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2章
5話
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「うーん……ちょっと疲れたかな……コーヒー飲も」
永瀬の家に用意された自室。休日であるにもかかわらず熱心に論文を読みふけっていたが、読みかけのそれをぱさりとブナの木で作られたパソコンテーブルに置いた。
高弥の手術から数日が過ぎたが、手術は大成功で高弥には後遺症が見られず若い体は日に日に回復を見せているようでユキを安心させた。
ユキは座り心地のよい椅子から立ち上がり、かちゃりと自室の扉を開けて廊下にでると、ユキの気持ちをまるで先回りしたかのようにコーヒーの芳ばしい香りが漂っていた。
今日は日曜日だから通いの家政婦である佳代は来ない。
と、なるとキッチンにいるのは……
どうしようかと迷いながらも、香りの誘惑に勝てず
ぱたり、ぱたりとスリッパの音を鳴らしながら、
そろりとキッチンを覗くと、すらりとモデルのように手足が長いシルエット。
「ようやく休憩にするのか?随分頑張るんだな。朝早くからあの論文読んでいたじゃないか」
「僕は他の医師とは違ってちゃんと読み込まないと理解できないんです……ところで珈琲、豆から挽いたんですか?」
アイランドタイプのキッチンの作業台に出されていたミルを見て軽く目を見開いた。
本格的なコーヒーをいつも佳代が淹れてくれるのでコーヒー好きなのだとは思っていたが
「ああ、珈琲と酒は趣味の一つだな。普段は佳代さんが淹れてくれるが休日に豆を挽くのは俺の仕事なんだ。挽きたての豆で淹れたものは格別だ。飲むかい?」
尋ねられて、こくりとユキは頷く。
「先生、お昼は?」
「今何食べようか考えてたところだ。」
「珈琲ならパンが合いますね。昨日プレドールで買ってきたパンと適当にサラダ用意します」
「あぁ、そうだ。佳代さんが貰い物のスモークチキンとサーモンがあるから食べてしまうように言われてたな」
永瀬が冷蔵庫を覗いている間にトースターを温めてユキはパンを放り込んだ。
手早く用意する永瀬の指先を、ユキは横目で眺めながら昼食の仕度をした。
*****
「二人で用意したら、結構立派なランチになりましたね」
ランチの用意をしているときに映画は殆ど観たことがないというユキの話を聞いた永瀬は食事をしながら映画を見ようと提案してきた。
そのためダイニングにではなくリビングのソファの前のローテーブルに遅めのランチは並べられた。
ウッド製のボウルやトレーにこちらもウッド製のカトラリーが並べられる。
一人で暮らしてるくせに食器が好きなのか、色々なものがあり、目でも食事が楽しめるのだということをここで暮らして初めて知った。
「さて……観てみたいものはあるか?」
ユキのマンションのテレビの倍以上はある大型のテレビの横のアンティーク調の戸棚を開けるとずらりとブルーレイのタイトルが並んだ。
「わ……すごい……」
映画を殆ど見たことがないというユキはざっとタイトルに目を走らせて
「あ、これ……観てみたいです……」
タイトルを見て軽く目を細める。
「OK、これを観たことないなら俺もお勧めだ。男の子は絶対好きってやつだ」
そう言って笑うとすっ……とディスクを一つ手に取った。
「あの……4巻から観るんですか?1巻からじゃなくて」
ユキは小首を傾げて尋ねた。
「あぁ、これはエピソード4から観るんだよ。まぁおすすめの見方は色々あるんだがな……とりあえずエピソード6まで観たら1から3を見るのが無難だな……どうしてかは観ながら教えてあげよう。」
大きな手のひらが優しくユキの頭を撫でた。
そうして、珈琲が冷めないうちにと食事をしながら二人で映画を見た。
アメリカに渡る前に映画で英語を鍛えたという永瀬と話しながら観る映画はとても面白くて……一本目が見終わる頃にはユキの目は少年のようにキラキラ輝いていた。
「先生、これ続きは……?」
そんなユキを見てくっくっと永瀬は笑うと
「いいよ、観ようか。俺も久しぶりだったから楽しめた。」
永瀬がディスクを交換するために立ち上がると
ユキもランチが終わって空になった皿を持って立ち上がった。
「これ下げて珈琲おかわり持ってきますね」
二本目の映画を観る準備を整った頃には、いつの間にか広いソファなのに、ぴったりとくっついた状態で二人は座っていたが、続きが気になるユキはそのことにも気付かない。
そして……二本目の映画も佳境に差し掛かり画面いっぱいに、王女と反乱軍の英雄とのキスシーンが映し出され、思わずユキはふぅと溜め息を漏らした。
「……ん…っ……」
あ、と思ったときにはくちびるが重ねられていた。
何度も何度もユキの柔らかなくちびるの感触を味わうように押し当てられた。
長い指先が耳の後ろから髪の中を潜り、とても愛おしいというように何度も撫でて愛撫する。
ちゅ……と音を立てて合わせるだけの、キス。
頭の芯がぼやけるまで繰り返されて、そっとくちびるを離すと鼻先が触れあうような近さで瞳を覗き込まれる。
あの、長い指先が……優しくユキに触れている。
漆黒の永瀬の瞳の中に恥ずかしいほどとろりと惚けた瞳のユキが映り、僕は何て顔をしているのだろうと思うと同時に今度は深く、深くくちびるを重ねられた。
濡れた温かい舌がゆっくりと咥内をくすぐる。
発情のままに交わした火傷しそうなほど熱くて激しい全てを奪うようなそれではなくて、ショコラをゆっくりと口の中で溶かして味わうような…
躯がふらりと芯を失って永瀬の逞しい背中に思わず縋るように腕を回した。ああ、手術中のあの逞しく頼りがいのあるあの、背中がこの手に触れている。そう思うと心臓の音が永瀬に聞こえてしまうのではないかと思うほど脈打った。
永瀬の長い指先が髪を撫でて、耳を撫でる。
「ん、ふ…………ぅ」
柔らかく舌を絡められて……
あ……あ……とける………
ぐずぐずとゆっくり蕩けていきそうで、甘えたような吐息が漏れる。
こんなの、恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない
温かい手のひらがTシャツの裾から潜り込んできて、
ユキの肌の柔らかいところを味わうように撫でていく。
発情期は終わって、こんなこと、こんなこと……する理由なんてない。だのに。あのときの奪うような激しさとは全く違う優しい触れられるだけでとろけそうな手を、指を、くちびるを、嫌だなんて言えない。
「ユキ……」
キスの合間に、立っていたら腰がくだけてしまいそうな艶っぽい声で名を呼ばれる。
「ん、んん………」
胸の先に触れられてあまい衝撃が走るけれど、あまい声は全て永瀬の口の中に舐め取られた。
こんなの……こんなに優しくって温かくってあまったるいキス、知らない……
優しく、優しく胸の先をくすぐられるように触れられる。
そこがあまく、疼いて思わず腰が揺れた。
発情期は終わったのに……なんで……
発情期のような強烈な燃え盛る炎のような欲求じゃないけれど、ゆるゆると揺らめく優しいちいさな灯火のような熱が躯の奥に灯る。
舌がぬるり、と咥内から抜かれて、濡れたくちびるを舐められた
「あ……あ………」
恥ずかしいくらいあまい声。まるではちみつがとろりと溶けたような甘ったれた声。
気持ち、いい………
あのときはよく見えなかった永瀬の美貌がよく見える。
切なく眉間に皺を寄せているのがとても色っぽい。
ストイックな仕事中の表情をユキが乱しているのだと思うとたまらない。
永瀬の顔を見ているとじわり、とユキの瞳が濡れた──
溢れてほろりと零れると
「可愛いな、ユキは……」
ユキのくちびるを舐めながら永瀬が熱に侵されたように言う。
大きな手のひらが背筋を撫でて、それから柔らかい双丘を薄いルームウェアのパンツ越しにそっと揉まれる……
「ん………ん…………」
だめ、だめ────
今は発情期じゃないから抱かれる理由がない……
ない、のに
信じられないほど優しく、まるで宝物の包みを解くようにそっと身に付けているものを脱がされたものだから、嫌だというタイミングをユキは逸してしまった。
長い指先が下着にかかっても、抵抗するどころか脱がし易いように思わず腰を浮かしてしまう。
永瀬の指がするりとなめらかな双丘の狭間を探ると、
ぬるり、と指先が滑った。
「濡れてる……」
男の掠れた声が鼓膜に低く響いた。
濡れてしまったことがバレて思わずソファのクッションに顔を埋める。
「悪かった……揶揄したわけじゃない。発情期でないのに濡れてくれて嬉しかっただけだ……」
鼓膜が、溶けてしまいそうだ……
恥ずかしくてユキは顔をクッションに再び隠してしまうと、そっとクッションが取り上げられた。
優しくて、色っぽい表情をしている男の顔がユキを覗きこんでいた。
「何も恥ずかしくない。俺だってもう……」
こんなになってる……熱く固くなったものをぐっ……とすべらかな太ももに押し付けられた。
「ふ………っあ……」
ぬるぬると狭間を指でなぞり上げられる。
このまま焦らされるのかと、思ったが焦らすことなくすんなりと長い指が胎内に埋められた。
「少し、きつくなってる」
永瀬は呟くように言うと、少しも違えることなく一度でユキの隘路にある感じるポイントをそっと押した。
「あっ……ん……」
同時に可愛らしいピンク色の屹立に指を絡める。
年幼い少年のようなそこはユキにとってはコンプレックスであったが、永瀬は可愛いそこを思いの外気に入っていた。
中と同じように透明の液を流して気持ちいいのだということを切実に永瀬に訴えかけるそこ。
胎内を擦ってやりながら長くて骨張った指を絡めてやると、悲鳴のような声が上がった。
「永瀬……先生ぇっ……も……離して………あっ……」
「我慢せずにイって構わないよ……」
「あっ……あっ……」
「気持ちいいんだろう?ユキ。気持ちよくなってるきみを、見たいんだ……」
ゆっくりと屹立とナカを擦られて、くちゅり、くちゅりと濡れた音が響く。
「あ……だめ……も、う………んんっ」
とぷり、と屹立から透明に近いが僅かに白く濁った薄いオメガ特有の精液が零れた。
どこまでも永瀬の好みにぴったりな羞恥の入り交じった可愛らしい声が永瀬の耳も愉しませる。
「は……、は………」
汗に濡れた前髪を掻き分けてやりながら、荒く乱れた吐息を漏らすくちびるにくちづけた。
達したばかりのとろりと溶けた咥内は殊更あまく、永瀬を夢中にさせた。
「ん……、ふ………」
可愛い声が漏れる。イったばかりの躯を宥めてやるようにその躯を擦ると、シルクのような触り心地の肌に永瀬の方がとろけそうになる。
先程より色づいた胸の先に誘われるように吸い付くと
「ひゃ………っ……」
一度イって敏感になりすぎたそこを触れられユキは驚いたような声を上げたが、再びももいろの屹立は頭をゆったりともたげ始めているのを見て永瀬のくちびるに深い笑みが刻まれる。
砂糖菓子を優しく舐めとかすように乳首に舌を這わせると、深く埋めたままの永瀬の骨張った指をきゅっと切なく締め付けた。
可愛いな……吐息のような声でささやかれ、またキスをされて、それから……
ちゅぷん……と濡れた音を立てて指がそっと引き抜かれると、代わりに熱く猛ったものをあてがわれた。
太くてつるりとした先端が潜り込んできて柔らかくくちびるを吸われた。
ぐぐっ……っと永瀬のものが入り込んでくる。
くちゅくちゅと舌を吸われながら、ナカも少しずつ割り開かれる。
発情期のときの激情に任せて貫かれたのとは違い、ゆっくりゆっくり押し入ってくるとリアルに永瀬のカタチを教え込まれる。
永瀬は思いっきり腰を動かして快楽を追い求めたい気持ちを我慢しながら優しく割り開いているため、ぽたり、ぽたりと汗が額から流れて落ちた。
今日はゆったりと流れた時間の中でとにかく優しく抱いてやりたかった。
「あ……あ……」
お腹の奥底からあまい快楽がじわじわと躯を侵す。
おかしい。
発情期じゃないからそこに子宮はないはずなのに、
まるでそこにあるみたいに、きゅうきゅうと永瀬を欲しがって疼く。
「ん……っ……あ、ああっ………」
(欲しい、欲しい……発情期じゃ、ないのに……欲しくて気が、狂いそう……)
ひく、ひくとナカが痙攣して、永瀬が欲しいと、彼う受け入れ易くするための体液が溢れる。
「ユキ……そんなに、ひくひく締め付けるんじゃ、ない……っ」
「できな………っ……ん……永瀬、せんせ……」
優しく、優しく、奥をゆっくりと突くとぐちゅぐちゅと濡れた音が漏れた。
「あ……あ……きもち、いい───」
「あぁ、俺もだ……っ……きみのナカは……気持ちいい……」
大きな手のひらが、いい子だ、と言うように躯を撫でると、泣きたくなるようなあたたかい気持ちに苛まれて、気持ちいいから出るのかなんなのかわからない涙が溢れて落ちてひくひくとしゃくり上げながら混ざりあった。
滅茶苦茶に抱かれて気がおかしくなるほどの発情期の激しい快楽を覚え込まされて
今度は心も躯もとろとろになるほど優しく優しく抱かれた。
こんなの、こんなの………おかしくなってしまう。
空っぽで独りぼっちだった心も躯も全部変えられてしまって独りではもう立つことさえもできなくなってしまう……
永瀬の家に用意された自室。休日であるにもかかわらず熱心に論文を読みふけっていたが、読みかけのそれをぱさりとブナの木で作られたパソコンテーブルに置いた。
高弥の手術から数日が過ぎたが、手術は大成功で高弥には後遺症が見られず若い体は日に日に回復を見せているようでユキを安心させた。
ユキは座り心地のよい椅子から立ち上がり、かちゃりと自室の扉を開けて廊下にでると、ユキの気持ちをまるで先回りしたかのようにコーヒーの芳ばしい香りが漂っていた。
今日は日曜日だから通いの家政婦である佳代は来ない。
と、なるとキッチンにいるのは……
どうしようかと迷いながらも、香りの誘惑に勝てず
ぱたり、ぱたりとスリッパの音を鳴らしながら、
そろりとキッチンを覗くと、すらりとモデルのように手足が長いシルエット。
「ようやく休憩にするのか?随分頑張るんだな。朝早くからあの論文読んでいたじゃないか」
「僕は他の医師とは違ってちゃんと読み込まないと理解できないんです……ところで珈琲、豆から挽いたんですか?」
アイランドタイプのキッチンの作業台に出されていたミルを見て軽く目を見開いた。
本格的なコーヒーをいつも佳代が淹れてくれるのでコーヒー好きなのだとは思っていたが
「ああ、珈琲と酒は趣味の一つだな。普段は佳代さんが淹れてくれるが休日に豆を挽くのは俺の仕事なんだ。挽きたての豆で淹れたものは格別だ。飲むかい?」
尋ねられて、こくりとユキは頷く。
「先生、お昼は?」
「今何食べようか考えてたところだ。」
「珈琲ならパンが合いますね。昨日プレドールで買ってきたパンと適当にサラダ用意します」
「あぁ、そうだ。佳代さんが貰い物のスモークチキンとサーモンがあるから食べてしまうように言われてたな」
永瀬が冷蔵庫を覗いている間にトースターを温めてユキはパンを放り込んだ。
手早く用意する永瀬の指先を、ユキは横目で眺めながら昼食の仕度をした。
*****
「二人で用意したら、結構立派なランチになりましたね」
ランチの用意をしているときに映画は殆ど観たことがないというユキの話を聞いた永瀬は食事をしながら映画を見ようと提案してきた。
そのためダイニングにではなくリビングのソファの前のローテーブルに遅めのランチは並べられた。
ウッド製のボウルやトレーにこちらもウッド製のカトラリーが並べられる。
一人で暮らしてるくせに食器が好きなのか、色々なものがあり、目でも食事が楽しめるのだということをここで暮らして初めて知った。
「さて……観てみたいものはあるか?」
ユキのマンションのテレビの倍以上はある大型のテレビの横のアンティーク調の戸棚を開けるとずらりとブルーレイのタイトルが並んだ。
「わ……すごい……」
映画を殆ど見たことがないというユキはざっとタイトルに目を走らせて
「あ、これ……観てみたいです……」
タイトルを見て軽く目を細める。
「OK、これを観たことないなら俺もお勧めだ。男の子は絶対好きってやつだ」
そう言って笑うとすっ……とディスクを一つ手に取った。
「あの……4巻から観るんですか?1巻からじゃなくて」
ユキは小首を傾げて尋ねた。
「あぁ、これはエピソード4から観るんだよ。まぁおすすめの見方は色々あるんだがな……とりあえずエピソード6まで観たら1から3を見るのが無難だな……どうしてかは観ながら教えてあげよう。」
大きな手のひらが優しくユキの頭を撫でた。
そうして、珈琲が冷めないうちにと食事をしながら二人で映画を見た。
アメリカに渡る前に映画で英語を鍛えたという永瀬と話しながら観る映画はとても面白くて……一本目が見終わる頃にはユキの目は少年のようにキラキラ輝いていた。
「先生、これ続きは……?」
そんなユキを見てくっくっと永瀬は笑うと
「いいよ、観ようか。俺も久しぶりだったから楽しめた。」
永瀬がディスクを交換するために立ち上がると
ユキもランチが終わって空になった皿を持って立ち上がった。
「これ下げて珈琲おかわり持ってきますね」
二本目の映画を観る準備を整った頃には、いつの間にか広いソファなのに、ぴったりとくっついた状態で二人は座っていたが、続きが気になるユキはそのことにも気付かない。
そして……二本目の映画も佳境に差し掛かり画面いっぱいに、王女と反乱軍の英雄とのキスシーンが映し出され、思わずユキはふぅと溜め息を漏らした。
「……ん…っ……」
あ、と思ったときにはくちびるが重ねられていた。
何度も何度もユキの柔らかなくちびるの感触を味わうように押し当てられた。
長い指先が耳の後ろから髪の中を潜り、とても愛おしいというように何度も撫でて愛撫する。
ちゅ……と音を立てて合わせるだけの、キス。
頭の芯がぼやけるまで繰り返されて、そっとくちびるを離すと鼻先が触れあうような近さで瞳を覗き込まれる。
あの、長い指先が……優しくユキに触れている。
漆黒の永瀬の瞳の中に恥ずかしいほどとろりと惚けた瞳のユキが映り、僕は何て顔をしているのだろうと思うと同時に今度は深く、深くくちびるを重ねられた。
濡れた温かい舌がゆっくりと咥内をくすぐる。
発情のままに交わした火傷しそうなほど熱くて激しい全てを奪うようなそれではなくて、ショコラをゆっくりと口の中で溶かして味わうような…
躯がふらりと芯を失って永瀬の逞しい背中に思わず縋るように腕を回した。ああ、手術中のあの逞しく頼りがいのあるあの、背中がこの手に触れている。そう思うと心臓の音が永瀬に聞こえてしまうのではないかと思うほど脈打った。
永瀬の長い指先が髪を撫でて、耳を撫でる。
「ん、ふ…………ぅ」
柔らかく舌を絡められて……
あ……あ……とける………
ぐずぐずとゆっくり蕩けていきそうで、甘えたような吐息が漏れる。
こんなの、恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない
温かい手のひらがTシャツの裾から潜り込んできて、
ユキの肌の柔らかいところを味わうように撫でていく。
発情期は終わって、こんなこと、こんなこと……する理由なんてない。だのに。あのときの奪うような激しさとは全く違う優しい触れられるだけでとろけそうな手を、指を、くちびるを、嫌だなんて言えない。
「ユキ……」
キスの合間に、立っていたら腰がくだけてしまいそうな艶っぽい声で名を呼ばれる。
「ん、んん………」
胸の先に触れられてあまい衝撃が走るけれど、あまい声は全て永瀬の口の中に舐め取られた。
こんなの……こんなに優しくって温かくってあまったるいキス、知らない……
優しく、優しく胸の先をくすぐられるように触れられる。
そこがあまく、疼いて思わず腰が揺れた。
発情期は終わったのに……なんで……
発情期のような強烈な燃え盛る炎のような欲求じゃないけれど、ゆるゆると揺らめく優しいちいさな灯火のような熱が躯の奥に灯る。
舌がぬるり、と咥内から抜かれて、濡れたくちびるを舐められた
「あ……あ………」
恥ずかしいくらいあまい声。まるではちみつがとろりと溶けたような甘ったれた声。
気持ち、いい………
あのときはよく見えなかった永瀬の美貌がよく見える。
切なく眉間に皺を寄せているのがとても色っぽい。
ストイックな仕事中の表情をユキが乱しているのだと思うとたまらない。
永瀬の顔を見ているとじわり、とユキの瞳が濡れた──
溢れてほろりと零れると
「可愛いな、ユキは……」
ユキのくちびるを舐めながら永瀬が熱に侵されたように言う。
大きな手のひらが背筋を撫でて、それから柔らかい双丘を薄いルームウェアのパンツ越しにそっと揉まれる……
「ん………ん…………」
だめ、だめ────
今は発情期じゃないから抱かれる理由がない……
ない、のに
信じられないほど優しく、まるで宝物の包みを解くようにそっと身に付けているものを脱がされたものだから、嫌だというタイミングをユキは逸してしまった。
長い指先が下着にかかっても、抵抗するどころか脱がし易いように思わず腰を浮かしてしまう。
永瀬の指がするりとなめらかな双丘の狭間を探ると、
ぬるり、と指先が滑った。
「濡れてる……」
男の掠れた声が鼓膜に低く響いた。
濡れてしまったことがバレて思わずソファのクッションに顔を埋める。
「悪かった……揶揄したわけじゃない。発情期でないのに濡れてくれて嬉しかっただけだ……」
鼓膜が、溶けてしまいそうだ……
恥ずかしくてユキは顔をクッションに再び隠してしまうと、そっとクッションが取り上げられた。
優しくて、色っぽい表情をしている男の顔がユキを覗きこんでいた。
「何も恥ずかしくない。俺だってもう……」
こんなになってる……熱く固くなったものをぐっ……とすべらかな太ももに押し付けられた。
「ふ………っあ……」
ぬるぬると狭間を指でなぞり上げられる。
このまま焦らされるのかと、思ったが焦らすことなくすんなりと長い指が胎内に埋められた。
「少し、きつくなってる」
永瀬は呟くように言うと、少しも違えることなく一度でユキの隘路にある感じるポイントをそっと押した。
「あっ……ん……」
同時に可愛らしいピンク色の屹立に指を絡める。
年幼い少年のようなそこはユキにとってはコンプレックスであったが、永瀬は可愛いそこを思いの外気に入っていた。
中と同じように透明の液を流して気持ちいいのだということを切実に永瀬に訴えかけるそこ。
胎内を擦ってやりながら長くて骨張った指を絡めてやると、悲鳴のような声が上がった。
「永瀬……先生ぇっ……も……離して………あっ……」
「我慢せずにイって構わないよ……」
「あっ……あっ……」
「気持ちいいんだろう?ユキ。気持ちよくなってるきみを、見たいんだ……」
ゆっくりと屹立とナカを擦られて、くちゅり、くちゅりと濡れた音が響く。
「あ……だめ……も、う………んんっ」
とぷり、と屹立から透明に近いが僅かに白く濁った薄いオメガ特有の精液が零れた。
どこまでも永瀬の好みにぴったりな羞恥の入り交じった可愛らしい声が永瀬の耳も愉しませる。
「は……、は………」
汗に濡れた前髪を掻き分けてやりながら、荒く乱れた吐息を漏らすくちびるにくちづけた。
達したばかりのとろりと溶けた咥内は殊更あまく、永瀬を夢中にさせた。
「ん……、ふ………」
可愛い声が漏れる。イったばかりの躯を宥めてやるようにその躯を擦ると、シルクのような触り心地の肌に永瀬の方がとろけそうになる。
先程より色づいた胸の先に誘われるように吸い付くと
「ひゃ………っ……」
一度イって敏感になりすぎたそこを触れられユキは驚いたような声を上げたが、再びももいろの屹立は頭をゆったりともたげ始めているのを見て永瀬のくちびるに深い笑みが刻まれる。
砂糖菓子を優しく舐めとかすように乳首に舌を這わせると、深く埋めたままの永瀬の骨張った指をきゅっと切なく締め付けた。
可愛いな……吐息のような声でささやかれ、またキスをされて、それから……
ちゅぷん……と濡れた音を立てて指がそっと引き抜かれると、代わりに熱く猛ったものをあてがわれた。
太くてつるりとした先端が潜り込んできて柔らかくくちびるを吸われた。
ぐぐっ……っと永瀬のものが入り込んでくる。
くちゅくちゅと舌を吸われながら、ナカも少しずつ割り開かれる。
発情期のときの激情に任せて貫かれたのとは違い、ゆっくりゆっくり押し入ってくるとリアルに永瀬のカタチを教え込まれる。
永瀬は思いっきり腰を動かして快楽を追い求めたい気持ちを我慢しながら優しく割り開いているため、ぽたり、ぽたりと汗が額から流れて落ちた。
今日はゆったりと流れた時間の中でとにかく優しく抱いてやりたかった。
「あ……あ……」
お腹の奥底からあまい快楽がじわじわと躯を侵す。
おかしい。
発情期じゃないからそこに子宮はないはずなのに、
まるでそこにあるみたいに、きゅうきゅうと永瀬を欲しがって疼く。
「ん……っ……あ、ああっ………」
(欲しい、欲しい……発情期じゃ、ないのに……欲しくて気が、狂いそう……)
ひく、ひくとナカが痙攣して、永瀬が欲しいと、彼う受け入れ易くするための体液が溢れる。
「ユキ……そんなに、ひくひく締め付けるんじゃ、ない……っ」
「できな………っ……ん……永瀬、せんせ……」
優しく、優しく、奥をゆっくりと突くとぐちゅぐちゅと濡れた音が漏れた。
「あ……あ……きもち、いい───」
「あぁ、俺もだ……っ……きみのナカは……気持ちいい……」
大きな手のひらが、いい子だ、と言うように躯を撫でると、泣きたくなるようなあたたかい気持ちに苛まれて、気持ちいいから出るのかなんなのかわからない涙が溢れて落ちてひくひくとしゃくり上げながら混ざりあった。
滅茶苦茶に抱かれて気がおかしくなるほどの発情期の激しい快楽を覚え込まされて
今度は心も躯もとろとろになるほど優しく優しく抱かれた。
こんなの、こんなの………おかしくなってしまう。
空っぽで独りぼっちだった心も躯も全部変えられてしまって独りではもう立つことさえもできなくなってしまう……
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それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/01/23 19:00 アルファポリス版限定SS公開予定
累計で6300♡いいねと累計ポイント285000突破の御礼SSになります
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
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