寵愛していた侍女と駆け落ちした王太子殿下が今更戻ってきた所で、受け入れられるとお思いですか?

木山楽斗

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6.二人の計画(モブside)

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「君を王城に迎え入れられて、本当に嬉しく思っているよ」
「ラウヴァン殿下、ありがとうございます。しかし驚きましたよ。まさかあなたがあのような手紙を出してくるなんて……」

 王城の一室にて、ソネリアはラウヴァンとともにいた。
 紆余曲折あったものの、彼女は現在彼の侍女となっている。ただ二人の関係性は、それ以上のものだといえた。

「一目君を見た時から、惹かれてしまったね。これはなんとしてでも手に入れなければと思ったものだ」
「まあ、そんなことを思っていらしたのですね……」
「一目惚れ、ということだろうか」
「それならお姉様に対してはそう思わなかったのですか? 顔はそれなりによく似ていると思いますが」
「そうだな……君の方が数倍は魅力的さ」
「ふふ、そうですよね。あんな犬にはない魅力があるという自負はありますよ」

 ソネリアとラウヴァンは笑い合っていた。暗闇の中に響き渡るその笑い声は、嘲笑と呼べるような乱雑なものである。

「犬か。ひどいものだな。実の姉だろうに」
「あの人は……ヤウダン公爵家に媚を売る犬です。カウタス伯爵家の方々も、婚約が破談になってほっとしていることでしょうね」
「そうか。それなら良いことを一つしたと思っておこう。しかし君もヤウダン公爵家に仕えていただろうに。ユーリア嬢の侍女は嫌だったのか?」
「当然でしょう。大体何故私があのような下賤な者達に仕えなければならないのか……ヤウダン公爵家は、かつて力でセルダン子爵家を屈服させたのですよ。あれは野蛮な血筋です」
「ほう……」

 ソネリアの口からは、罵倒の言葉が次々と出始めていた。
 彼女の中には、積もりに積もったものがあったのだ。それは今まで決して口にすることがなかった、ソネリアの素直な気持ちであった。

「しかしこのままだと、僕はあのユーリア嬢と結ばれることになる訳だが……」
「別にそれでも構いませんよ。ラウヴァン殿下があの人を滅茶苦茶にしてくれるなら、こちらとしては願ってもいないことです」
「強かなものだな。だが僕とて争いは嫌いだ。野蛮な血筋と同じになることはない……どうだ? 僕と一緒にここから出て行かないか?」
「出て行く?」

 ラウヴァンの言葉に、ソネリアは目を丸めていた。
 それが彼女にとって、予想外のことだったからだ。その可能性について、ソネリアは考えていなかった。

「僕には他国との繋がりもある。ここから出て行っても、どうにでもなるということだ。正直うんざりしていたんだ。ラスタード王国だとかヤウダン公爵家とか、面倒なものだろう。それなら君と二人で静かに暮らしていく方が良い」
「……二人で静かにですか。それは良いですね」
「よし、そういうことなら計画を立てるとしよう。早くしないといけない。弟のリオレスは、やけに鼻が利くんだ。奴に悟られる前に行動するとしよう」

 ソネリアは、ラウヴァンと手を重ねた。
 彼との未来、それを彼女は思い描いていた。姉のシェリリアや主であるユーリアへの優越感、彼女はそれをゆっくりとかみ締めながら笑うのだった。
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