一粒の砂
人を形作っているモノのひとつが声。
似て非なるものと出会っても、少しの共通点がその人を思い起こさせる。
あぁ……彼は、こんな声をしていただろうか。
もう定かではない。ただ懐かしく思う。
人混みの中を歩けばそこかしこに音が充満している。目の前に広がる景色は留まることを知らず、過ぎ去っていく。その隙間を通り過ぎれば静かな場所にでもたどり着けるかのように。
人は、一粒の砂なのだ。
海のように広がった砂浜の中にある、小さな小さな一粒。
手ですくいあげればサラサラと零れてしまうが、しっかりと掌に残る。風が吹けば飛ぶように転がり、広い海へと帰る。
掌に張り付いた粒だけが自分の元へと残される。
藍星は脳裏に焼き付いた弟子の姿を思い出し、薄らと笑みを零した。
本当に──難しい
砂を熱すればガラスにはなる。自然となるものもあれば、人が手を加えたものもある。
藍星は遠い昔に育てた弟子たちの姿を思い出し、打ち消すように手を払った
街並みを通り過ぎ、竹林が姿を表す。真っ直ぐに伸びた竹が道を指し示すように並び、青々とした笹の葉はささやかに揺れている。一枚つまみ、まじまじと観察していれば、元気な声が真っ直ぐにやってくる。
「師尊!」
「海飛、朝の掃除は終わったのか?」
「はい、終わりました!」
背筋を伸ばし、はっきりとした応答は実に好感がもてる。
藍星ランシンは褒めるように頷き、そっと袖を払いゆっくりと歩き出す。
海飛はいつものように少し離れた距離を保ち、藍星の後へと続いた。
「師尊、朝食ですが……まだ準備出来ていません」
「気にするな。ほら、私が買ってきた」
「え?」
手ぶらに見えた藍星の姿に海飛は困惑の表情を浮かべた。
「師尊、どこにあるのですか?」
「ここだ」
藍星が袖を軽く振る。
次の瞬間、湯気を立てた包子の籠がぽん、と現れた。
海飛は目を丸くする。
「毎回思いますが便利ですね……」
「便利だから作った」
「凄い……!!」
「昔、弟子が腹を空かせて泣くものだからな」
言った直後、藍星は僅かに目を細める。
「お前にもいつか教えてやる」
「はい!」
藍星は噛み締めるように包子を口に運ぶも、サッと血の気が引いていく。
何とか吐き出すことなく包子を飲み込むも、じんわりと滲んだ冷汗と吐き気は治まらない。瞼を閉じて静かに息を整え、何とか持ちこたえた。
極度の空腹のせいだろうと藍星は当たりをつける。
似て非なるものと出会っても、少しの共通点がその人を思い起こさせる。
あぁ……彼は、こんな声をしていただろうか。
もう定かではない。ただ懐かしく思う。
人混みの中を歩けばそこかしこに音が充満している。目の前に広がる景色は留まることを知らず、過ぎ去っていく。その隙間を通り過ぎれば静かな場所にでもたどり着けるかのように。
人は、一粒の砂なのだ。
海のように広がった砂浜の中にある、小さな小さな一粒。
手ですくいあげればサラサラと零れてしまうが、しっかりと掌に残る。風が吹けば飛ぶように転がり、広い海へと帰る。
掌に張り付いた粒だけが自分の元へと残される。
藍星は脳裏に焼き付いた弟子の姿を思い出し、薄らと笑みを零した。
本当に──難しい
砂を熱すればガラスにはなる。自然となるものもあれば、人が手を加えたものもある。
藍星は遠い昔に育てた弟子たちの姿を思い出し、打ち消すように手を払った
街並みを通り過ぎ、竹林が姿を表す。真っ直ぐに伸びた竹が道を指し示すように並び、青々とした笹の葉はささやかに揺れている。一枚つまみ、まじまじと観察していれば、元気な声が真っ直ぐにやってくる。
「師尊!」
「海飛、朝の掃除は終わったのか?」
「はい、終わりました!」
背筋を伸ばし、はっきりとした応答は実に好感がもてる。
藍星ランシンは褒めるように頷き、そっと袖を払いゆっくりと歩き出す。
海飛はいつものように少し離れた距離を保ち、藍星の後へと続いた。
「師尊、朝食ですが……まだ準備出来ていません」
「気にするな。ほら、私が買ってきた」
「え?」
手ぶらに見えた藍星の姿に海飛は困惑の表情を浮かべた。
「師尊、どこにあるのですか?」
「ここだ」
藍星が袖を軽く振る。
次の瞬間、湯気を立てた包子の籠がぽん、と現れた。
海飛は目を丸くする。
「毎回思いますが便利ですね……」
「便利だから作った」
「凄い……!!」
「昔、弟子が腹を空かせて泣くものだからな」
言った直後、藍星は僅かに目を細める。
「お前にもいつか教えてやる」
「はい!」
藍星は噛み締めるように包子を口に運ぶも、サッと血の気が引いていく。
何とか吐き出すことなく包子を飲み込むも、じんわりと滲んだ冷汗と吐き気は治まらない。瞼を閉じて静かに息を整え、何とか持ちこたえた。
極度の空腹のせいだろうと藍星は当たりをつける。
コメント 0件
登録日 2026.06.01 12:46
0
件