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花の朔祭編
其の十(リーユ視点)
しおりを挟む『リーユ様、此方をどうぞ』そういってルファが口移しでくれたのは、先に食べてしまった飴細工の様に甘くて美味しい薬だった。そしてヴァルにヴェールをつけて貰ってベッドに運ばれ、少しすれば警戒も無しに入ってきた男性二人。
ヴェールで此方が寝ているのか起きているのかも分からないのに、躊躇いもない辺り甘やかされて育った無能な子息で決定ですわね。
(…香水がキツイ)
ぐらぐらと安定しない抱き上げ方に、無駄に匂ってくる香水は最早いい匂いと言うよりも悪臭ですわ。服の装飾品が肌に当たって痛いですし、何よりも二人がべらべらと話しながら移動するので、普通なら完全に起きますわよね?どうしてこんなに寝ていると自信を持てるのかしら?
「このままあの馬鹿王子についていっても…」
「だから、側妃様に取り成して貰えればいいって言ったのはお前だろ」
「まさか人攫いをさせられるなんて思わないじゃないか!」
「側妃様の事を考えれば有りえるだろ」
「知らないよ、騎士団に詳しいお前じゃないんだ」
このお二人の声には聞き覚えがありますわ、無能の子息集団に居ましたわ。ウインド様とアルフォード様は確か、処分が保留のままでしたわね。学園長が伝書鳥を飛ばしたのは報告が着ているから、親が帰ってくる前に側妃様に泣きついたと…。
(情けない…、こんなのがアイクロメア王国を率いていきますの?滅べばいいのに)
声に出しているとヴァルに窘められてしまいますけど、ちゃんと口は閉じてますし、声に出してはいません。
それにしても、取り成して貰うつもりが犯罪を増やしているのを、気付いていながらどうして止めませんの?やっぱり只の馬鹿じゃなくて、どうしようもない馬鹿って事ですわね。
(廃嫡だけじゃ甘かったのね、私もまだまだですわ)
乱暴に抱え直されると同時に溜息を零し、馬車に乗せられたと思えば今度は咽帰る程の薔薇の匂い。此処まで匂いがきついと頭痛がしますわ。
「母上、この娘を処罰して私のローザを!」
「落ち着きなさいエアレズ。それにしても…、忌々しい事何て似ているのかしら」
聞き覚えて居たくなかったと、吐き気がしますわ。ヴァル早く来ないかしら、一番に飛び込んで来るなら、今日はゼルクかしら?でも、ゼルクじゃ勿体無いわね。力試しにイスラでもいいかも知れませんわ、ルファとゼルクじゃこの方達一時間持たないかも。
(アイクロメア王国第一側妃、クリステラ=シナゼツ妃。第二王子の母で、お母様を何故か目の敵にしている勘違いの代表ですわ。国王陛下、覚悟なさいませ…)
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