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第2章 水と炎の激愛、揺れる光の惑い編

2.皇子と側近の話し合いは結界内にて②

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「だが、そうするとどうする?時渡りの可能性があるなら、城に留め置くのはマズいだろう」
「二度目はない。が、独自に探り入れる可能性はある。レズモントは、興味を失ったような事を言ったが、あいつが一番信用ならん」

時渡りは珍しい事象だ。城の導師どもがこぞって情報収集したがるだろう。自国にとって有益になりそうな事を得ようと、レズモントや、他の大臣連中が、アヤに再び無体を強いる可能性もある。
側には置きたい、というかできれば離したくない。が、身の危険のある城に留め置くのも躊躇われ、グレインバルドは葛藤している。
己の欲を取るか、アヤの身の安全を取るか。

「マダムのところに一旦、戻すか?」

セレストの提案に、グレインバルドはしばし思案した。考えなかったワケではない。アヤは元々マダム・エルザの店の新入りだ。それを半ば無理やり城に連れ帰ったのはグレインバルドだ。
渋い顔をするグレインバルドに、セレストは半ば呆れ顔だ。

「余裕ないのか?クレイドル皇太子グレインバルドともあろう者が」
「俺から奪えるものなら奪ってみろ!と、いいたいとこだが、アヤに関しては、まだ、そこまで深く自分のものにできてない。俺がいくら逃がさんようにしようと、俺の手の届かん所で、あれに自ら逃げられんとも限らんな。逃げようと思えば、俺どころか、誰の手も取らずあれは逃げるだろう。まだ、よく知ってはないが、断言できる」

珍しく弱音らしい事を吐くグレインバルドに、セレストは驚きつつも少し嬉しかった。
今まで、グレインバルドが相手にしてきた者には、光の魔導を持つ者もいた。惹かれるのは性だ、仕方がない。が、その度に追い求める事とは違い、落胆し、あっさり関係を絶つ事のできた者たちとアヤでは、あきらかにグレインバルドの反応が違う。
そうであってほしいと思っている事は確かにあるが、例えそうでなくても、願わくは、グレインバルドにとっての、唯一の光になってほしいとセレストは、側近として、幼馴染みとして思わずにはいられない。

「一緒に行くか。いっそ」
「は?ちょ、な、待て?!お前、何を!?」

とんでもない事を言い出すグレインバルドに、セレストはおおいに慌てる。

「エルザは知らん仲じゃなし、俺がいても構わねぇだろ」
「待て待て待て!構うだろ!皇太子が、街の酒場に入り浸り?外聞考えろ!それに、お前の決済がいる書類はどうする?」
「外聞?今更だろ、俺の奔放は。書類は俺の許可がいるもの以外は文官どもに回せ。決済待ってるだけの能無しどもだ、ちっとは働けってな」
「~~~~~~~~!!!!!」

セレストが口をパクパクさせて必死に言い募ろうとするが、言葉にならない。

「俺は決めたら変えないんだろう?好きにさせてもらうぞ」

ニッと笑うグレインバルドに、セレストは直前の自分を殴りたくなった。
グレインバルドに祈りも願いも必要ない。こいつは、自分の幸せは自力で確実に手に入れる。

「来たようだな。結界解くぞ」

アヤの気配を感知し、グレインバルドは軽く手を振り結界を解除させた。

もはや、聞く耳持たず。やると言ったら、やる男だ。
好きにしろとは言ったが、そういう意味じゃない!と心で叫び、セレストは額に手を当て重苦しく深くため息を漏らしていた。




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