7 / 24
7.第二王子の来訪
しおりを挟む
リオレス殿下がヤウダン公爵家の屋敷を訪ねて来たのは、彼の手紙が届いてから一週間以上後のことだった。
フードによって顔を隠した彼の前に、ヤウダン公爵家の一同とソネリアを除くセルダン子爵家の面々が集まっている。
「申し訳ありませんね。僕がこちらに正式に来る場合、色々と面倒がありまして……今回はお忍びということにさせてもらいました。その方が都合も良かったというのが、正直な所ですが。まあこういったことには慣れていますからご安心を。ばれることはないと思います」
「……そうですか」
リオレス殿下の言葉に、お父様はゆっくりと頷いた。
今回の来訪にはこちらも気を張っていたが、本当にばれてはいないと思う。どちら側の重鎮達も、特に反応してないのだ。私が王城に訪問する時とは違って、実に静かなものである。
精力的に国を動き回っているリオレス殿下には、多方面に味方がいると聞く。そういう人達の協力などによって、ここまで来たのだろうか。
「リオレス殿下、あなたは私に手紙を出してきました。その手紙に記載されていた内容について、詳しく聞きたいと思っています」
「ユーリア嬢、もちろん僕もそのつもりです。とはいえ、正直少々罰が悪い。あなた方ヤウダン公爵家、何よりセルダン子爵家の方々に対して僕はひどいことを言わなければなりません」
「……無礼かもしれませんが、言わせてください。私達は大丈夫です。妹のソネリアについて、リオレス殿下の率直な意見をお聞かせください」
リオレス殿下の言葉に、シェリリアが答えた。彼女の両親――セルダン子爵夫妻も力強く頷いている。
それを見ながら、リオレス殿下はゆっくりとため息をついた。ソネリアに関して、彼は悪いことを言おうとしている。この面々の前でそれを口にするのは、気が重いことだろう。
「ソネリア嬢……初めて王城で彼女に会った時から思っていました。彼女は胸の中に、何か暗いものを抱えていると」
「……あの挨拶の時に、妙な反応をしたものだと思っていましたが、そういうことでしたか」
「シェリリア嬢とは違い、彼女はユーリア嬢に対してもどこか厳しい視線を向けていたように思います。その時は、ソネリア嬢に対する印象など僕の考えすぎかと思っていました。ですが、今回彼女が王城に来たことでよくわかりました。それが間違いではなかったということを」
リオレス殿下の冷たく暗い言葉が、部屋の中に響いていた。
それは私達全員が、まったく感じていなかったことだからだ。長い期間をともに過ごしすぎたことによって、どうやら私達はソネリアのことを良く見すぎていたのかもしれない。
フードによって顔を隠した彼の前に、ヤウダン公爵家の一同とソネリアを除くセルダン子爵家の面々が集まっている。
「申し訳ありませんね。僕がこちらに正式に来る場合、色々と面倒がありまして……今回はお忍びということにさせてもらいました。その方が都合も良かったというのが、正直な所ですが。まあこういったことには慣れていますからご安心を。ばれることはないと思います」
「……そうですか」
リオレス殿下の言葉に、お父様はゆっくりと頷いた。
今回の来訪にはこちらも気を張っていたが、本当にばれてはいないと思う。どちら側の重鎮達も、特に反応してないのだ。私が王城に訪問する時とは違って、実に静かなものである。
精力的に国を動き回っているリオレス殿下には、多方面に味方がいると聞く。そういう人達の協力などによって、ここまで来たのだろうか。
「リオレス殿下、あなたは私に手紙を出してきました。その手紙に記載されていた内容について、詳しく聞きたいと思っています」
「ユーリア嬢、もちろん僕もそのつもりです。とはいえ、正直少々罰が悪い。あなた方ヤウダン公爵家、何よりセルダン子爵家の方々に対して僕はひどいことを言わなければなりません」
「……無礼かもしれませんが、言わせてください。私達は大丈夫です。妹のソネリアについて、リオレス殿下の率直な意見をお聞かせください」
リオレス殿下の言葉に、シェリリアが答えた。彼女の両親――セルダン子爵夫妻も力強く頷いている。
それを見ながら、リオレス殿下はゆっくりとため息をついた。ソネリアに関して、彼は悪いことを言おうとしている。この面々の前でそれを口にするのは、気が重いことだろう。
「ソネリア嬢……初めて王城で彼女に会った時から思っていました。彼女は胸の中に、何か暗いものを抱えていると」
「……あの挨拶の時に、妙な反応をしたものだと思っていましたが、そういうことでしたか」
「シェリリア嬢とは違い、彼女はユーリア嬢に対してもどこか厳しい視線を向けていたように思います。その時は、ソネリア嬢に対する印象など僕の考えすぎかと思っていました。ですが、今回彼女が王城に来たことでよくわかりました。それが間違いではなかったということを」
リオレス殿下の冷たく暗い言葉が、部屋の中に響いていた。
それは私達全員が、まったく感じていなかったことだからだ。長い期間をともに過ごしすぎたことによって、どうやら私達はソネリアのことを良く見すぎていたのかもしれない。
204
あなたにおすすめの小説
「役立たず」と婚約破棄されたけれど、私の価値に気づいたのは国中であなた一人だけでしたね?
ゆっこ
恋愛
「――リリアーヌ、お前との婚約は今日限りで破棄する」
王城の謁見の間。高い天井に声が響いた。
そう告げたのは、私の婚約者である第二王子アレクシス殿下だった。
周囲の貴族たちがくすくすと笑うのが聞こえる。彼らは、殿下の隣に寄り添う美しい茶髪の令嬢――伯爵令嬢ミリアが勝ち誇ったように微笑んでいるのを見て、もうすべてを察していた。
「理由は……何でしょうか?」
私は静かに問う。
その支払い、どこから出ていると思ってまして?
ばぅ
恋愛
「真実の愛を見つけた!婚約破棄だ!」と騒ぐ王太子。
でもその真実の愛の相手に贈ったドレスも宝石も、出所は全部うちの金なんですけど!?
国の財政の半分を支える公爵家の娘であるセレスティアに見限られた途端、
王家に課せられた融資は 即時全額返済へと切り替わる。
「愛で国は救えませんわ。
救えるのは――責任と実務能力です。」
金の力で国を支える公爵令嬢の、
爽快ザマァ逆転ストーリー!
⚫︎カクヨム、なろうにも投稿中
溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。
ふまさ
恋愛
いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。
「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」
「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」
ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。
──対して。
傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。
妹と婚約者を交換したので、私は屋敷を出ていきます。後のこと? 知りません!
夢草 蝶
恋愛
伯爵令嬢・ジゼルは婚約者であるロウと共に伯爵家を守っていく筈だった。
しかし、周囲から溺愛されている妹・リーファの一言で婚約者を交換することに。
翌日、ジゼルは新たな婚約者・オウルの屋敷へ引っ越すことに。
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
『仕方がない』が口癖の婚約者
本見りん
恋愛
───『だって仕方がないだろう。僕は真実の愛を知ってしまったのだから』
突然両親を亡くしたユリアナを、そう言って8年間婚約者だったルードヴィヒは無慈悲に切り捨てた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる