自分の成長にブレーキかける人が陥る3つの思考

現状維持で他人を妄信し、自分への言い訳に終始していたらそれを疑ってみることが必要です(写真:Fast&Slow/PIXTA)
「人生100年時代」と言われる中、ビジネスパーソンにとって、学び続けること、成長し続けることは不可欠です。しかし、ある程度、経験を積み成功体験を重ねていくと、ある「思考のパターン」が、新しいことへの挑戦を妨げてしまうといいます。
ここでは、成長を妨げてしまいがちな3つの思考パターンについて、柳川範之さん(東京大学経済学部教授)と為末大さん(400メートルハードル日本記録保持者)の共著『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』から、一部抜粋して紹介します。
前回:いつもと同じ選択を好む人の伸びしろが小さい訳(1月27日配信)
前々回:30代で伸び悩む人が知らずとかかる「呪い」の正体(1月20日配信)

陥りがちな「成長の落とし穴」

人生100年時代と言われる今、何歳になっても学び続けること、成長し続けることは、誰にとっても不可欠です。しかし、ある思考パターンの強い人は、学びや成長のチャンスを見逃してしまったり、受け入れられなかったりすることが多いといいます。

そこでここでは、持っていたら要注意の、ビジネスパーソンの成長や学びを阻む3つの思考パターンと、そこから脱却するための「アンラーン」という考え方について紹介します。

①「このままでいいんじゃないか」(現状維持)

現状に100%満足しているわけではないけれど、でも、それなりにうまくいっている。ここまで何とかやってきたことに自分なりの誇りも持っている。世の中での新しい動きや変化を知らないわけではないし、少しは興味もあるものの、今までにつくりあげてきた形を崩してまで、新しいものを取りにいこうとは思わない。

こういう気持ちは、歳を重ねるほど強くなります。培ってきたものが大きい分、身軽に動けなくなってしまうのは仕方のないことだと思います。

たとえば今から三十数年前、オフィスに初めてコンピュータが登場したとき、使い方を覚えるのは新入社員を含め若手の役割でした。多くの上司は「今さら覚えたくない」と高みの見物で、若手社員に任せっきりという態度でいたように思います。

今のように、パソコンでの仕事が当たり前の世界から見ると呆れてしまうような笑い話ですが、それを現代に置き換えて、パソコンではなくプログラミングへの態度、あるいはデジタル化への態度で考えたとき、さっきまで他人事として笑っていた人たちは、変わらず笑っていられるでしょうか。

「プログラミングや新しいデジタル技術なんて、今さら覚えられない。若者に任せる」

と考えている人は、50代以上だとかなりの数に上るのではないでしょうか。

もちろん、すべての人がプログラミングを習得すべきだ、新しい技術に対応すべきだなどというつもりはありません。仕事上、まったく必要のない方も多いですし、役割分担ができている場合には必ずしも自らが使えるようになる必要はありません。

これは、1つの典型的なたとえ話です。誰の心の中にも「今さらそれは自分には無理だし、このままでいいだろう」「自分は変わらなくても、誰かが何とかしてくれるだろう」という壁があり、その壁はキャリアの形成とともに、より強固になっていくことに気づいていただけたでしょうか。

「目に見えない形で」「いつのまにか」「少しずつ」

新型コロナウイルスで従来の生活がいったん停止したような、強制リセットのような外的な圧力が強く働いた場合には、ルールチェンジが誰の目にも明らかです。その場合は、新しいルールに合わせるしかないので、文句を言いつつも何とかその方向に向かって努力をすることになります。