【完結】孤高の皇帝は冷酷なはずなのに、王妃には甘過ぎです。

朝日みらい

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(28)「意外な優しさ」

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晩餐会の後、アリシアはカイゼルに見送られながら、大広間を後にした。

その背後で、カイゼルの無表情な顔が見え、なんだか不安定な気持ちが胸に広がった。

しかし、ふと振り返ると、さっきのやりとりの中で少し温かい気持ちも芽生えていたような気がする。

冷徹に見えた彼の言葉の裏には、確かに何か思いが隠れているような、そんな気がした。

「…あの人、本当にわからない。」

アリシアは一人呟きながら、自分の部屋へと向かっていた。

廊下を歩きながら、彼の無表情な顔が頭をよぎる。

それが本当に彼の本当の姿なの?

冷酷無比な皇帝として名を馳せているカイゼルが、あんなにも心配してくれるなんて…信じがたい。

でも、まさか、冷徹な顔の下で気を使っているなんて、そんなタイプなのだろうか? 

「でも、冷徹な顔して、実は気を使ってるって、そういうタイプ?」

アリシアは自分の部屋に戻ると、ため息をつきながらベッドに腰掛け、思いを巡らせる。

どうしてこんなにカイゼルのことが気になるんだろう?

無愛想で素っ気ない言葉ばかりなのに、なぜか彼のことが頭から離れない。

その時、部屋のドアが軽くノックされた。

アリシアは一瞬驚き、ドアを開けると、そこには予想外にもカイゼルが立っていた。

「えっ!?何で?」

アリシアは思わず声を上げた。

「晩餐会の後に、お前が体調を崩さないか心配だった。」

カイゼルが真顔で答える。

その言葉を聞いた瞬間、アリシアは一瞬、言葉を失った。

「体調?」 

「うむ。余は、部屋に戻った後、すぐにお前が倒れていたらどうするか考えていた。」

冷徹に、そして少し真面目な顔で言うカイゼル。

その真剣な言葉に、アリシアは驚きすぎて、口を開けたまま固まっていた。

「えぇ…だって、私は別にそんなに食べ過ぎたりしてないし、大丈夫よ。」

少し戸惑いながら、アリシアが答えると、

「そうは言っても、余が見ている限り、お前は晩餐会で少し食べ過ぎたように見えた。」

カイゼルがきっぱり言い切った。その真面目さに、アリシアは思わず笑いそうになった。

「そんな、カイゼル様がそこまで心配してくれるなんて思ってなかったわよ。」

少しからかうように言ってみると、カイゼルは無表情で一歩も引かない。

「余は、冷徹な皇帝だと思っていたか?」と、冷たい視線を向けてきた。 

その言葉を聞いて、アリシアは軽く笑った。

「うーん、冷徹というよりも、ちょっと…優しさが意外にあるって気づき始めたかも。」

その瞬間、カイゼルは少しだけ目を見開いたが、すぐに表情を戻し、少し照れくさそうに言った。

「余が優しさを見せる理由は、お前に命令するためだ。」

「命令って、また面倒くさいこと言うわね。」

アリシアは肩をすくめながら、あきれたように言うと、

「余は、面倒なことを言いたくはない。」と、カイゼルが答える。

「それじゃあ、どうしてわざわざここに?」

アリシアが不思議そうに尋ねると、カイゼルは眉を寄せながら、少し考えて答えた。

「だから、お前が倒れたら面倒なことが増えるからだ。」

その言葉に、アリシアは驚きながらも、少しだけ心が温かくなるのを感じた。

「…それって、もしかして本当に心配してくれてるってこと?」 

「余は心配していない。」

カイゼルは冷徹に言い切った。

しかし、アリシアはその言葉の裏に、ほんの少しの感情を感じ取った。

「じゃあ、体調のことだけは心配してくれてるってことかしら?」

「…そうだ。」 

アリシアは少し笑って、カイゼルの前に座る。

「ありがとう。心配してくれて。」

「余はお前の健康管理役だ。」

カイゼルが真面目に答える。

「えっ、健康管理役?それって、結局命令の一環ってこと?」

アリシアがからかうと、

「そうだ。」と、カイゼルは無表情で頷く。

「あはは、また面倒くさい話に戻ったわね。」

アリシアは笑いながら、その後少し黙っていた。

カイゼルが心配してくれるなんて、正直驚いたし、少し嬉しかったけれど、きっと彼はそれを認めないだろうな、と感じていた。

「まあ、でも、せっかく心配してくれたから、ありがとうね。」

アリシアは素直に感謝の気持ちを伝えた。

「余は面倒なことをするのは嫌いだ。」 

その言葉に、アリシアはまた笑い、彼の手を軽く握った。

「でも、ちょっとだけ嬉しかったわ。」

その瞬間、カイゼルは何も言わず、ただアリシアをじっと見つめていた。

目と目が合ったその瞬間、アリシアは何だかドキドキしてきた。

「冷徹だと思っていた人が、実はちょっと優しかったりして、なんか…ドキドキしちゃうじゃない。」

内心でそう思いながら、アリシアは静かな部屋の中で、ほんのり温かい空気を感じていた。
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