【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい

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(12)皇帝陛下と「秘密の庭園」

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ある穏やかな午後、アリシアは宮殿内を歩き回りながら、新しい隠れ場所を探すことをちょっとした日課にしていた。

王宮での生活は豪華ではあるけれど、どうしても退屈な時間が多くて、時々こうして無意味に彷徨ってみるのも悪くない。

いつものように高い天井を見上げながら、歩いていると、ふと見慣れない扉が目に入った。 

「また秘密の部屋?もしかして、陛下の趣味コレクションでも見つかるかな…?」 

そんな軽い気持ちで扉を押し開けてみると、目の前に広がっていたのは、まさかの庭園だった。

室内ではなく、小さな庭がそこにあったのだ。

色とりどりの花が咲き乱れ、柔らかな風に揺れる花々の間には、ちょろちょろと水音が響く小さな噴水が静かに流れていた。

その光景にアリシアは思わず息を呑んだ。

「こんな場所があったなんて…素敵!」 

足を踏み入れると、すぐにその美しさに引き込まれ、アリシアは思わず噴水のそばのベンチに腰を下ろす。

目の前には、色鮮やかな花々が咲き誇り、心地よい風が顔を撫でる。

まるでこの世の楽園のようだと思った。 

だが、その穏やかな時間も長くは続かなかった。

背後から、どこか冷たく、低い声が響いた。

「誰がここに入れと言った?」 

その声にハッと振り返ると、そこには腕を組んだカイゼルが立っていた。

普段から無表情で冷酷な顔をしている彼だが、アリシアはその時、少しだけ眉が動いたのを見逃さなかった。 

「あ、陛下…これはその、迷い込んだだけで…!」 

慌てて言い訳をしてみるアリシアに、カイゼルは冷たく言った。

「迷うような場所ではない。」 

「…ですよね。でも、すごく素敵な場所ですね!」 

アリシアはすぐに話題を変えようとした。

カイゼルの無言のままの視線がちょっと重くて、心が少しドキドキしていたからだ。

何とか気まずさを解消しようと、アリシアは明るく言った。

「ところで、この庭園は陛下が作られたんですか?」 

「…そうだ。」 

意外な答えにアリシアは目を見開いた。

まさか冷酷無情と噂される皇帝が、こんな美しい庭園を作るなんて…まるで絵に描いたようなリーダー像とは全く違う一面だ。

「すごい!お花の配置とか、噴水とか、本当にセンスがいいですね!」 

「…必要だったから作っただけだ。」 

「必要?」 

アリシアは思わず首をかしげる。

庭園が“必要”?何が“必要”だったのか、全く予想がつかない。

それでも興味が湧いて、さらに掘り下げて尋ねてみた。

「もしかして、ここでリラックスするためとか?」 

「違う。」 

「あ、じゃあ、誰かを招待するためとか?」 

「…違う。」 

言葉が少し重く響くたびに、アリシアの好奇心はますます刺激される。

普段は冷徹に振舞うカイゼルに、まさかこんな一面が隠されているとは想像もしていなかったからだ。

「でも、こんなに素敵な場所を独り占めしてるなんてもったいないですよ!誰かに見せたほうがいいと思います!」 

「今、見ているだろう。」 

カイゼルはあくまで冷静に答えるが、その言葉にアリシアは一瞬息を呑んだ。

カイゼルの視線は真っ直ぐで、どこか鋭さを感じる。

だが、同時にその目にほんの一瞬だけ不思議な光が宿ったように見えた。

その光に、アリシアは少し心が温かくなるのを感じた。 

「……陛下、もしかして私をここに案内したかったんですか?」 

アリシアが冗談半分で言うと、カイゼルは無言でわずかに視線を逸らした。 

「勝手に入ったのだろう。」 

その一言に、アリシアは思わず笑ってしまったが、同時にカイゼルの態度にちょっとした照れを感じた。

もしかしたら、彼は本当に少しだけ、アリシアにこの場所を見せたかったのかもしれない。 

「ありがとう、陛下!」 

「…何に礼を言うのだ。」 

「こんな素敵な場所を見せてくれたからです!」 

カイゼルは少しだけため息をつき、その後は何も言わなかった。

無口な彼だが、アリシアはその沈黙の中に優しさが隠れていることを感じていた。

冷徹な外見の裏に、こんなに繊細な一面があったなんて。  

アリシアは心の中でほっと息をつきながら、静かに庭園の景色を楽しんだ。

カイゼルが作り上げたこの場所に、彼の隠れた思いがこもっているのだと、少しだけわかる気がした。そして、そんな彼に対する気持ちが、また少しだけ、変わったことを感じていた。
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