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『悪の王女』として処刑されたエリザベス。
その罪は、聖女によって作られた冤罪だった。
断頭台の上で、彼女は前世の記憶を思い出す。
ここが、小説の中の世界だったことを。
しかし、すべてに気づくには遅すぎた。
刃は振り下ろされ、王女の人生は終わった──はずだった。
次に目を覚ましたとき、時間は巻き戻っていた。
戻った先は、余命を告げられたあの日。
残された時間はわずか。
復讐を果たすには短く、憎しみに費やすには惜しすぎる。
処刑の瞬間に見たのは、荒れ果てた民衆の姿だった。
兄に突きつけられた「無知も罪だ」という言葉。
王女でありながら、何も知らずに生きていた自分。
このまま何もせず死ぬくらいなら、最後に、ほんの少しでも誰かを救いたい。
そう決めた彼女は、自分を陥れた聖女とも、処刑を命じた兄とも、元婚約者とも距離を置き、ただ贖罪のために静かに行動を始める。
──そのはずだった。
「……俺がやる。お前は知らなくていい」
何でも屋を名乗る暗殺者。
危険な裏の顔を持ちながら、それでも不器用なほど真っ直ぐに彼女を守ろうとする男。
「彼女が生きているなら、それでいい。……そう思っていたのに」
一度は身を引くと決めていた元婚約者もまた、たった一目でその決意を捨てた。
「……やっと会えた。今度こそ、絶対に離さない」
失われたはずの縁が、静かに、しかし強く絡み合っていく。
エリザベスの知らない場所で、重すぎる想いが積み重なっていく。
一方、彼女が動き始めたことで、聖女の描いていた「物語」は少しずつ崩れ始めていた。
これは、罪を背負った王女が、贖罪のために選び直した人生の物語。
そして──彼女を守ると誓った男たちが、覚悟ごと彼女を囲い込み、未来へ連れ出そうとするやり直しの物語。
登録日 2026.06.09
王太子レオナルドは、生まれて初めて“拒絶”された。
「私に近づかないで!!」
公爵令嬢グレース・アシュフォード。
“悪女”と噂され、闇魔法を持つ忌み子。
誰もが彼女を恐れ、遠ざける。
だがレオナルドだけは、なぜか彼女から目を離せなかった。
彼女を見るたび胸が痛む。
彼女が泣きそうな顔をするたび、理由もなく苦しくなる。
まるで、自分は彼女を知っているかのように。
しかしレオナルドには、どうしても思い出せない記憶があった。
そしてグレースは、彼が近づくたび拒絶する。
――忘れているのは、自分だけだった。
失われた記憶の先にあるのは、愛か、それとも後悔か。
これは、あることを忘れた王太子と、忘れられない公爵令嬢の物語。
登録日 2026.06.10
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