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第八章
カイトの休日 堪能、実は苦行
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リリアーナの部屋の広いカウチの上で、カイトは読書をしていた。テーブルの上にはうず高く本が積まれている。婚約者の特権で、図書室の本を好きに読めるのは大変喜ばしい。たくさんのクッションに背を預け、足はカウチの上で長々と伸ばしている。
リリアーナもやはりカウチの上でカイトの胸に寄り掛かり、リュートの楽譜に目を通していた。
カイトの右腕はリリアーナに回っていて、時々頭をポンポンとされる。こっそりと真剣に読書している姿を見ていると、視線を感じ取って首を折り、額にキスされるのも嬉しかったりする。カイトの取った一週間の休暇に合わせて、自分も公務と草むしりを代わってもらっていた。草むしりは涼しくなってきたので、雑草があまり生えてこなくなり労働時間も短くなってきている。
いきなりカイトの頭が寄り掛かってきた。何事かと見上げると目が閉じられている。
寝てしまっている・・・!
リリアーナは胸をどきどきさせながら、カイトの寝顔を間近で眺める。思ったより長い睫毛だ。
昨日は前世の世界から帰って来て、いきなりドラゴン騒ぎがあった。かなり疲れているのだろう。
キスしてみようか・・・唇はハードルが高いから頬に。そういえば前回失敗――というか、カイトが起きていたのを思い出した。今度は起きてないわよね・・・? まじまじと見ながら、また重大な事を思い出した。
この部屋にはフランチェスカがいた――
顔を紅くして視線を向けると、フランチェスカがわざとらしく咳をする。
「姫様、わたくし後ろを向いていましょうか?」
「いい! いいから、何か掛ける物を持ってきて・・・」
恥かしい事このうえない。フランチェスカが掛布を持ってきてくれた。
「リリアーナ様はどうなさいますか? そこから出ますか? 手を貸しましょうか?」
「もう少し、このままでいる」
こんな風に一緒にいるのは初めてで、この時間がとても嬉しい。
フランチェスカはクッションを整え、カイトの身体を少し動かして二人を楽な姿勢にしてくれた。そして上から掛布をかける。
「フラン、ありがとう」
「またいつでも仰って下さい」
フランが優しく微笑んだ。
ノックの音がしてフランチェスカが出ると、スティーブが立っていた。部屋の前の警護はカイトがこの部屋にいるので必要ないだろう、とついていない。
「カイトを呼んでもらえるかな? 鱗の扱いの事でイフリート団長が聞きたい事があるって」
「今は駄目よ」
「・・・なんか静かだな」
「幼馴染の貴方には見せてあげる。内緒よ! とっても可愛いの」
フランチェスカがドアを少しだけ押し開けた。真っ赤な顔をしたリリアーナを、横向きに自分の身体で覆うようにして腕の中に囲い、その髪に顔をうずめて眠っているカイトが目に映った。
「あれってまずくない? って前にも言ったっけ」
「最初はリリアーナ様がカイトの胸に少し頭をのせている程度だったんだけど、段々体制が変わってきて、ああなってしまったの。始めは眠そうだったリリアーナ様も、あんなにくっつかれて今はもう緊張して眠れないみたい。カイトを起こすか尋ねたんだけど、あのままでいいって頑張ってるの。普段あんまり一緒にいられないし、こんな事も滅多にないから堪能しておくんですって。何か可愛いでしょ? だから、カイトは今は行けないのよ。起きたら伝えるから、上手く言っておいて」
「堪能と言うより苦行に見えるけど・・・確かにこれでは仕様が無いか。それにしてもあいつ、カミラの毒騒ぎの時にもリリアーナ様の髪の中に顔をうずめて眠っていたよな。金の絹糸みたいで触り心地よさそうだし・・・羨ましい! 顔をうずめられなくてもいいから、俺も触ってみたい!」
欲望に忠実なスティーブはフランチェスカにまたビンタを食らった。
#この作品における表現、文章、言葉、またそれらが持つ雰囲気の転用はご遠慮下さい。
リリアーナもやはりカウチの上でカイトの胸に寄り掛かり、リュートの楽譜に目を通していた。
カイトの右腕はリリアーナに回っていて、時々頭をポンポンとされる。こっそりと真剣に読書している姿を見ていると、視線を感じ取って首を折り、額にキスされるのも嬉しかったりする。カイトの取った一週間の休暇に合わせて、自分も公務と草むしりを代わってもらっていた。草むしりは涼しくなってきたので、雑草があまり生えてこなくなり労働時間も短くなってきている。
いきなりカイトの頭が寄り掛かってきた。何事かと見上げると目が閉じられている。
寝てしまっている・・・!
リリアーナは胸をどきどきさせながら、カイトの寝顔を間近で眺める。思ったより長い睫毛だ。
昨日は前世の世界から帰って来て、いきなりドラゴン騒ぎがあった。かなり疲れているのだろう。
キスしてみようか・・・唇はハードルが高いから頬に。そういえば前回失敗――というか、カイトが起きていたのを思い出した。今度は起きてないわよね・・・? まじまじと見ながら、また重大な事を思い出した。
この部屋にはフランチェスカがいた――
顔を紅くして視線を向けると、フランチェスカがわざとらしく咳をする。
「姫様、わたくし後ろを向いていましょうか?」
「いい! いいから、何か掛ける物を持ってきて・・・」
恥かしい事このうえない。フランチェスカが掛布を持ってきてくれた。
「リリアーナ様はどうなさいますか? そこから出ますか? 手を貸しましょうか?」
「もう少し、このままでいる」
こんな風に一緒にいるのは初めてで、この時間がとても嬉しい。
フランチェスカはクッションを整え、カイトの身体を少し動かして二人を楽な姿勢にしてくれた。そして上から掛布をかける。
「フラン、ありがとう」
「またいつでも仰って下さい」
フランが優しく微笑んだ。
ノックの音がしてフランチェスカが出ると、スティーブが立っていた。部屋の前の警護はカイトがこの部屋にいるので必要ないだろう、とついていない。
「カイトを呼んでもらえるかな? 鱗の扱いの事でイフリート団長が聞きたい事があるって」
「今は駄目よ」
「・・・なんか静かだな」
「幼馴染の貴方には見せてあげる。内緒よ! とっても可愛いの」
フランチェスカがドアを少しだけ押し開けた。真っ赤な顔をしたリリアーナを、横向きに自分の身体で覆うようにして腕の中に囲い、その髪に顔をうずめて眠っているカイトが目に映った。
「あれってまずくない? って前にも言ったっけ」
「最初はリリアーナ様がカイトの胸に少し頭をのせている程度だったんだけど、段々体制が変わってきて、ああなってしまったの。始めは眠そうだったリリアーナ様も、あんなにくっつかれて今はもう緊張して眠れないみたい。カイトを起こすか尋ねたんだけど、あのままでいいって頑張ってるの。普段あんまり一緒にいられないし、こんな事も滅多にないから堪能しておくんですって。何か可愛いでしょ? だから、カイトは今は行けないのよ。起きたら伝えるから、上手く言っておいて」
「堪能と言うより苦行に見えるけど・・・確かにこれでは仕様が無いか。それにしてもあいつ、カミラの毒騒ぎの時にもリリアーナ様の髪の中に顔をうずめて眠っていたよな。金の絹糸みたいで触り心地よさそうだし・・・羨ましい! 顔をうずめられなくてもいいから、俺も触ってみたい!」
欲望に忠実なスティーブはフランチェスカにまたビンタを食らった。
#この作品における表現、文章、言葉、またそれらが持つ雰囲気の転用はご遠慮下さい。
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