【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい

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(11)距離が縮まる兆し?

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アリシアは、次第にカイゼルの隠れた一面に気づき始めていた。

彼は普段、宮殿内で冷徹で無表情な皇帝として振る舞っていたが、時折ふとした瞬間に見せる優しさが、彼の中に潜む違う面を垣間見せることがあった。 

例えば、ある日のこと。

アリシアは庭園で読書をしていたが、陽射しが強くなり、どうしても目が痛くなってきた。

座っているベンチの上で顔をしかめながら、うんざりとした表情を浮かべるアリシア。  

「日射病になられると困る。」  

ふと耳にした声に、顔を上げると、そこにはカイゼルが立っていた。

無表情な顔で冷たく言い放つ彼の手には、日差しを遮るための立派な日傘が握られていた。  

「これを使え。」  

アリシアは驚きつつも、すぐに傘を受け取った。

しかし、その瞬間、彼がそっと後ろの茂みから出てきた侍女に向かって、小声で「俺はここで待っている」と言っていたのを耳にしてしまった。

つまり、彼は、アリシアが日射病になるのを防ぐために、わざわざ近くに控えていたのだ。  

「え…?」  

アリシアは、少し驚きながらもその優しさに心が温かくなった。

しかし、その優しさを見せられたことに気づいても、彼はあくまで冷徹な顔で、少しも動じる様子はない。  

「陛下、思ったより面倒見がいいのね。」  

アリシアは軽く冗談を言ってみた。

カイゼルの無表情な顔が一瞬、微かにゆがんだような気がした。

もしかしたら、恥ずかしさを感じているのだろうか。  

「そうか?」  

「うん、すごく!」  

彼の反応が少し戸惑いを感じさせたけれど、アリシアはそれを気にせずに楽しそうに続けた。  

「でも、そんなことしてくれるなんて、想像してなかった。」  

カイゼルは少し黙って、アリシアをじっと見つめた。

その視線が少し鋭く感じるが、それでも彼の表情には若干の緩みが見えて、アリシアは心の中でちょっと嬉しい気持ちが広がった。  

「あまり広めるな。」  

冷たく言われて、アリシアは思わず吹き出してしまう。  

「えー、そんなこと言っても、なんだか…面倒見がいいって言うしかないじゃない。」  

カイゼルのあまりにも堅苦しい態度が、次第に面白くなってきた。

彼が見せる冷徹な顔と、その裏に隠れた優しさが、まるで一枚の仮面のように思えてきた。

アリシアは、もっと彼のことを知りたいと思うようになった。  

「本当に…どうしてこんなに優しさを隠すの?」  

彼女が心の中で思うと、カイゼルはやっと少しだけ目を細めて言った。  

「見せる必要はないからな。」  

その言葉に、アリシアは少しだけ心が温かくなり、目を細めて微笑んだ。

カイゼルがどれだけ冷酷に見えても、その中には、きっと他の誰にも見せたくない一面があるのだろう。  

その時、ふと空を見上げると、柔らかい日差しが照らしている。

その光がアリシアとカイゼルの間を包み込むようで、二人の間にはなんとも言えない静かな空気が漂っていた。  

「…あまり、広めるなよ。」  

再び冷たく言うカイゼルに、アリシアは笑顔で答えた。  

「分かってる。でも、陛下の優しさはちょっと見逃せないわ。」  

その言葉に、カイゼルは少しだけ、でも確かに頬を引き締めるようにして微かに口元を引き上げた。

それは、ほんの一瞬のことで、すぐに無表情に戻ったけれど、アリシアにはその小さな変化が心に残った。  

「ほら、あんまり気を使ってくれるのもありがたくない?」  

「気を使ってるわけではない。」  

そんな冷たい言葉を言いながらも、アリシアはその裏に隠れた彼の優しさを感じ取っていた。
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