秘密の関係

椎奈風音

文字の大きさ
上 下
20 / 68
桜花の姫

第四話

しおりを挟む
(そういえば、学級委員って、普通クラスに二人いるよね?)
 僕は当たり前のことに今更ながらに気付いた。
 雄哉ともう一人は誰なんだろう。

「で、矢吹、お前誰を選ぶんだ?」
 僕は雄哉に向けていた視線を谷川先生に移した。
(ん?)
 もしかして、もう一人の学級委員は雄哉が選ぶのかな?
 これがさっき言ってた特典だったりして……?

「そうですね……」
 雄哉がチラッと僕を見た。
(まさか……)
 僕はまじまじと雄哉を凝視する。

「それじゃあ、俺のパートナーは結城塔哉ゆうきとうやで」
「は?」
 僕はマヌケな表情のまま硬直した。

(やっぱりコイツ、とんでもない爆弾を持ってたな)
 でも、ホント冗談じゃない!!
 なんで右も左もわからない僕がいきなり学級委員なの?
 雄哉の馬鹿!!

 雄哉の爆弾発言に、周りがざわめいた。

「えっと……。いいのか?結城?」
 谷川先生が遠慮がちに訊いてくる。
「……ねぇ、雄哉。ちなみに、これって断われるの?」
「んなわけないだろ。なんのための特権だと思ってるんだ?」
 無駄だと思いつつも、雄哉に小声で問い掛けて見ると、あっさりと否定された。
(だよね……)
 訊いた僕が馬鹿だったかも……。

「矢吹、大丈夫なのか?結城は外部入学だし、慣れるまでは学級委員はキツいんじゃないのか?」
(なんていい先生なんだ!)
 僕は先生の言葉に、ちょっと感動してしまった。
 先生が味方してくれるんなら、さすがに雄哉も諦めるだろう、と思っていた僕は、次の瞬間、自分の甘さに気付いた。
 今まで忘れていたけど、雄哉って一筋縄でいく相手じゃなかったんだよね。

「先生、ご心配なく。結城の面倒は俺がみますんで。逆に同じ委員の方が一緒にいる時間が多いですし、フォローもしやすいと思いますよ」
 にっこり笑いながら、雄哉が優等生的な返答をした。
「矢吹がそう言うなら……」
 先生が納得したように頷く。

(やられた!!)
 そんなに簡単に引かないでよ!先生!!

「それじゃ、俺と結城が今期の学級委員でいいですね」
 外堀から埋められて、僕は完全に逃げ場を失ったようだ。
 僕は雄哉を睨んだが、雄哉は全く気にしていない。
 始めは驚いていた生徒達も、成り行きを見守る形になっている。
 僕はちょっと泣きそうになりながら、雄哉を睨むことしか出来なかった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

伯爵令嬢は執事に狙われている

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,237pt お気に入り:450

兄たちが溺愛するのは当たり前だと思ってました

BL / 連載中 24h.ポイント:276pt お気に入り:2,258

腹黒上司が実は激甘だった件について。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:610pt お気に入り:139

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:65,520pt お気に入り:2,040

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,057pt お気に入り:13

仲良しな天然双子は、王族に転生しても仲良しで最強です♪

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:688pt お気に入り:305

処理中です...