婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです

藤原遊

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第一部 凱旋と裏切り

第4話 放逐

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婚約発表の翌日、私は家へ呼び戻された。
応接室へ向かう廊下には、ひとりの少女が立っている。

ミア。
私が幼い頃、孤児院で助けた子で、聖女になってからはずっと側で支えてくれたシスター見習いだ。

祈りも浄化も、彼女の補助があったからこそ成り立っていた。
唯一、心から信じられる相手。

「エリシア様……行かれるのですか?」
「呼ばれたから、行ってきます。ここで待っていて」

ミアは不安げにうなずいた。

応接室に入ると、父と母、そして妹。
全員が、私を見る気もない。

父が最初に言った。

「エリシア。お前は――用済みだ」

短く、冷たい。
家名を守るための道具。その扱いは昔から変わらない。

母が続ける。

「妹のリュシアのほうが家に利益をもたらすわ。
 あなたは聖女として役目を終えただけよ」

妹は、昨夜と同じ笑みを浮かべた。

「お姉様、気づかないほうが悪いのよ。
 討伐帰りの英雄なんて、扱いにくいだけだわ」

嘲笑が室内に落ちる。

そこへ、教会の神官長が入ってきた。

「エリシア・ヴァレンティーナ。
 魔王を倒した今、聖女職は解く。今日付で退任だ」

解雇通告は、淡々としていた。

私は考え、選び、はっきりと言う。

「務めは果たしました。
 では、今後は私の判断で生きます」

神官長の眉がわずかに動いた。

父がさらに突き放す。

「家の名も盾も使わせん。出ていくなら勝手にしろ」

妹は嬉しそうに笑った。

「やっと消えてくれるのね。
 あなたがいると、私の立場がややこしいの」

怒りより先に、静けさが胸に落ちた。

私は席を立つ。

「分かりました。家も教会も離れます」

扉を開けた先に、ミアがいた。
目が真っ赤に腫れている。

「エリシア様……私、ついていきます」
「……ありがとう。とても助かるわ」

ミアの手を取ると、彼女は小さく握り返してくれた。

そのぬくもりだけで、もう十分だった。

――ここからは私が、自分の道を選ぶ。
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