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第2章 王都にて(前)

第63話 待つひと

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「……」

ユーリはリカルドの話を聞き終わっても、

何も言えなかった。

何か言わないといけないと思ったが、

言葉は何も出てこなかった。

話は確かにちゃんと聞いていたのに、

衝撃が強すぎて頭がふわふわして何も考えられなかった。

ユーリは再び思考停止に陥った。

「ユーリ、ユーリ、おーい。

こりゃだめだ。また思考停止か。

はぁ。ほんとにこんな繊細だと心配だよ。」

またユーリの目の辺りで手をヒラヒラさせても、

なんの反応もないユーリを見て、

リカルドはやれやれとため息をついた。

「お兄さん、疑問に真剣に答えてくれてありがとう。

とても参考になったよ。

やっぱり王族のことは王族に聞いてみてよかったよ。

あとね、お兄さん、ユーリは繊細というか、

いちいち真面目に受け取って、

いちいち真面目に考えて、

しんきくさくて、ぐずぐずめんどくさくて、

人の心配ばっかりしてるお人好しなんだと思うよ( ´_ゝ`)」

でもそれって悪いことじゃないよと言うと、

エレンはのんびりお茶を飲み始めた。

「エレン嬢、

ユーリを誉めてくれてるのかけなしてるのかちょっとわからないけど、

とりあえずありがとう。

かくれんぼはもういいの?」

リカルドは苦笑しながらエレンに聞いた。

「ユーリは一回ああなると、

なにしても帰ってこないみたいだし、

しばらくしたらちゃんと帰ってきてくれるから大丈夫。

それまでのんびり待つよ( ´_ゝ`)」

エレンはそういうと、

再び両腕を広げて机に突っ伏して、

顔だけ横にして、

王宮の庭を見ながら後でどこに隠れようかと思案し始めた。

「おや。随分ユーリを信頼してるんだね。

そうだね。確かに時間はかかるけど、

ちゃんと帰ってきてくれそうだね。」

リカルドはそういうと、

まだ思考停止に陥っている困った弟を優しげに見つめると、

ちょっと冷めてしまった紅茶をゆっくり飲み始めた。
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