幼馴染がくじに細工して10年嫁にいけなかったので、その婚約は返上いたします
この国では、婚約した男女が年に一度、二人でひとつの籤を引く。白なら年内に結ばれ、黒なら今年は結ばれない。神の采配とされ、誰も疑わない。
アンネリーゼは十六の年から十年、黒しか引いていない。十度。婚約者は幼馴染のヴェルナー。彼はそのたびに「来年こそ」と、やさしく笑ってくれた。
二十六。適齢期の最後の年。今年こそはと、彼女は生まれて初めて、ずるをしようと決める。ところが儀式の前夜、札を検めに忍び込んだ神殿で見てしまう。籤の櫃に細工をしている、婚約者その人の背中を。
理由は借金でも、権力でもなかった。
「わたしたちが所帯を持てば、あの子がひとりになります」
あの子――彼の家に引き取られた、五つ下の幼馴染。まだ二十一。あと五回も引ける娘。
十年。この人は、時間のあるほうを守るために、時間のないほうから十年を抜き取っていた。
――ならばもう、隣には立ちません。
翌朝、彼女は婚約を返上する。そして、十年間ずっと聖堂のいちばん後ろの席から彼女を見ていた男の手を取った。細工は空を切り、白い札が十年ぶりに彼女の手に浮かび上がる。あとは、十年分の帳簿が、静かに答え合わせをはじめる。
アンネリーゼは十六の年から十年、黒しか引いていない。十度。婚約者は幼馴染のヴェルナー。彼はそのたびに「来年こそ」と、やさしく笑ってくれた。
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「わたしたちが所帯を持てば、あの子がひとりになります」
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