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安倍晴明が、一夜にして都から消えた。最後に彼と会ったのは、暦しか読めない下級女官・忌部朔(いんべのさく)だった。
疑いを晴らした朔に託されたのは、晴明が遺した膨大な未解決の案件と、文書の山から現れた一匹の子狐——式神の「望(もち)」。
夢に立つ女、消えた姫君、偽りの凶星、書き消された祟りの日。都で起きる怪異の裏には、いつも「日付」がある。人は、並べ替え、読む向きを変え、選び、口実にして、日をねじ曲げる。朔は、暦を読むただひとつの家学で、その嘘を一枚ずつ剥がしていく。「日付は、人の心の証文」——積み上げた事実を、たった一文の推理で、武器に変えて。
だが、晴明が最後に朔へ遺した“一日”だけは、読めない。呪詛を成就させる吉日とも、封印を更新する日とも読める、二つの意味を負った日付。星を読んだ男が消えたその夜へ、暦を読む女が、狐とともに近づいていく。
平安の都を舞台に、一話完結の職能ミステリと、晴明失踪の謎が織りなす、和風怪異譚。
登録日 2026.08.22
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