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第八章
カイトの休日 2 私を月に連れてって
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カイトはリリアーナの部屋の居間のバルコニーで、ドラゴンの抜け殻を広げていた。SWATが身に付けるような、そんな形にしてみたい。試しに自分に一つ作ろうとしている所だ。
自分の寸法は測ったし、型紙も取った。後はまち針のようなものがない・・・。今度カエレス様にまち針をお願いしようと思いつつ、仕様が無いので型紙を置いて手で押さえ、蝋燭をチャコがわりにしてざっとなぞってみる。天気もいいし、秋の今時分は気候もいい。カイトの口から自然と歌が流れ出た。
「聞こえてきた!」
「え! ホントだ! 私も行く!」
城で働く女性達が、リリアーナの居間のバルコニーの真下近くに集まった。ちなみにリリアーナの部屋は三階である。
「いい声よね」
「ほんとに・・・歌も聴いた事がなくて、聖歌隊の歌とはまた違ってとても素敵・・・」
「何て言ってる・・・? ムーンリバー? 星の川・・・なんてロマンチックなのかしら」
「静かにして! 小声じゃないと、カイトが気付いちゃうじゃない」
皆がうっとりと聞き惚れている中、女中頭の女性がやって来た。
「こんなところで仕事を放り出して、一体何をしているの!?」
「マルガレーテ様! すいません、気付かれちゃうんで静かにして下さい・・・」
女中頭のマルガレーテは厳しいが話の分かる女性である。頭ごなしに叱ったりはしない。
「どうしたの?」
小声で話し始める。
「リリアーナ様の婚約者のサー・カイトが、とてもいい声をしているんです。歌も、私達が今までに聞いた事がないようなもので、いつまでも聞いていたくなっちゃうんです」
マルガレーテが耳を傾けると、確かに今までに聞いた事がない歌だ。それに声もいい。
「この間は`私を月に連れてって ‘ と歌っていました。それがまた歌詞がいいんです。あ、ほら!」
その歌が聞こえてきた。
「Fly me to the moon ,and let me play among the stars・・・」
皆でまた聞き惚れている。
「月に連れて行ける訳ないし、星の間でも遊べないわ」
「もう!マルガレーテ様、そこがいいんじゃないですか!」
カイトの歌が止まり、リリアーナの声が混じる。
「ほら、立ち聞きになってしまいますよ! すぐに持ち場に戻る! 以後ここで歌を聞くのは禁止です!」
「えー!」
皆、不服そうに仕事場に戻っていった。マルガレーテも立ち去ろうとしたが、今度はリリアーナの歌声が聞こえてきた。
リリアーナ様も歌がお上手なのね・・・確かに可愛い歌詞、この調べも。いつまでも聞きたくなる皆の気持ちも分かるわね。
マルガレーテも名残惜しそうに去って行く。
「カイト、その歌は何ていうの? 以前にも聞いた事があるけど、前世の歌? 素敵ね」
リリアーナがバルコニーに出てきた。カイトが顔を少し赤くする。
「`私を月に連れてって ‘ というんだけど、リリアーナが歌うほうがしっくりくるかも・・・歌詞が可愛いし。歌ってみる?」
「私が? 歌えるかしら・・・聖歌しか歌った事がないのに」
「いつも聞いてるけど、あれだけ歌えれば大丈夫だよ」
カイトが先に歌って、リリアーナが後に続く。In other words ,daring kiss me のところにくるとカイトがリリアーナにキスをするので、その度に紅くなり中断して先に進まない。
「カイト! これじゃあ先に進まない!」
「ごめん、つい可愛らしくて」
カイトがクスリと笑った。
そんな事を普通にさらっと言うなんて、リリアーナが益々紅くなる。カイトは前からこうだったかしら? 敬語でなくなってから? 嫌ではない。けど・・・紅くなってその度にどきどきして、これで身が持つのだろうか。
「敬語に戻すかい? 変わらないと思うけど」
リリアーナの考えている事が手に取るように分かるようだ。勘が良すぎて困る。
実はその時カイトは`リリアーナは考えている事が顔に全て表れる ‘ と思っていた。フランチェスカもよく`分かりやすい ‘ と言っているし、本人だけ知らないのかもしれない。
それにリリアーナに敬語の事を言われてから、自分を抑えるのを止めた。相手は姫君ではあるが、婚約者で恋人なのだ。対等でなければ。
「リリアーナ様。敬語に戻しますか?」
カイトが身を屈めて尋ねてきた。
「ううん、今のままでいい・・・」
「分かった」
またキスされる。
「カイトのキス魔!」
リリアーナが紅くなってこれ以上されないように両手で口を隠した。
#この作品における表現、文章、言葉、またそれらが持つ雰囲気の転用はご遠慮下さい。
自分の寸法は測ったし、型紙も取った。後はまち針のようなものがない・・・。今度カエレス様にまち針をお願いしようと思いつつ、仕様が無いので型紙を置いて手で押さえ、蝋燭をチャコがわりにしてざっとなぞってみる。天気もいいし、秋の今時分は気候もいい。カイトの口から自然と歌が流れ出た。
「聞こえてきた!」
「え! ホントだ! 私も行く!」
城で働く女性達が、リリアーナの居間のバルコニーの真下近くに集まった。ちなみにリリアーナの部屋は三階である。
「いい声よね」
「ほんとに・・・歌も聴いた事がなくて、聖歌隊の歌とはまた違ってとても素敵・・・」
「何て言ってる・・・? ムーンリバー? 星の川・・・なんてロマンチックなのかしら」
「静かにして! 小声じゃないと、カイトが気付いちゃうじゃない」
皆がうっとりと聞き惚れている中、女中頭の女性がやって来た。
「こんなところで仕事を放り出して、一体何をしているの!?」
「マルガレーテ様! すいません、気付かれちゃうんで静かにして下さい・・・」
女中頭のマルガレーテは厳しいが話の分かる女性である。頭ごなしに叱ったりはしない。
「どうしたの?」
小声で話し始める。
「リリアーナ様の婚約者のサー・カイトが、とてもいい声をしているんです。歌も、私達が今までに聞いた事がないようなもので、いつまでも聞いていたくなっちゃうんです」
マルガレーテが耳を傾けると、確かに今までに聞いた事がない歌だ。それに声もいい。
「この間は`私を月に連れてって ‘ と歌っていました。それがまた歌詞がいいんです。あ、ほら!」
その歌が聞こえてきた。
「Fly me to the moon ,and let me play among the stars・・・」
皆でまた聞き惚れている。
「月に連れて行ける訳ないし、星の間でも遊べないわ」
「もう!マルガレーテ様、そこがいいんじゃないですか!」
カイトの歌が止まり、リリアーナの声が混じる。
「ほら、立ち聞きになってしまいますよ! すぐに持ち場に戻る! 以後ここで歌を聞くのは禁止です!」
「えー!」
皆、不服そうに仕事場に戻っていった。マルガレーテも立ち去ろうとしたが、今度はリリアーナの歌声が聞こえてきた。
リリアーナ様も歌がお上手なのね・・・確かに可愛い歌詞、この調べも。いつまでも聞きたくなる皆の気持ちも分かるわね。
マルガレーテも名残惜しそうに去って行く。
「カイト、その歌は何ていうの? 以前にも聞いた事があるけど、前世の歌? 素敵ね」
リリアーナがバルコニーに出てきた。カイトが顔を少し赤くする。
「`私を月に連れてって ‘ というんだけど、リリアーナが歌うほうがしっくりくるかも・・・歌詞が可愛いし。歌ってみる?」
「私が? 歌えるかしら・・・聖歌しか歌った事がないのに」
「いつも聞いてるけど、あれだけ歌えれば大丈夫だよ」
カイトが先に歌って、リリアーナが後に続く。In other words ,daring kiss me のところにくるとカイトがリリアーナにキスをするので、その度に紅くなり中断して先に進まない。
「カイト! これじゃあ先に進まない!」
「ごめん、つい可愛らしくて」
カイトがクスリと笑った。
そんな事を普通にさらっと言うなんて、リリアーナが益々紅くなる。カイトは前からこうだったかしら? 敬語でなくなってから? 嫌ではない。けど・・・紅くなってその度にどきどきして、これで身が持つのだろうか。
「敬語に戻すかい? 変わらないと思うけど」
リリアーナの考えている事が手に取るように分かるようだ。勘が良すぎて困る。
実はその時カイトは`リリアーナは考えている事が顔に全て表れる ‘ と思っていた。フランチェスカもよく`分かりやすい ‘ と言っているし、本人だけ知らないのかもしれない。
それにリリアーナに敬語の事を言われてから、自分を抑えるのを止めた。相手は姫君ではあるが、婚約者で恋人なのだ。対等でなければ。
「リリアーナ様。敬語に戻しますか?」
カイトが身を屈めて尋ねてきた。
「ううん、今のままでいい・・・」
「分かった」
またキスされる。
「カイトのキス魔!」
リリアーナが紅くなってこれ以上されないように両手で口を隠した。
#この作品における表現、文章、言葉、またそれらが持つ雰囲気の転用はご遠慮下さい。
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