悪役執事

梛桜

文字の大きさ
上 下
27 / 32
花の朔祭編

其の十(リーユ視点)

しおりを挟む

 『リーユ様、此方をどうぞ』そういってルファが口移しでくれたのは、先に食べてしまった飴細工の様に甘くて美味しい薬だった。そしてヴァルにヴェールをつけて貰ってベッドに運ばれ、少しすれば警戒も無しに入ってきた男性二人。
 ヴェールで此方が寝ているのか起きているのかも分からないのに、躊躇いもない辺り甘やかされて育った無能な子息で決定ですわね。

(…香水がキツイ)

 ぐらぐらと安定しない抱き上げ方に、無駄に匂ってくる香水は最早いい匂いと言うよりも悪臭ですわ。服の装飾品が肌に当たって痛いですし、何よりも二人がべらべらと話しながら移動するので、普通なら完全に起きますわよね?どうしてこんなに寝ていると自信を持てるのかしら?

「このままあの馬鹿王子についていっても…」
「だから、側妃様に取り成して貰えればいいって言ったのはお前だろ」
「まさか人攫いをさせられるなんて思わないじゃないか!」
「側妃様の事を考えれば有りえるだろ」
「知らないよ、騎士団に詳しいお前じゃないんだ」

 このお二人の声には聞き覚えがありますわ、無能の子息集団に居ましたわ。ウインド様とアルフォード様は確か、処分が保留のままでしたわね。学園長が伝書鳥を飛ばしたのは報告が着ているから、親が帰ってくる前に側妃様に泣きついたと…。

(情けない…、こんなのがアイクロメア王国を率いていきますの?滅べばいいのに)

 声に出しているとヴァルに窘められてしまいますけど、ちゃんと口は閉じてますし、声に出してはいません。
 それにしても、取り成して貰うつもりが犯罪を増やしているのを、気付いていながらどうして止めませんの?やっぱり只の馬鹿じゃなくて、どうしようもない馬鹿って事ですわね。

(廃嫡だけじゃ甘かったのね、私もまだまだですわ)

 乱暴に抱え直されると同時に溜息を零し、馬車に乗せられたと思えば今度は咽帰る程の薔薇の匂い。此処まで匂いがきついと頭痛がしますわ。
 
「母上、この娘を処罰して私のローザを!」
「落ち着きなさいエアレズ。それにしても…、忌々しい事何て似ているのかしら」

 聞き覚えて居たくなかったと、吐き気がしますわ。ヴァル早く来ないかしら、一番に飛び込んで来るなら、今日はゼルクかしら?でも、ゼルクじゃ勿体無いわね。力試しにイスラでもいいかも知れませんわ、ルファとゼルクじゃこの方達一時間持たないかも。

(アイクロメア王国第一側妃、クリステラ=シナゼツ妃。第二王子の母で、お母様を何故か目の敵にしている勘違いの代表ですわ。国王陛下、覚悟なさいませ…)


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

突然豹変した高スペックな幼馴染みと後輩にねらわれてます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:45

鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,087pt お気に入り:160

能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:10,587pt お気に入り:2,217

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,572pt お気に入り:139

女神様の悪戯で、婚約者と中身が入れ替わっています。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:652

処理中です...