言語と妄想【伍】
…胃や腸が腐り始めたと思い込むようになった。患者にはその腐敗臭がはっきり判る。「この不吉な臭いは、自分の寝ている部屋に充満しているだけでなく、家の内部の隅ずみにまで立ち込めていて、そのため家人の顔色まで冴えない。彼らもやがて自分と同じ死病に罹患して腐敗していく。」 患者の疾病妄想はやがて家の外部へと拡散していく。彼は言う、「自分の死臭がさらに方々へ広がっていってそのためみんなが禍いをこうむるだろう。自分がこの世に生きながらえている限り、世の中の人たちは自分と同じ運命になってしまう。自分さえいなければいいのだが、といって、自分は死ぬこともできない」と。
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登録日 2022.09.10 01:50
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