アマゾンがOpenAIに1.5兆円投資の深層…循環投資か、エヌビディアへの大勝負か

 現在、生成AI開発の最大のコスト要因は、エヌビディア製GPUだ。AIモデルの高度化が進むほど、演算コストは指数関数的に膨張し、クラウド事業者の利益を圧迫する。

 そこでアマゾンが力を入れてきたのが、AWS独自のAI学習用チップ「Trainium」である。

「自社チップを普及させられるかどうかは、クラウド事業者の命運を左右します。エヌビディアに依存し続ければ、利益率は永遠に改善しません」(同)

 もしOpenAIの膨大な計算処理の一部でもTrainiumに置き換われば、
・AWSはコスト構造を劇的に改善
・エヌビディアの価格交渉力は低下
・半導体業界のパワーバランスが変化
という三重のインパクトが生まれる。

 これは、グーグルが独自チップ「TPU」で描いてきた構図と同じだ。アマゾンの投資は、「GPU時代の終わり」を見据えた長期戦略でもある。

OpenAI一点集中が生む「2000年ITバブル」との不気味な重なり

 一方で、楽観視できない兆候もある。それは、OpenAIという一点に、あまりにも多くのマネーが集中している現実だ。

 ・マイクロソフト:累計約140億ドルを投資し、Azureにロックイン

 ・エヌビディア:出資と供給の両面で関与

 ・アマゾン:100億ドル規模の出資とAWS契約

 各社がOpenAIに資金を注ぎ、その資金で自社インフラを使わせる??。この構図は、2000年前後のITバブル期を知る市場関係者に強烈な既視感を与える。

「当時は通信機器メーカーが新興通信会社に融資し、その資金で自社設備を買わせていました。需要が止まった瞬間、連鎖破綻が起きたのです」(川?氏)

 現在のAI市場も、OpenAIの成長が止まった瞬間に“マネーの還流”が断絶するリスクを抱えている。

技術革新か、AIバブルか——分岐点に立つアマゾン

 もちろん、生成AIは確実に世界を変えつつある。だが同時に、巨額投資が巨額需要を“自ら作り出している”側面があることも否定できない。

 アマゾンの1.5兆円投資は、革新的技術を前に進めるための合理的判断なのか、それとも需給を歪める危うい循環なのか。その答えが明らかになるのは、数年後だろう。

「今回の投資は、成功すればAWSとアマゾンを次の10年支える。しかし失敗すれば、“AI版リーマンショック”の引き金になりかねません」(小平氏)

 アマゾンは今、エヌビディア1強を崩すための乾坤一擲の勝負に出た。それが「未来への布石」になるのか、「AIバブルの象徴」として語られるのか——。世界のテック業界は、その行方を固唾をのんで見守っている。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)