電圧を極端に上げれば他の元素も入るのでは、と思うかもしれないが、それもない。結晶構造そのものがリチウム専用に設計されているため、条件を変えてもリチウム以外は侵入しない。

従来の「溶媒抽出法」では、大量の化学薬品で不純物を除去するが、銅やアルミニウムを完全に取り除くことが難しく、生成できるのは炭酸リチウムまで。電池に必要な水酸化リチウムへの変換には、さらに中国での精製が必要になる。
一方、LiSMICは膜を1回通すだけで純度99.99%の水酸化リチウムをダイレクトに生成できる。不純物を「取り除く」のではなく、欲しいリチウムだけを「取り出す」逆転の発想だ。
「電池の原料として絶対に入ってはいけない元素を含まない水酸化リチウムを作れるのは、我々だけだと思っています」
今回公開されたベンチプラントは、LiSMICを実際の生産設備へスケールアップするための検証装置だ。
「膜のサイズ自体は手のひらサイズのまま変わっていません。セラミックスは大きくすると割れてしまう。0.5ミリの薄さですから、お茶碗と同じでパリッといく。だから膜を何枚も並列に並べて処理量を稼ぐ設計にしました」
9枚のセラミックス膜を搭載し、24時間365日の連続運転を可能にするシステムが組み込まれている。最大のポイントは、リチウム濃度と温度を自動で一定に維持する制御技術だ。
「膜がリチウムを回収し続けると原液の濃度が下がり、回収速度も落ちる。だから前処理で濃度を高めた原液を連続的かつ自動で補充するシステムを作りました。温度管理も同様です」
生産能力は商用プラントの約100分の1だが、膜の枚数を増やせば量はスケールアップできる設計だ。将来の商用プラントは40フィートコンテナサイズの「LiSMICユニット」として、年間570トンの水酸化リチウム生産を目標とする。システムさえ検証できれば、あとは膜を増やすだけとなっている。
LiSTieのビジネスモデルは2つのフェーズで構成される。
第1フェーズは、使用済みリチウムイオン電池からのリサイクルリチウム製造・販売だ。廃電池を焼成して「ブラックマス」と呼ばれる粉末にし、溶液化してLiSMICで回収する。
「とにかくリサイクルリチウムのニーズが高い。ヨーロッパは2031年からリサイクルを法制化していて、自動車メーカーは調達しなければいけないのに、供給できる会社がいない」
2027年からの売上開始を計画し、試作サンプルは2026年度中にも出荷予定。岐阜県の耐火物メーカーTYKと協力し、耐火物廃材から1日1.5kgの水酸化リチウムを回収するテストを進めている。
第2フェーズは、コンテナ型回収装置「LiSMICユニット」の製造・販売だ。南米の塩湖やオーストラリアの鉱山など世界のリチウム産地に納入し、膜交換メンテナンスや技術指導も収益源とする。
ただし装置販売には慎重な姿勢も見せる。
「まず自社でリサイクル製造をやりながら運転実績を積み、信頼性を固めてから装置販売に入る。トラブルがあっても自分たちで膜を交換して再起動できますから」
製造コスト目標はキロあたり500円。製造工場は大手企業が撤退した川崎市の工場跡地を検討しており、川崎市と具体的な協議が進んでいる。
「2030年には、世界のリサイクルリチウムの4分の1くらいを担えるような規模にしたい」
LiSTieのビジョンは電池リサイクルにとどまらない。その先に見据えるのは「フュージョンエネルギー(核融合)」だ。