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(5)志桜里新型美少女着ぐるみを試着

愛梨と志桜里と

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 志桜里は新型の着ぐるみの試着のために工房「アイリス製作所」を訪ねたのは弘樹が試着しに来た次の日だった。

 この日は女性二人が試着するため、対応は主催者の相川成正ではなく女性従業員の金城育枝が行うことになっていた。大きな声では言えないが、着ぐるみ美少女のオーナーである着用者の多くが男性であるが、少なからず女性がいるので、女性の従業員もいた。それに今日は肌タイも特殊なものなのでしかたなかった。

 育枝は三十代の結婚して子供もいる女性で、「アイリス製作所」の事務職でもあったが女性の採寸をしたり時には着ぐるみ美少女モデルの内臓までこなしていた。

 「いらっしゃい、お二人さん。社長から話は聞いているから。それに成海先生にもね」

 この日、志桜里は友人の綾部紘子役の木下愛梨と一緒だった。なぜか成海は基美と真里亜だけでなく紘子の新型美少女着ぐるみを相川に用意させていた。

 「今日は相川さんはどこにいかれたのですか?」

 志桜里はいつも工房の片隅にいる相川の姿が見えないのを不審に思っていた。昨日は弘樹にコミックフェスの時に使用した真里亜の着ぐるみを着させたと聞いていたので、地方に急に出張したわけではないと思っていた。

 「社長はねえ、新型着ぐるみのデバイスのひとつの開発を依頼している研究所に行っているわよ。最後の打ち合わせといっていたよ。今回の着ぐるみ、成海先生は何を思っているんかな? まさかミュージカルショーでもするつもりかな、アルテミスの美少女たちの?」

 育枝はベラベラと話しながら今日二人が着るものを用意していた。それらは厳重に梱包されていたので手間取っていた。

 「聞いた話だけど志桜里。今度の着ぐるみって三日ぐらい着用しても大丈夫なような代物だってよ肌タイは。そんなに着たら汗臭くって大変なことになりそうだよね」

 愛梨はそういいながら持っていた扇子であおいでいた。この日も猛烈な夏の日差しが照っていたけど、もうそろそろ夏が終わる様な時期になっていた。こころなしか陽も和らいできたような気もしたからだ。でも、それは願望も入っていたのかもしれなかったが。

 「そうよ、なんでも先生の別荘で撮影するんだってよ、三人の! 本当はその内臓の人もいないといけないけどね」

 「それはそうと、その内臓ってアンタレスさんだって。いつも美少女着ぐるみ撮影しているのになんでかね? しかも男よね」

 愛梨が言ったアンタレスは弘樹がSNS上で用いているアカウント名だ。名前は言っていないけど愛梨に志桜里は自分の従姉弟だと言っていた。だから、あんまり誤魔化すことができなかったけど、真里亜と基美として原作のような事をするとは言えなかった。
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