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40.驚くべき訪問者
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エルシエット伯爵家が領地を売った。そんな知らせを受けてから程なくして、とある人物が私の元を訪ねてきた。
その人物は、不愉快そうに私を見ている。数年振りの再会ではあるが、彼女はそんなに変わっていないようだ。
「それで、何をしに来たのかしら? イフェリア、あなたが私の元を訪ねて来る用なんてなかったと思うけれど?」
「……わかっているでしょう? お姉様、エルシエット伯爵家はあなたのせいで、落ちぶれてしまったんですよ?」
「私のせいということはないでしょう? 既に私は、エルシエット伯爵家とは無関係なのだから」
目の前にいるイフェリアに、私は淡々と言葉を放つ。
彼女が訪ねてきたと聞いた時は驚いた。まさか、こちらまで訪ねて来るとは思っていなかったからである。
そんな彼女が、どうしてここに来たのか。その理由は気になる所だった。しかしその理由は、どうやら私を責めに来たという理由であるらしい。
それに私は少し呆れてしまう。まさか、そこまでして私を責めたいとは驚きである。
「あの金貸しが、お姉様の手の内のものだということはもうわかっているんですよ?」
「勘違いしているみたいね。私は彼らとは何の関係もないわ。まあ、多少話をしたりはしたけれど、それは私が既にエルシエット伯爵家とは無関係であるという証明をしただけに過ぎないわ」
「どちらにしても、領地を売り渡させるというのはお姉様の案なのでしょう? そこまでして、私達を陥れたいのですか?」
「私は、あなた達が安全に負債を支払う方法を提示しただけよ。そもそもの話、借金をしたあなた達が悪いんじゃない。あなた達は縛ってでも、ディクソンを止めるべきだったわね」
私の言葉に、イフェリアは不快そうな顔をしていた。
しかし彼女は、特に反論してこない。ディクソンが愚か者だったということは、彼女もよくわかっているということだろうか。
「……確かに、ディクソン様がろくでもない男だったということは事実です。ええ、認めましょう。私は夫にするべき人物を見誤ったと」
「あら? 珍しく殊勝じゃない。この数年で、あなたも成長できたということかしら?」
「……私は今日、お姉様にあることを頼みに来たのです」
「……なんですって?」
イフェリアは、不愉快そうにしながらも私に対して頭を下げてきた。
それは、本当に意外なことである。まさかあのイフェリアが、こんなことをするなんて思っていなかった。どうしてしまったのだろうか。私の頭の中には疑問が先行した。
もしかしたら、何かしらの思惑があるのかもしれない。イフェリアの態度に、私はそんなことを思うのだった。
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