【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい

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(13)「猫」の話題が再燃 

庭園の出来事からしばらく経ち、アリシアはカイゼルの微妙な変化に気づくようになっていた。

無表情のその中に、ふとした瞬間に見せる優しさ。

まるで気づいて欲しいかのように。

それに気づくたびに、アリシアは心の中でほんの少し胸が温かくなるのを感じた。

ある日の昼下がり、宮殿内を歩いていたアリシアは、何気なく廊下でカイゼルと再会した。

彼が遠くから歩いてくるのが見えたので、またちょっとした冗談でも言ってみようと思い、軽い調子で声をかけてみる。

「そういえば、陛下って猫が好きなんじゃなかったでしたっけ?」

カイゼルの歩みがぴたっと止まり、わずかに目を細めた。

何か言いたそうな顔をしているが、すぐにその表情を引っ込め、無表情に戻る。

「……またその話か。」

アリシアはちょっと驚きながらも、思わずにやりと笑った。

ああ、この反応、やっぱり意外と気にしてるんだ、と思うと面白くなってきた。

「でも、あの本、陛下が読んでたんでしょ?隠さなくてもいいのに。猫の育て方とか書いてあったじゃないですか。」

カイゼルの顔がほんのりと険しくなる。

アリシアがそんなに強調するから、つい反応してしまったのだろう。

だがすぐに、カイゼルは無表情に戻り、低い声で言った。

「勘違いだ。」

「じゃあ、ほんとは犬派とか?」と、アリシアは挑発するように言ってみた。

どうしてもこの硬い表情を崩したくてたまらなかった。

「どちらでもない。」と、カイゼルはきっぱり否定する。

アリシアはしばらくその反応をじっと見つめたが、ふっと肩を落としてがっかりした様子を見せた。

「えー、でも…どっちかと言ったら猫派って感じだったんだけどな。」と、少し不満そうに言うアリシア。

しかし、すぐにその顔がふわっと明るくなり、彼に向かって言った。

「でも、嫌いじゃないんですね?じゃあ、いつか一緒に猫を飼いましょうよ!」

「軽々しく言うな。」と、カイゼルは相変わらず冷たく言ったが、その目にはわずかながら優しさが込められていた。

アリシアはその表情を見逃さなかった。

彼が言っていることと、彼の目の動きに微妙な違和感を感じたからだ。

一瞬、カイゼルは小さくため息をついてから、すぐに目をそらし、無言で歩き出す。

けれど、その背中にちらっと見える微かな安心感のようなものに、アリシアは気づいた。

ああ、この人、実はちょっとだけ心配してるんだな、という気持ちが溢れてくる。

「ありがとう、陛下!」と、思わず言ってみた。

軽くお礼を言いながら、その後ろ姿を見つめる。

すると、カイゼルはその言葉を無視して歩き続けるが、その歩調がわずかに速くなった気がした。

彼の無言のままでいることにはもう慣れてきたアリシアは、思わずくすっと笑った。

「でも本当に、猫を飼いたいなぁ」と心の中で呟く。

そして、もう少しだけ彼の優しさを引き出したくて、また次回、何か面白いことを言ってみようと思った。

どんな言葉を使えば、彼の無表情な顔に微笑みを引き出せるだろうか。

アリシアはまた一歩、カイゼルに近づいている気がした。
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