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(18)帝国の庭での出会い
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翌朝、アリシアは宮廷の庭園を歩きながら、少し恥ずかしさを感じていた。
昨晩の晩餐会がまだ心の中に残っており、特にあの無表情の皇帝、カイゼルとのやり取りが思い出されて顔が熱くなる。
彼が自分をどう思っているのか、未だにさっぱりわからない。
そう思いながらも、広大な庭園の美しさにすっかり心を奪われていた。
色とりどりの花々が風に揺れ、大理石の噴水がきらきらと光っている。
遠くの方では宮廷の鷹匠が鷹を飛ばしているのが見え、アリシアはその姿にも感嘆の声を漏らした。
「ふわぁ……広すぎて、どこがどこだか……」
彼女は呆れたように自分に言い聞かせるが、実際にはどこから歩き始めたのかすら覚えていない。
この庭園、確かに広すぎる。
迷子になって当然だろう、と心の中で少し笑っていた。
その時、背後から唐突に低い声が響いてきた。
「お前、迷ったのか?」
アリシアは思わずギクリとして振り返った。
そこには、無表情のカイゼルが立っていた。
彼がこんな場所にいるとは予想していなかったアリシアは、一瞬パニックになりながらも、慌てて言葉を口にした。
「い、いえ、迷ってなんかないです!ただ……ちょっと歩いていただけで!」
「迷ったと言え。」
「だから、迷ってないですって!」
カイゼルは少し首をかしげて、無表情を崩さずに彼女を見つめている。
けれど、その微妙な仕草に、どこか困惑しているような気配を感じたアリシアは、心の中で少しだけ勝った気がした。
「なら、なぜ同じ場所を三度も回っている。」
「……それは、道を覚えようとしてただけです!」
自信満々に答えたものの、実際には完全に迷子になっていたアリシア。
カイゼルは一瞬、目を細め――その目が笑みを含んでいるのかどうかはわからなかったが、何かしらの反応を示した。
その後、彼は近くのベンチを指差した。
「ここに座れ。」
「えっ?」
「休め。迷子は疲れる。」
カイゼルに言われるまま、アリシアは仕方なくベンチに腰を下ろした。
すると、カイゼルはどこからか小さな木箱を取り出し、彼女の前にそっと置いた。
その様子にアリシアは驚きの表情を浮かべた。
「これを食べろ。」
木箱の中には、素朴な焼き菓子が入っていた。
豪華な宮廷で目にするような、煌びやかな料理とは程遠いシンプルな菓子に、アリシアはしばし言葉を失った。
「これ……陛下が?」
「いや、宮廷の老女が焼いた。余が毎朝食べているものだ。」
「陛下って、こんな地味なものを食べてるんですか?」
驚くアリシアに、カイゼルはいつものように淡々と答えた。
「豪華な料理は好きではない。味が複雑すぎる。」
「へえ……意外です。」
アリシアは一つ、菓子を口に運んだ。
その素朴な甘さとほんのり香ばしさが広がり、思わず懐かしい気持ちになった。
こんな素朴な味が、どこか心を温かくさせる。
「美味しい……!」
「そうだろう。」
カイゼルの表情に少し誇らしげなものを見たアリシアは、思わず笑みを浮かべてしまった。
こんな無表情な彼でも、こうしてほんの少しだけ嬉しそうに見えると、なんだか自分まで嬉しくなってしまう。
「陛下がこういうお茶目なところを見せるなんて、誰も信じませんよ。」
「余はお茶目ではない。」
「いえ、十分お茶目です!」
アリシアが軽口を叩くと、カイゼルは無表情なまま少しだけ眉をひそめたが、それでもどこかとんでもなく微妙な変化があった。
もしかしたら、彼が本当に無表情だと思っているのは自分だけかもしれない。彼の中に、こんな温かさが隠れていたなんて、とアリシアは思わず胸が高鳴る。
「……でも、こんな風に普通に話せるのも、なんだか新鮮ですね。」
アリシアは小さな声で言って、カイゼルをちらりと見る。
その視線を感じたカイゼルは、少しだけ肩をすくめるような仕草を見せた。
「普通に話す?余は最初から普通に話している。」
「それはそうなんですけどね…」
アリシアはくすっと笑いながら、再びカイゼルの顔を見た。
無表情の中にも、ほんのわずかな柔らかさを感じる自分が不思議だ。
もしかしたら、この庭園のように、彼の心にもまだ知られていない美しさが隠れているのかもしれない。
昨晩の晩餐会がまだ心の中に残っており、特にあの無表情の皇帝、カイゼルとのやり取りが思い出されて顔が熱くなる。
彼が自分をどう思っているのか、未だにさっぱりわからない。
そう思いながらも、広大な庭園の美しさにすっかり心を奪われていた。
色とりどりの花々が風に揺れ、大理石の噴水がきらきらと光っている。
遠くの方では宮廷の鷹匠が鷹を飛ばしているのが見え、アリシアはその姿にも感嘆の声を漏らした。
「ふわぁ……広すぎて、どこがどこだか……」
彼女は呆れたように自分に言い聞かせるが、実際にはどこから歩き始めたのかすら覚えていない。
この庭園、確かに広すぎる。
迷子になって当然だろう、と心の中で少し笑っていた。
その時、背後から唐突に低い声が響いてきた。
「お前、迷ったのか?」
アリシアは思わずギクリとして振り返った。
そこには、無表情のカイゼルが立っていた。
彼がこんな場所にいるとは予想していなかったアリシアは、一瞬パニックになりながらも、慌てて言葉を口にした。
「い、いえ、迷ってなんかないです!ただ……ちょっと歩いていただけで!」
「迷ったと言え。」
「だから、迷ってないですって!」
カイゼルは少し首をかしげて、無表情を崩さずに彼女を見つめている。
けれど、その微妙な仕草に、どこか困惑しているような気配を感じたアリシアは、心の中で少しだけ勝った気がした。
「なら、なぜ同じ場所を三度も回っている。」
「……それは、道を覚えようとしてただけです!」
自信満々に答えたものの、実際には完全に迷子になっていたアリシア。
カイゼルは一瞬、目を細め――その目が笑みを含んでいるのかどうかはわからなかったが、何かしらの反応を示した。
その後、彼は近くのベンチを指差した。
「ここに座れ。」
「えっ?」
「休め。迷子は疲れる。」
カイゼルに言われるまま、アリシアは仕方なくベンチに腰を下ろした。
すると、カイゼルはどこからか小さな木箱を取り出し、彼女の前にそっと置いた。
その様子にアリシアは驚きの表情を浮かべた。
「これを食べろ。」
木箱の中には、素朴な焼き菓子が入っていた。
豪華な宮廷で目にするような、煌びやかな料理とは程遠いシンプルな菓子に、アリシアはしばし言葉を失った。
「これ……陛下が?」
「いや、宮廷の老女が焼いた。余が毎朝食べているものだ。」
「陛下って、こんな地味なものを食べてるんですか?」
驚くアリシアに、カイゼルはいつものように淡々と答えた。
「豪華な料理は好きではない。味が複雑すぎる。」
「へえ……意外です。」
アリシアは一つ、菓子を口に運んだ。
その素朴な甘さとほんのり香ばしさが広がり、思わず懐かしい気持ちになった。
こんな素朴な味が、どこか心を温かくさせる。
「美味しい……!」
「そうだろう。」
カイゼルの表情に少し誇らしげなものを見たアリシアは、思わず笑みを浮かべてしまった。
こんな無表情な彼でも、こうしてほんの少しだけ嬉しそうに見えると、なんだか自分まで嬉しくなってしまう。
「陛下がこういうお茶目なところを見せるなんて、誰も信じませんよ。」
「余はお茶目ではない。」
「いえ、十分お茶目です!」
アリシアが軽口を叩くと、カイゼルは無表情なまま少しだけ眉をひそめたが、それでもどこかとんでもなく微妙な変化があった。
もしかしたら、彼が本当に無表情だと思っているのは自分だけかもしれない。彼の中に、こんな温かさが隠れていたなんて、とアリシアは思わず胸が高鳴る。
「……でも、こんな風に普通に話せるのも、なんだか新鮮ですね。」
アリシアは小さな声で言って、カイゼルをちらりと見る。
その視線を感じたカイゼルは、少しだけ肩をすくめるような仕草を見せた。
「普通に話す?余は最初から普通に話している。」
「それはそうなんですけどね…」
アリシアはくすっと笑いながら、再びカイゼルの顔を見た。
無表情の中にも、ほんのわずかな柔らかさを感じる自分が不思議だ。
もしかしたら、この庭園のように、彼の心にもまだ知られていない美しさが隠れているのかもしれない。
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