おいでよ、最果ての村!

星野大輔

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第3章 偽りの王

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屋台が現れてから数時間。
昼もだいぶ過ぎたというのに行列は延々と伸び続けるばかり。

屋台が出店された場所が街の入り口付近ということもあり、行列を珍しがった街の来訪者たちも加わり、その最後尾は目視できない程だった。

この光景は街の者にとっていつものことであった。
これもまた名物と化している。

人々が熱狂して病まないオリジナルのキュルメー麺。
模倣している他の店では決して味わえない秘伝のスープ。



「マッキー、スープの残りはどのくらいだ!?」
「あと2、300人分くらいでしょうか」

ローミンは行列を見て少し考える。

「ふーむ、ちょっと足りなさそうだな。
 追加でスープを足しておくか。
 すまないが、ちょっと空けるぞ」

客の目から隠れるようにして収納袋から材料を取り出す。
それはナイン大陸に広く生息するカノン豚の骨。
他のキュルメー麺の職人たちも多く使用している一般的な豚骨。

勿論、ただのカノン豚の骨ではない。
ローミン王自ら独自に飼育したカノン豚である。
それらは特殊な環境で育ち、魔素を多く吸収した、いわゆる半魔である。
魔素を多く取りこんだその骨は、誰も食した事のない深い味を出す。

そもそも魔物を食す文化は人間にはない。
いや、正確には魔物を食すことが出来ないというのが正しい。

なぜなら魔素によって生み出された魔物は、死する際に魔素となって世界へ還元される。
つまり獲物をしとめた時点で、骨はおろか塵ひとつ残らない。
そこで生み出されたのが半魔の魔物。

魔素を含みながらも、その肉、骨、皮は残る。
ローミンが長い間を駆けて生み出したひとつの成果である。




なぜ、ローミンが屋台などやっているのか。
若いとはいえ一国の王。
趣味程度でこのような事をするほど奇天烈な性格ではない。

彼には勿論、目的があった。

「・・・鑑定」

ぼそりと呟くローミンの視界には、キュルメー麺を啜る人々の上に複数の文字が羅列されていた。

=====================
名前:ホウ・ミーン
種族:人間
状態:---

レベル:---
体力:14
筋力:16
知力:8
敏捷:8
幸運:10
魔力:2

装備品:---
=====================

ステータス。
ローミンの魔法のひとつである「鑑定」は、相手の情報を読み取ることができる。
しかしこれには制約があった。
対象者は魔素を身に纏うもの、つまり魔族や魔物に限られた。

「いかがでしたか?」
「やはり、そうそう見つかるものではないな。
 いい加減疲れたな、これも」
「本来であれば勇者にしか使えないはずの魔法ですからね。
 魔族が使用するように作られていない「役立たずの魔法」の代表格ですし」
「ああ、しかしこれが今は俺たちの希望だ」

人間相手に使用できないのは、魔素を持たないため。
であればそれを接種した相手ならどうであろう。
ローミンはそう思い、試してみたところ見事予想が的中。

手順が面倒ではあるが、システムの抜け道を見事見つけ出した。

「これも全て、我が野望のため。
 もう一仕事頑張るか」

ローミンは魔法の行使を中止すると、再び調理へと取りかかった。




---------------------------------------------------------
本当は昨日アップする予定でしたが、
公開ボタンを押した途端、
強制ログアウトにより内容が消去されてしまいました。

同じような内容を二度書く苦痛。。。
きっとWEB小説家が一度は経験する、あるあるネタなのでしょうね。
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