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第一部 凱旋と裏切り
第5話 報奨という左遷
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王宮の謁見の間は、いつも以上に静まり返っていた。
絢爛な装飾も、今の私にはただの飾りにしか見えない。
呼び出された理由は分かっている。
“聖女職の解雇”に続く、次の処遇だ。
玉座の前に立つと、王が形式だけの声で告げた。
「エリシア・ヴァレンティーナ。
魔王討伐の功績により――辺境領を授ける」
ざわり、と空気が揺れた。
形式上は“褒賞”。
だが、真意は明白だ。
辺境=魔物、瘴気、貧困。
そして権力から最も遠い場所。
英雄を封じ込めるのに、都合がいい土地。
私は一度だけ王の目を見る。
そこに感謝も敬意もない。ただの処理案件だ。
ならば、こちらも淡々と応じるだけ。
「ありがとうございます」
敬礼し、言葉を続ける。
「――では、今日限りでこの国を去ります」
玉座の上で、王の肩がわずかに緩んだ。
隣に立つ王太子も妹も、安堵の表情を隠そうともしない。
“厄介な聖女が自ら出ていく”。
そう思っているのだろう。
私は彼らの表情から視線を外し、静かに息を整える。
ここにはもう、必要なものはない。
誰も私を必要としない場所に、留まる理由はない。
王が最後に告げた。
「領地の文書は後日送る。好きにするがよい」
命令ではなく、放棄に近い口調だった。
私は膝を折り、礼をして退室する。
扉を閉じたとき、胸の奥の感情は驚くほど軽かった。
――ああ、終わった。
見捨てられたのではなく、私が彼らを捨てたのだ。
絢爛な装飾も、今の私にはただの飾りにしか見えない。
呼び出された理由は分かっている。
“聖女職の解雇”に続く、次の処遇だ。
玉座の前に立つと、王が形式だけの声で告げた。
「エリシア・ヴァレンティーナ。
魔王討伐の功績により――辺境領を授ける」
ざわり、と空気が揺れた。
形式上は“褒賞”。
だが、真意は明白だ。
辺境=魔物、瘴気、貧困。
そして権力から最も遠い場所。
英雄を封じ込めるのに、都合がいい土地。
私は一度だけ王の目を見る。
そこに感謝も敬意もない。ただの処理案件だ。
ならば、こちらも淡々と応じるだけ。
「ありがとうございます」
敬礼し、言葉を続ける。
「――では、今日限りでこの国を去ります」
玉座の上で、王の肩がわずかに緩んだ。
隣に立つ王太子も妹も、安堵の表情を隠そうともしない。
“厄介な聖女が自ら出ていく”。
そう思っているのだろう。
私は彼らの表情から視線を外し、静かに息を整える。
ここにはもう、必要なものはない。
誰も私を必要としない場所に、留まる理由はない。
王が最後に告げた。
「領地の文書は後日送る。好きにするがよい」
命令ではなく、放棄に近い口調だった。
私は膝を折り、礼をして退室する。
扉を閉じたとき、胸の奥の感情は驚くほど軽かった。
――ああ、終わった。
見捨てられたのではなく、私が彼らを捨てたのだ。
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