では、目指すべきは笑顔でなく、どんな顔でしょうか? それは「TPO 顔」。具体的に説明すると、時と場所に応じてセレクトされた、もっとも適切な表情のことをいいます。
私から見て、この「TPO顔」が上手だなと感じるのは、いわゆるVIPとされる人たちに多く存在します。
社会的立場が高い人たちは、場に応じた的確なコミュニケーションを求められる機会が多いので、必然的に鍛えられているのでしょう。
逆にいえば、TPO顔を使いこなせる人だからこそ、社会的立場が上がっていくのかもしれません。
たとえば、ある高名な政治家の演説を見ていると、支持者に無邪気な微笑みを向けたかと思えば、厳しい口調で政策を訴えかけたりと、表情の振り幅がとても大きい。
百戦錬磨の政治家ですから、そのとき、その場でもっとも人の心をつかめる表情、自分の思いを効果的に伝えられる表情を、瞬時に判断してつくっているのだと思います。
よほど感情のコントロールに長けているのだろうと、眺めていて感心させられます。このようにコミュニケーションに優れた人というのは、いろいろな「顔」をもっているもの。
表現の引き出しの多い人こそ、魅力的に映るのです。そして、表情のバリエーションは、トレーニングによって増やすことができます。
件の政治家の場合、おそらく長い年月をかけてさまざまな経験を重ねた結果、このような表現力が培われたのでしょう。
しかしトレーニングにより、長い年月をかけずとも、同じように顔の表現を多彩に増やすことは可能です。いつもニコニコしている“だけ”で終わらない、さまざまな状況に応じてさまざまな表現ができる「TPO顔」を目指しましょう。