
●この記事のポイント
・介護職員が20万人超不足する中、国家試験不合格者を有資格扱いする経過措置が終了すれば、外国人材の減少などが重なり、現場の人手不足がさらに深刻化する可能性がある。
・養成施設の入学者の半数以上を占める外国人にとって、日本語試験の合格率は50%未満と高い壁。経過措置終了は日本を選ばない要因となり、教育機関や介護現場に大きな打撃を与える。
・人材不足の解消には、試験制度の柔軟化、現場のDX促進、無資格者の活用、外国人の生活支援など多角的な施策が必須。質を担保しつつ人材を確保する制度設計が今後の焦点となる。
日本の介護現場で、深刻な人手不足が再びクローズアップされている。厚生労働省の最新データ(2023年度)によれば、介護職員数は212万6000人。一見すると多く感じるが、前年度から約3万人減少しており、社会保障審議会が示した「2025年度に必要となる介護職員の見込み数」約245万人には遠く及ばない。すでに推計では20万人超の不足が続いており、高齢者人口がピークを迎える2040年前後には、不足規模はさらに拡大すると考えられている。
これまで人材不足を補ってきたのが、介護福祉士資格の「経過措置」だ。2017年度の法改正で、養成施設卒業後も国家試験不合格者を最長5年間、有資格者として扱うことを認めていた。しかし厚労省は、この経過措置を終了し「国家試験合格者のみを介護福祉士と認める」方向で議論を進め始めた。人材の質の担保を目的とする一方で、現場からは「制度が変われば外国人が来なくなる」「ただでさえ不足なのに採用がさらに困難になる」との懸念が広がる。
●目次
介護福祉士は介護系資格の中で唯一の国家資格であり、介護現場の中核を担う存在だ。
しかし2017年度以前、養成施設を修了すると国家試験に不合格でも自動的に介護福祉士となれる仕組みが長年続いていた。国際標準と比較しても資格要件が低く、質の確保が課題として指摘されていた。
そこで2017年度の法改正で、「試験合格者だけを介護福祉士にする」方針へと転換。しかし移行期間として、2021年度卒までの学生は不合格でも「5年間は介護福祉士とみなす」経過措置が設けられた。
この措置が人材確保を支えていた理由は、次の2つにある。
(1)外国人材への“実質的な救済策”
養成施設の入学者の半数以上が外国人となった現在、日本語で行われる国家試験は大きな壁だった。合格率は50%未満にとどまり、試験に落ちても「5年間は有資格者として働ける」仕組みは、外国人材が日本を選ぶ理由になっていた。
(2)日本人の新規参入の減少
介護職への日本人の志望者は減少傾向にある。労働環境の厳しさ、給与の伸び悩み、精神的負担の大きさなどが主な理由だ。養成施設の定員割れも続いており、経過措置が“即戦力を確保する最後の手段”となっていた。
もし経過措置が廃止されれば、介護の担い手にはどのような影響が出るのか。
●外国人材が日本から離れる可能性
アジア各国ではすでに介護資格の国際化が進み、介護人材の争奪戦が激しい。特に台湾、シンガポール、中東などは給与水準が高く、言語面のハードルも日本より低いケースがある。