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■フェーズ:060『蒼いコキュートスと孤独なストラグル』
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Title:『蒼いコキュートスと孤独なストラグル』
終末期医療を行う、緩和ケア病棟の一室。
そこで残された時間を過ごす男は、
長年に渡って親交がある部下と雑談を交わし、
笑顔に包まれた時間を送っていた。
「若い頃は……散々無茶ばっかやってきたけど、
それでも懲りずに残ってくれたのは、
お前だけだよな……」
『……気にしないでください。
ただの腐れ縁ってやつですから』
「お前を借金の保証人にして逃げたのに、
それでもまだ……俺のことを社長って
呼んでくれた時は……泣きそうになったよ」
『嫁と別れて子供と別居することになりましたけど、
親のいない俺にとって社長は親代わりでしたから、
孝行したかったんですよ……』
「だから色んな場所に
連れてってくれたのか?」
『ああ、海外旅行に招待したこともありましたっけ……』
「ルーマニアのホィア・バキューは、
とんでもなく不思議な場所だったなぁ……」
『社長……すごくはしゃいでましたよね』
「まぁ、海外旅行なんて初めてだったからな」
『喜んでくれてすごく嬉しかったですよ……』
「そういや、ルーマニアから帰ってすぐに、
メキシコ旅行をプレゼントしてくれたよな?
ええっと、確か……」
『メキシコのソチミルコ島ですか?』
「そうそう! あの島も変わってて、
ドキドキしっぱなしだったよ!」
『ありふれた旅行じゃ物足りないでしょ?
だから一生懸命プランを練ったんですよ』
「ああ、あれは確かに刺激的だったな。
でも一番は……ロサンゼルスの
リンダ・ビスタ・コミュニティーだろうな」
『確か……社長が撮った写真が、
雑誌で紹介されたりしましたよね?』
「あの写真は今でも記念に残してあるよ」
『喜んでもらえて光栄です……』
「うん……本当に奇妙な体験ばかりさせてくれたよな。
俺はいい部下を持ったよ」
『そんな……大したことじゃないですよ』
「でもな、ひとつ気になることがあるんだ」
『なんですか?』
「……どうしてお前は
一緒に旅行に行かなかったんだ?」
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Title:『蒼いコキュートスと孤独なストラグル』
終末期医療を行う、緩和ケア病棟の一室。
そこで残された時間を過ごす男は、
長年に渡って親交がある部下と雑談を交わし、
笑顔に包まれた時間を送っていた。
「若い頃は……散々無茶ばっかやってきたけど、
それでも懲りずに残ってくれたのは、
お前だけだよな……」
『……気にしないでください。
ただの腐れ縁ってやつですから』
「お前を借金の保証人にして逃げたのに、
それでもまだ……俺のことを社長って
呼んでくれた時は……泣きそうになったよ」
『嫁と別れて子供と別居することになりましたけど、
親のいない俺にとって社長は親代わりでしたから、
孝行したかったんですよ……』
「だから色んな場所に
連れてってくれたのか?」
『ああ、海外旅行に招待したこともありましたっけ……』
「ルーマニアのホィア・バキューは、
とんでもなく不思議な場所だったなぁ……」
『社長……すごくはしゃいでましたよね』
「まぁ、海外旅行なんて初めてだったからな」
『喜んでくれてすごく嬉しかったですよ……』
「そういや、ルーマニアから帰ってすぐに、
メキシコ旅行をプレゼントしてくれたよな?
ええっと、確か……」
『メキシコのソチミルコ島ですか?』
「そうそう! あの島も変わってて、
ドキドキしっぱなしだったよ!」
『ありふれた旅行じゃ物足りないでしょ?
だから一生懸命プランを練ったんですよ』
「ああ、あれは確かに刺激的だったな。
でも一番は……ロサンゼルスの
リンダ・ビスタ・コミュニティーだろうな」
『確か……社長が撮った写真が、
雑誌で紹介されたりしましたよね?』
「あの写真は今でも記念に残してあるよ」
『喜んでもらえて光栄です……』
「うん……本当に奇妙な体験ばかりさせてくれたよな。
俺はいい部下を持ったよ」
『そんな……大したことじゃないですよ』
「でもな、ひとつ気になることがあるんだ」
『なんですか?』
「……どうしてお前は
一緒に旅行に行かなかったんだ?」
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