大田純己

大田純己

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 遥か昔……英雄アーサーと魔王ロウの戦いがあった。  それは、人間と魔族ふたつの種族の戦争へと繋がっていった。  魔族側が行使する魔法。  世界に溢れる魔力を使って放たれる強力な一撃に対抗するため、人類は魔力によって動かす道具に改良に改良を重ねていった  地を穿ち天をも割く激しく永い戦いの末……アーサーは勝利し、同時に人類は魔族に対して勝利を得た。  戦争終結後、得られた技術は人々の衣食住、医療などに転用されていき、人々の生活は快適なものへと変わった。  道具を動かす為に用いられる回路。これは、晶石と呼ばれる希少な石によって造られる。  それは……木が長い時間を掛けて取り込んだ魔力をその身の内で結晶化させたもの。  たくさんの道具が造られていく中……当然、晶石の価値も右肩上がりで上昇していく。  結果……人々による……無秩序な木の大量な伐採が行われてしまった。  国々はこれに制限を掛け、自然の無秩序な破壊は収まったかにみえた。  しかし……一度手に入れた甘い蜜。それを簡単に手放せるほどに人間は潔白な生き物ではなかった。  木が駄目なら……彼らが次に目を付けたのは、生まれつき体内に晶石を持つ種族。  森などでひっそりと静かな生活を営んでいた彼らをさらい、体内にある晶石を奪い始めた。  増長する人間に以前よりも増して怒りの感情は高まっていく。  各地で小規模な激突が起こり、再び永い戦争へと突入してしまう。  そんな中、人類を脅かす大事件が発生してしまう。  一夜にしてひとつの国がまるごと消し飛んだのだ。  その日を境に戦局は、人間側に圧倒的不利な情勢へと変わっていく。  辺境の国フロンテラ。  英雄アーサーが発った地として知られるこの国に、タブレットと呼ばれる道具が厳重に保管されていた。  ある時、誰がどうやっても動かす事が出来なかったタブレットの画面が輝きだし、言葉を紡いだ。  もうじき、この地に勇者となるべく宿命を背負った子が産まれると……。  劣勢であった人類はこの報せにこう思った。  ――英雄アーサーの再来――と。  月日は流れ……。  フロンテラからほど近い場所にある小さな村ウナ。  そこの一軒の民家で、ひとりの男の子が産声をあげた。  それから16年の月日が経った。
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登録日 2015.12.04
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