お前なんか娘じゃないと追い出しておいて、才能があるから戻って来いと言われましても

木山楽斗

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2.姉として背中を見せて

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「どうして姉上が出て行かなければならないのですか?」
「そうです。お父様もお母様も間違っています」

 大方の予想通り、弟のルオードと妹のレネシアは私の追放に対して不満をあらわにした。
 支度を整えて出て行こうとしている最中やって来た二人は、私に半ば縋りついている。姉として、二人からの愛情を感じられて少し気分がいい。いや、そんな風に呑気なことを考えている場合ではないか。

「二人とも落ち着きなさい。別にこれが今生の別れという訳ではないのよ」
「姉上はどうしてそんなに冷静でいられるのですか? これは一大事ですよ」
「焦った所で、あの二人の決定が覆る訳ではないもの。そもそも私は、貴族の地位になんてそこまでこだわっていないし……」
「でも、私達と離れ離れになってしまいます」
「レネシア、離れていても心は繋がっているものよ。私達の絆は、そう簡単に途切れるものではないの。それにあなたにはルオードが、ルオードにはあなたがいるじゃない」

 二人との別れは私にとっても悲しいものだが、嘆いてはいられない。
 私は姉として、せめて二人に貴族としての誇り高き姿を見せておきたかった。それが自身の最後の務めのように思えたのだ。

「ルオードお兄様がいて、アゼリアお姉様がいる。それが私の望む世界です」
「別れというのは、いつか必ずやってくるものよ。それが少し早まっただけのこと……ルオード、あなたはこれからレネシアを、そしてラウファス伯爵家を守っていなければならない。厳しい道のりになることでしょう」

 レネシアに言葉をかけてから、私はルオードの方を向いた。
 彼は何れ、このラウファス伯爵家を継ぐことになる。今代はもう駄目ではあるが、次代の当主であるルオードには、なんとか立派な伯爵になってもらいたいものだ。

「姉上、僕には自信がありません。父上や母上から学べることなんてありません。姉上という目標がなければ……」
「それは私だって同じだったことよ。私にできたのだからあなたにもできるわ。気高き心を忘れなければ、立派な貴族になれる」
「しかし……」
「何かあったら、そうね……ゴートン侯爵を頼りにしなさい。あの方は私達のことを気に掛けてくださっているわ」

 ルオードの道は、険しいものになるだろう。何せ彼の両親はあれだ。凡そまともな貴族ではない。
 しかしそれでも、希望はあるように思えた。私の言葉を聞く彼の目には火がついている。口では自信がないと言っているが、既に決意の炎が点火しているようだ。
 これなら心配はいらないのかもしれない。ただそれでも、誰かの支援は必要だ。いざという時になんとかできるように、私はもう少しだけ働くことにした。
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