【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい

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(15)「帝国の名物スイーツ」問題 

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カイゼルの庭園での出来事からしばらく経ち、アリシアとカイゼルの距離は少しずつ、しかし確実に縮まっていた。

彼女は以前にも増して、帝国の名物スイーツを食べたいという強い願望を持ち始めていた。

どうしてもあの甘くてふわっとしたケーキが食べたくてたまらなかったのだ。

「ふむ、どうしようかな…」

アリシアは王宮の厨房にお願いをしようと考えたが、案の定、材料が足りなかった。厨房のスタッフが言ったのだ。

「申し訳ありません、アリシア様。砂糖が少し足りません。それと、果実のシロップも必要です。」

ああ、もう。どうしてこんな時に限って!

アリシアは頭をかきながら悩んだ。

ふと思い立ち、彼女は心の中で思った。

「もしかしたら、カイゼルなら…」

「陛下、ちょっとお願いがあるんです。」

決意を固めたアリシアは、カイゼルの執務室に足を踏み入れた。

「またか。」

カイゼルは書類に埋もれながらも、その冷静な声で反応した。

彼の無表情な顔は、いつも通りだ。

アリシアはその前に立ち、満面の笑顔で頼んだ。

「実は、帝国の名物スイーツを作りたくて。でも、材料が足りないんです。砂糖と果実のシロップを少しだけ分けてくれませんか?」

カイゼルは無言で彼女を見つめたが、目の前でこんなに真剣な顔でお願いされると、無視できるわけがない。

「帝国の名物を作るのに、材料が足りないとはな…」

アリシアは少し困ったように笑った。

「無理を言ってごめんなさい。でも、どうしても食べてみたくて!」

彼女の目が輝いているのが、カイゼルにははっきりとわかった。

しばらくの間、カイゼルは黙って考え込んだ。

アリシアはじっと待っていると、突然彼が立ち上がり、無言で手を差し出した。

「…ついてこい。」

「えっ、どこに?」

アリシアは驚きつつも、その手を取った。

「必要なものを取りに行く。」

カイゼルはいつもの冷徹な声で言ったが、その顔に浮かぶ微かな意図をアリシアは感じ取った。

二人が向かった先は、王宮の外にある大きな倉庫だった。

扉が開くと、そこには砂糖の大きな樽や、色とりどりの果実のシロップの瓶が整然と並べられている。

アリシアは目を見開き、言葉を失った。

「すごい…これは…全部、帝国のものですか?」

アリシアは感嘆の声を上げる。

「まあ、国民が必要な時に使うために保管してある。」

カイゼルはあっさりと答えたが、その言葉の裏には国民を思う深い責任感が垣間見えた。

アリシアは目を輝かせながら、「それじゃあ、少しだけお借りしても?」と聞くと、カイゼルは少しの間黙ってから頷いた。

「無駄にするなよ。」

その言葉に、アリシアは一瞬ドキリとしたが、すぐに笑顔を見せて「もちろんです!」と答えた。

少しだけ選んだ砂糖とシロップを持って、アリシアは厨房へ戻る。

しばらくして、見事に完成したスイーツがテーブルに並べられた。

ふわふわのスポンジケーキには、たっぷりのフルーツとクリームが載っており、見た目も味も完璧だ。

カイゼルがその場に現れると、アリシアは少し恥ずかしそうにケーキを差し出した。

「どうぞ、陛下。ぜひ食べてみてください!」

カイゼルは少し無表情のままケーキを見つめ、「…必要ならば。」と、さっさと一口食べる。

しかし、その表情は微かに変わったように見えた。

無表情だった顔が、ほんの少し柔らかくなり、彼の目が少し優しくなった気がする。

アリシアはその変化に気づき、心の中で小さく笑った。

「やっぱり、カイゼルって優しいんだな。」と思わず呟いた。

カイゼルはその言葉を聞き逃すまいとしたのか、軽く口を閉じ、無言で二度目の一口を食べた。

そして、今度は少しだけ頷いて言った。

「なかなかの出来だな。」

それは、アリシアにとって、何よりも嬉しい言葉だった。

彼の冷たい外見とは裏腹に、優しさを感じるその一瞬。アリシアの心は、少しだけ暖かくなった。
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