【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい

文字の大きさ
11 / 57

(11)距離が縮まる兆し?

しおりを挟む
アリシアは、次第にカイゼルの隠れた一面に気づき始めていた。

彼は普段、宮殿内で冷徹で無表情な皇帝として振る舞っていたが、時折ふとした瞬間に見せる優しさが、彼の中に潜む違う面を垣間見せることがあった。 

例えば、ある日のこと。

アリシアは庭園で読書をしていたが、陽射しが強くなり、どうしても目が痛くなってきた。

座っているベンチの上で顔をしかめながら、うんざりとした表情を浮かべるアリシア。  

「日射病になられると困る。」  

ふと耳にした声に、顔を上げると、そこにはカイゼルが立っていた。

無表情な顔で冷たく言い放つ彼の手には、日差しを遮るための立派な日傘が握られていた。  

「これを使え。」  

アリシアは驚きつつも、すぐに傘を受け取った。

しかし、その瞬間、彼がそっと後ろの茂みから出てきた侍女に向かって、小声で「俺はここで待っている」と言っていたのを耳にしてしまった。

つまり、彼は、アリシアが日射病になるのを防ぐために、わざわざ近くに控えていたのだ。  

「え…?」  

アリシアは、少し驚きながらもその優しさに心が温かくなった。

しかし、その優しさを見せられたことに気づいても、彼はあくまで冷徹な顔で、少しも動じる様子はない。  

「陛下、思ったより面倒見がいいのね。」  

アリシアは軽く冗談を言ってみた。

カイゼルの無表情な顔が一瞬、微かにゆがんだような気がした。

もしかしたら、恥ずかしさを感じているのだろうか。  

「そうか?」  

「うん、すごく!」  

彼の反応が少し戸惑いを感じさせたけれど、アリシアはそれを気にせずに楽しそうに続けた。  

「でも、そんなことしてくれるなんて、想像してなかった。」  

カイゼルは少し黙って、アリシアをじっと見つめた。

その視線が少し鋭く感じるが、それでも彼の表情には若干の緩みが見えて、アリシアは心の中でちょっと嬉しい気持ちが広がった。  

「あまり広めるな。」  

冷たく言われて、アリシアは思わず吹き出してしまう。  

「えー、そんなこと言っても、なんだか…面倒見がいいって言うしかないじゃない。」  

カイゼルのあまりにも堅苦しい態度が、次第に面白くなってきた。

彼が見せる冷徹な顔と、その裏に隠れた優しさが、まるで一枚の仮面のように思えてきた。

アリシアは、もっと彼のことを知りたいと思うようになった。  

「本当に…どうしてこんなに優しさを隠すの?」  

彼女が心の中で思うと、カイゼルはやっと少しだけ目を細めて言った。  

「見せる必要はないからな。」  

その言葉に、アリシアは少しだけ心が温かくなり、目を細めて微笑んだ。

カイゼルがどれだけ冷酷に見えても、その中には、きっと他の誰にも見せたくない一面があるのだろう。  

その時、ふと空を見上げると、柔らかい日差しが照らしている。

その光がアリシアとカイゼルの間を包み込むようで、二人の間にはなんとも言えない静かな空気が漂っていた。  

「…あまり、広めるなよ。」  

再び冷たく言うカイゼルに、アリシアは笑顔で答えた。  

「分かってる。でも、陛下の優しさはちょっと見逃せないわ。」  

その言葉に、カイゼルは少しだけ、でも確かに頬を引き締めるようにして微かに口元を引き上げた。

それは、ほんの一瞬のことで、すぐに無表情に戻ったけれど、アリシアにはその小さな変化が心に残った。  

「ほら、あんまり気を使ってくれるのもありがたくない?」  

「気を使ってるわけではない。」  

そんな冷たい言葉を言いながらも、アリシアはその裏に隠れた彼の優しさを感じ取っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました

鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。 素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。 とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。 「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

氷狼魔術師長様と私の、甘い契約結婚~実は溺愛されていたなんて聞いていません!~

雨宮羽那
恋愛
 魔術国家アステリエで事務官として働くセレフィアは、義理の家族に給料を奪われ、婚期を逃した厄介者として扱われていた。  そんなある日、上司である魔術師長・シリウスが事務室へやってきて、「私と結婚してください」と言い放った!  詳しく話を聞けば、どうやらシリウスにも事情があるようで、契約結婚の話を持ちかけられる。  家から抜け出るきっかけだと、シリウスとの結婚を決意するセレフィア。  同居生活が始まるが、シリウスはなぜかしれっとセレフィアを甘やかしてくる!? 「これは契約結婚のはずですよね!?」  ……一方セレフィアがいなくなった義理の家族は、徐々に狂い始めて……? ◇◇◇◇  恋愛小説大賞に応募しています。  お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます( . .)"  モチベになるので良ければ応援していただけると嬉しいです! ※この作品は「小説家になろう」様にも掲載しております。 ※表紙はAIイラストです。文字入れは「装丁カフェ」様を使用しております。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

処理中です...