずのローミンの変装がこれである。
これでなぜ自信を持てるのだ。
「ああ、この右手て思いっきり頬を叩ければ、どんなに気が楽なことか・・・」
「おいマッキーよ、口から本音が漏れているぞ」
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