肉体的にキツい仕事というイメージのある「解体業」。そんな印象を、さらに膨らませるようなインターネット上の投稿が話題となっている。未経験者でも月給35万円という待遇に釣られて解体業者に就職するも「この世の地獄を経験し半年で退職した」という内容で、以下の体験談が綴られている。
「辞めて二週間経つけど、まだ腰の痛み治らない。変なもん吸い込んで喉と肺もやられた」
「地獄だったほんとに 特に若手はコキ使われるから尚更」
「山になってる何tもの産廃を一人でトラックに積んだり」
「正社員に釣られたけど 福利厚生全くなかった 交通費出ないし、作業着すら支給してくれないし」
解体業は、建物の解体から廃棄物の処理までを行い、建築業の末端を担っている産業だ。昨今では再開発ブームなどに伴って需要も伸びており、その市場規模は拡大。2021年度の国土交通省調査によると解体工事業(はつり・解体工事業)の完成工事高は約1兆円と報告されている。しかし、解体業者は中小企業や個人事業主などが多く、作業員の安全まで考慮できない零細企業が請け負った現場では、上記のような過酷な職場環境も珍しくないという。解体業界とその現場の実態について、株式会社クリーンアイランド代表取締役の谷池一真氏に聞いた。
解体業といえば、「キツい・汚い・危険」の3K仕事の代表というイメージが広がっている過酷な肉体労働。前述の投稿に書かれたような職場環境はいまだに横行しているのだろうか。
「ひと昔前のことと言いたいですが、一部の解体業者のなかには今でも今回ネットで書かれているような状況で作業している業者があると思います。解体業者は大手から、本当に小さな会社まであり、なかにはコンプライアンス意識が低かったり、作業員が危険にさらされるような現場もあるのが現状です」(谷池氏)
経験の浅い新人にとっては、肉体的な負荷がかかる作業も多く、書き込みのような「コキ使われる」という印象になってしまうのかもしれない。
「解体は、現場によって作業内容が変わってきます。なかでも未経験の新人や資格などを持ってない作業員は『手元作業』と呼ばれる、人の手でしかできない仕事を担当することが多いです。運搬作業や、廃棄物の仕分け、清掃や水撒きなどさまざまな作業があり、体力的にも負担が大きくなる場合もあります。大きなビルを解体する場合などは重機も入った『相番』になりますが、内装解体などは機械が入れないので、手元作業を行う人手が必要になります」(同)
そんな業界未経験者でも、正社員で月給35万円というのは充分な高待遇だと思われるが、これは相場的にも平均レベルだという。
「報酬は地域によってかなり変わってきますが、首都圏であれば月給35万円というのはわりと標準的だと思います。ただ、地方では月給20万円とか、日当8000~1万円くらいというケースはまだまだありますね。解体に活かせる資格や、重機の免許などを取得していれば、さらに報酬は高くなります」(同)
福利厚生は一切ないという会社も多いのだろうか。
「社会保険がなかったり、勤怠管理がルーズな会社というのは聞きますね。現場の事故やケガに対する保険に関しても、多くの会社は入っていると思うんですけど、なかには未加入という会社もあるようです。解体は危険性の高い仕事だと思うので、そのあたりはちゃんとするべきだと思います。当社では、福利厚生や保険は手厚くやっておりますし、作業前のミーティングを徹底したり、KYTという危険予知訓練活動を進めるなど、安全面にも最大限に気を配っています」(同)